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「監察医制度」を知っていますか?


人が亡くなる際、長く闘病した場合も急病の場合も
病院で亡くなることが大半なのですが、
事故や自殺、前触れのない急死など、病院以外で亡くなる場合は
故人様は警察に送られ、検視検案解剖が行われます。

その検視や検案、解剖の際に必要になる専門家が "監察医" です。

少し前に監察医が主役のテレビドラマが放送され、
認知度も少し上がった監察医。

でもまだまだ人数が少なく、地方などでは一般病院の医師が
検視などを行っている現状もあります。

今回は少し難しいですが、「監察医制度」についてのお話です。



「検死とは」


監察医制度の説明の前に、まずこちらの話をしようと思います。

検視とは、故人様の体を実際に見て調べる事を言います。
検察官などによって、身元確認犯罪性の嫌疑の有無
調べるために行われる手続きの事です。

刑事訴訟法により、「変死者または変死の疑いがあるときは、
検視をしなければならない」と定められています。

検案は、医師により死因や経過時間等を判断することを言います。

解剖は、死因が特定できない時などに行われます。
この解剖は、一部を除いてはご家族が拒否することはできません

この検視や検案、解剖などすべてをまとめて「検死」と言います。
同じ読み方の「検視」は法的な意味を持ちますが、
「検死」には明確な定義はありません。




「解剖」には2種類ある


ひと言で「解剖」を言っても、検死の際の解剖は2種類あります。


■ 行政解剖

犯罪の可能性が無いものの、死因の特定ができない場合
行われる解剖のこと。
衛生上の問題が無ければ、ご家族の了承を得て解剖されますが、
2013年に施行された「死因・身元調査法」により、
ご家族の許諾なしに警察署長が解剖を指示することが可能になったため、
了承を得ずに解剖されることもあります。


■ 司法解剖

犯罪の可能性が高い場合に、裁判所の許可を得て行われます。
ご家族の同意を得ずに実施することができます。
基本的には、高度な専門知識を持つ法医学者が執刀し、
法医解剖とも呼ばれています。


※上記の2つの解剖以外に、病気で亡くなった場合に行われる
「病理解剖」というものもあります。

死因の特定や、診断の妥当性治療の効果を確かめるために実施され、
今後の診断や治療の参考となります。
通常は臨床医がご家族の承諾を得て、病院で解剖されます。




検視になる場合とは?


前述した通り、持病があって病院に入院や通院していて亡くなった場合は、
その病院の医師が判断して死亡診断書(死亡届)を作成します。

ただ、病院に入院・通院していても、
他の病気が原因で亡くなったり、変死になった場合は、
検死の対象になります。

そして、持病などの要因以外でご自宅で亡くなっていた場合も
警察に運ばれ、検死が行われることがほとんどです。

万が一ご自宅でご家族が無くなっているのを発見した場合は、
持病があればかかりつけの病院へ連絡しますが、
持病などない場合はすぐに警察に連絡を入れましょう。

検死が終わるまでは、故人様の体を動かすことはできません。




「監察医制度」とは


賛否両論ある制度ではありますが、
死因不明のご遺体を、専門の監察医によって検案や解剖をして
死因を明らかにし、公衆衛生の向上を目的とする制度です。

検案や解剖を行った後は、死体検案書を作成します。

人が亡くなった際に役所に提出する「死亡届」は、
事故などで警察が介入した場合には、この「死体検案書」になります。

これを役所に提出し、初めて「火葬許可証」が発行されるため、
死体検案書は必須になります。

監察医制度は、解剖率の向上を狙って政府が作った制度ですが、
監察医や予算の不足により、現在では東京23区と大阪市、神戸市のみ
での実施
など、制度の導入地域は広がっていません。


〇 広がる検案格差


監察医制度導入地域では、検死費用は公費でまかなわれており、
ご家族の金銭負担も少ないほか、
専門の技術を持つ監察医により、高い精度の検死が行われます。

でも監察医制度のない地域では、一般の医師が検案を行っています。

不慣れな一般の医師による検死で見落としが危惧されていたり、
検案書の作成料で高額な金額を請求される事も少なくないそうです。

解剖まで行われた場合、保管も含めて数十万という高額が請求された
ケースもありました。

検死を行う病院でも、悪徳な病院もあります。
警察からの検視依頼を一挙に引き受け、
流れ作業で検視を行い、死体検案書の作成料で高額を請求する…

こんな病院も中にはあります。

名前を書いてしまいたいくらいの悪徳業者ですが、
ご家族様はそんな実情も知らず、高額の料金を支払うことになるので
そういう側面から見ると、ぜひ広がってほしい制度だなと思います。



法律も絡む難しい制度で、解剖なども含むので賛否両論ありますが、
海外に比べると解剖率はまだまだ低く
日本の公衆衛生の向上のためにも広がってほしい制度なのかなと感じます。

どこで亡くなっても一定の検死が受けられ、
不当な料金を請求されないように、
導入地域が広がってほしいなと思います。





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