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英国で大ヒットのダークコメディ「9から始まる奇妙な物語」が最高に面白い

英国らしいブラックユーモアがベースの今作はタモリさん不在の大人向け「世にも奇妙な物語」といった雰囲気のアンソロジー。
しかし「世にも」のような複数の作家が脚本を書いているオムニバス形式ではなく、メインキャストとして登場しているリース・シェアスミスとスティーヴ・ペンバートンが共同脚本として全てのエピソードを担当しているのがポイント。いくらプロでも何本も書いていたらアイディアが停滞するのでは、と思いきや独特のシニカルな作風を保ちつつ一定のクオリティを崩さないままシーズン8まで更新されているのが凄いところ。

今回は日本で視聴できるシーズン2までの話から特に面白かった回をそれぞれ二作ずつ抜粋。いずれも一話完結、話同士に一切の繋がりなしなので気になる回があれば是非チェックを。

S1 EP2「ある静かな夜に

コメディ要素 : ★★★★★
ホラー要素 : ★★☆☆☆
気味悪さ : ★★★☆☆

豪邸から絵画を盗み出そうと奮闘するマヌケな強盗たちが主人公の作品。笑いどころの沢山あるシリーズながら、個人的に一番笑ったのは間違いなくこの回。ドラマシリーズで最もホラー要素が薄く、コメディ色が強い第二話は怖い描写が苦手な人でも大丈夫なつくりに。しかし子供と肩を並べて見るにはやや刺激の強めなシーンがあるのでご注意を。
抜き足差し足忍び足が鉄則の強盗が主役の回ということで、今作の見どころは最初から最後まで一切セリフがないということ。キャストにはあのチャップリンの実の孫が参加しており、無声映画にオマージュを捧げる一面も。声を発することの許されない状況でコミュニケーションを取ろうと努力する強盗達の滑稽な姿は思わず笑ってしまうこと間違いなし。

S1 EP3「招かれざる客

コメディ要素 : ☆☆☆☆☆
ホラー要素 : ★★★☆☆
気味悪さ : ★★★★☆

小説家志望の小学校教師トムと女優を目指すジェリー、そして二人の住まうアパートのすぐそばで暮らす一人のホームレスにまつわる話。
最後まで見たらきっとまた見返したくなる第三話は前回とうってかわってコメディ要素は控えめ。ホームレスとの出会いをきっかけに新たな道を歩み始めるトムと、同じく女優の卵として地道に歩みを進めるジェリーの行く先ははたして同じなのか、それとも…?
気味の悪さでは第一シーズン随一といえる今回の見どころは終盤の展開に繋がる見事な伏線。観察力に高い方はもしかしたら途中でとある違和感に気付くかも。どう説明してもネタバレになりかねないので、気になる方は考えるより先に再生するのがオススメ。

S2 EP2「幸せな人生

コメディ要素 : ★☆☆☆☆
ホラー要素 : ★★★☆☆
気味悪さ : ★★★☆☆

靴屋で働くクリスティーンのドタバタな日常を描く第二話。
実は現在S8まで更新されている「9から始まる奇妙な物語」でIMDbにおいて最も高い評価を得ているエピソード。たった30分の尺のなかで巧妙に張り巡らされた伏線、クライマックスで繋がる点と点は確かに脱帽モノ。
ハロウィンで消防士のコスプレをした男アダムとの出会いから始まり、どこかブリジットジョーンズを思わせるような主人公クリスティーンの毎日は一筋縄ではいかないことばかり。やや過保護ながら家族思いの母、明るい性格の同僚に囲まれてなんとか人並みの生活を送ろうと努力する中で忍び寄る謎の違和感。その正体とはいかに?

S2 EP4「背筋の凍るホットライン

コメディ要素 : ★☆☆☆☆
ホラー要素 : ★★★☆☆
気味悪さ : ★★★★★

「悩み相談ホットライン」に新入りとしてやってきた主人公のアンディと話し相手を求めて電話をかけたひとりの悩める少女にまつわるお話。
終始デスクに取り付けられたCCTV(防犯カメラ)の映像で進んでいく第四話は今のご時世だとうっかりZoomと勘違いしてしまうかも? そんな変わり種エピソードの今作は前述した「幸せな人生」と並んで高評価を得ており、一周回ってスカッとする不気味なエンドは実に見事。死体や血液など目に見えて分かる恐ろしげな要素は一切画面に映さず、四つの視点の防犯カメラだけでゾッとさせる手腕はやはり流石の一言。


他にも英国式かくれんぼ「イワシの缶詰」を題材としたS1EP1「かくれんぼ」や寝台列車の客室で起こる事件がテーマのS2EP1「寝ていた男」など、紹介しきれない名作が沢山ある「9から始まる奇妙な物語」はU-NEXTで絶賛配信中。「グッド・オーメンズ」でニュートン・パルシファー役のジェイク・ホワイトホールや「ウエスト・エンド殺人事件」に総監役で出演していたコメディアンのティム・キー、BBCで放送している人気シットコム「Ghosts」にメインキャストとして参加してるベン・ウィルボンドとジム・ホーウィックなどコアな英国作品好きにはたまらないキャスト陣も必見。

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