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マーケティングプロモーション部門は製品やサービスの理解とフィードバックを意識せよ

こんにちは、米田 @ 富士通にてマーケティング変革実行中です。私も社内の事業部門や別会社の人々と話す機会が結構ありますが、どこの会社でもマーケティング部門に不満を持っているケースがあるようです。他の部門はマーケティング部門にどのような不満を持っているのか、そしてそれはどう改善できるのか、この記事では私が聞いた話と考察をもとに見ていきたいと思います。


マーケティング部隊に不満が持たれているケース

ある一定以上の規模の企業には、「マーケティング部門」に相当する部門があることが多いでしょう。マーケティングと聞くと「イベントをやっている部門」とかB2Cビジネスを実施している企業だと「広告を打っている部門」とかいうあたりは共通認識だと思いますが、マーケティング部門外の人がマーケティングに対して不満を述べているケースを結構耳にします。これは私が所属する富士通だけでなく、他の企業の人でも結構あります。

私が聞いた限りでは、だいたい以下のような内容が多いようです。

●「イベントのロジはやってくれるけど、セッションやデモの内容は事業部任せになって、結局われわれ事業部が手を出さないといけない」
●「広告で人はたくさん集めてくれたけど、売り上げにつながる良質なリードが集まっていない」
●「ブランディングガイドに沿っていないと口は出してくるけど、代替案は出してくれない」
●「販促資料を作ってくれるけど、営業やパートナーに展開するところは手伝ってくれない」
●「外注業者に発注する業務だけやっているの?事業部から直接発注したら、やることなくなるの?」

マーケティング部隊に対する不満が発生するひとつの理由

マーケティング部門に対する不満が出るひとつの理由は、マーケティング部門の "部門名" にもヒントがあると私は考えています。マーケティング部門は、「マーケティング部」という名前だったり、場合によっては「プロモーション部」だったり、昔からある日本の企業では「営業支援部」「販売促進部」という名前であることもあります。読者の皆様は、部門名から、これらの部門がどういう仕事をしているか想像がつきますか?

営業部門であれば、会社の売上責任を担っていて、営業メンバーは売上を上げることで評価されていることが関係者でなくても容易に想像がつきます。同様に、サポート部門であれば、どの企業であっても費用を最小化しながら顧客満足度を最大化する責任を負っている、と一般的に考えられます。

しかし、マーケティング部門の場合は、名前にバリエーションがあることからもわかる通り、マーケティングに期待されている役割は企業によって幅があり、社会通念上マーケティング部門と事業部門、営業部門の境界が定義されているわけではありません。そして関係者でない人間が、マーケティング部門がどこまで責任を負っているのか想像することは難しいのです。

また、現代経営学の父と呼ばれるピーター・ドラッカーはマーケティングの目的を「(顧客を良く理解した上で)セリング (販売活動) を不要にすること」と定義している一方、マーケティングの神様と呼ばれるフィリップ・コトラーは「ニーズに応えて利益を上げること」と定義しているなど、日本でなくてもマーケティングの定義には定まったものがありません。しかも、これらのいくつかの定義が示唆しているところは、企業の機能の中でも非常に広範囲に渡った、かつ抽象的な内容になっています。

そのため、マーケティング部門に対する関係者からの期待値にもブレが生じてしまい、期待値にうまく応えられないケースが出て来やすいのではないかと思われます。

世の中には "経験不足な" マーケッターが意外と多い

また、マーケティング部門のメンバーの傾向として、「特定のオペレーションのスペシャリスト」になってしまっている人が多いのも理由だと思われます。

大きな企業だとイベント部、デジタルマーケティング部といった具合に機能別に部門が分かれていて、リクエストがあったことに対してアウトプットを出すという働き方をしている人が多く、小さな企業で人数が少ない場合は「マーケティング」というよりは、イベントをやるとかウェブを作成するとか特定の機能に絞った "作業" をしていたり "外注屋" になっている場合が多いようです。

概していうと、マーケティング部門に不満がある人には「言われたことを受け身で行う部門」という印象を持たれてしまっていることが多いように見えます。マーケティングとそれ以外との境界線があいまいなために、マーケティング外の人からすると「どうしてもっと踏み込んできてくれないんだろう」と思ってしまうことが結構あるようです。

しかし、このことを意識して一歩踏み込む意識を持っているマーケッターは意外と少ないのが私の印象です。特に、長らくマーケティングを専業でやっているメンバーの場合、外の部門から見た時のマーケティング部門の見え方、マーケティング部門に対する期待値を知らないで働いているケース、また、踏み込みたくてもマーケティングオペレーション以外のこと、たとえば事業部門とか営業部門が何を考えているか、優先度は何なのか、また事業の詳細について知識や経験が不足しているマーケッターも多いのが実情でしょう。

マーケティングって実は "上級職"

先に、いくつかの有名なマーケティングの定義が示唆するところは「企業の機能の中でも非常に広範囲に渡った、かつ抽象的な内容」であると述べましたが、マーケティングは突き詰めると経営課題であり、営業、サポート、製品開発、経営戦略など企業内の機能や、市場情勢や顧客やパートナーからのフィードバックなど、社内外のステークホルダーをつなぎ合わせる「オーケストレーション機能なのです。

オーケストレーション機能としてのマーケティング
図: オーケストレーション機能としてのマーケティング

マーケティングが本来「プロモーション活動を計画して実行」以上に求められる機能は、社内外の状況を適切に踏まえた上で「戦略を作る」機能なのです。戦略とは、つまるところ目的を達成するために組織の中の人、モノ、カネ、情報の統制と再配分を行うことが含まれます。

これをきちんと実行するためには結構高度な知識とスキルが求められます。また、社内外の状況を正しく把握するためには、それぞれのステークホルダーからの目線や顧客やパートナーからのフィードバックも理解していなければなりません。

私がマーケティングのキャリアについて相談を受ける場合、実は大学を出てすぐの人には最初からマーケティング部門に入ることは勧めていません。最初からマーケティング部門に入ると、特定のプロモーション機能のオペレーターに成り下がってしまうリスクもあります。前述したように、本当の意味でのマーケティングは、営業、製品開発、サポートなどの現場といった企業の様々な機能についての知識と経験が必要になる "上級職" でもあります。

もちろんこれら全部の機能を異動して経験することはできないので、どれかの現場に在籍しながら、他のステークホルダーとのやり取りの中で "相手目線" を意識的に身に着け、複数の現場目線や顧客など社外からのフィードバックの目線を付けたうえでマーケティング部門に来るのが望ましいです。最初にマーケティング部門に入ったとしても、数年したら他の部門に異動して現場のことを学んでみることを勧めています。

また、マーケティングの組織戦略を考える場合は、最近増えてきているMBAホルダーだけで固めるのではなく、営業、製品開発、サポートなどの様々な部門からも採用するといった、スキルのダイバーシティを考慮した採用を行う必要があると考えています。

私自身も最初は製品開発からキャリアを始め、プロダクトマーケティング (事業部)、パートナー部門と、いくつかの役割を経験してスキルのポートフォリオを増やしてきました。

これらの幅広い経験があって初めて、自社の製品やサービスを理解し、顧客からのフィードバックも考慮した、受け身でない積極的な提案型マーケティングができるようになります。マーケティングのキャリアを設計する際には、このようなことも是非参考にしてみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました!では、また!

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