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映画「マトリックス レザレクションズ」感想~中年のための映画だがそれでいい

映画鑑賞前の事前準備

映画を見たのは初日12/17(金)のレイトショー(字幕版)。予告編の動画は視聴済み。過去三部作は映画館で視聴済みだけど、以降見返してないので、うろ覚え状態で映画に突撃しました。

過去作のイメージは以下の通り。

・初回「マトリックス」
→SF的ストーリー、アクション、CG凄いし、ワイヤーアクションなど最先端のCOOLなイメージ。DVDを初めて買ったという良き思い出。

・「マトリックス リローデッド」
→それなりに面白い。リアル世界が色々としんどい印象。
   モーフィアスが演説する予告編は本編の3倍面白かった。

・「マトリックス  レボリューションズ」
→ストーリー的にもアクション的にもインフレが進みやり過ぎ感。マトリックス以降の他作品も相まって食傷感があった。

過去3部作の総評としては、最初は凄かったが、後半やり過ぎという印象。ただこれ以上やりようもないので終わったことについては特に問題がなく、どういった形で続編を作る狙いがあるのかというところが興味のポイントでした。そしてあんまりこの映画は過去作を予習してみるというよりもうろ覚えで見た方が作品の作られたテーマや意図とあっていたのでそういった点ではよかったように思います。

本作の感想


ひさしぶりの「マトリックス」では登場人物自体がリアルに年を取り、あるいは代替わりしていることに、当たり前ながらもちょっとショック。

とはいえ、その状況を利用して過去作の思い出と現在視点からみた過去の「マトリックス」のイメージ差を一つのギミックとして作中で描くことで、あえて現代を描くという狙いが本作の基本方針だと感じました。

観客である自分自身が年を取って中年になっている状況とスクリーンの状況はリンクしていて、チューブに接続されて椅子で眠っている「ネオ」は、映画館の席で同じだけ年を取った自分とあまり変わらないということに、なんとも言えない想いがありました。そのモヤモヤこそが「マトリックス」という過去の超大作でないと作りづらい続編として作る意味だったと思います。

本作の内容としても「マトリックス」という作品自体もはや古典として見られる作品であるということに自覚的であり、作品内ではゲーム「マトリックス」として批評の対象として描かれています(続編を作る意味あるの?という問いかけも内包)。

かつて時代の最先端を描いた「マトリックス」が現在の視点でどう見せるのか、再び描くことにどんな価値があるのか? という問いについて掘り下げていきながら、あえて従来通りの「マトリックス的なアクション」(特にシリーズ1~2のもの・ビルから飛べるのか?)を見せ、観客の予想を超えるような映像表現も取り立ててなく、思い出の中のマトリックスの「今見るとあんまり凄く見えない」感じを狙った表現になっています。

そうした「マトリックスの陳腐化」というものを見せつつ、一方で、現代のSNSやYouTube動画、キャッチーで個人に最適化されたフィルターバブルに慣れ切った2021年の我々の世界(アナリストによってアップデートされた新たなマトリックス)との対比。

「赤い錠剤と青い錠剤をどちらかを選ぶか?」という問い以前に、「そもそも赤い錠剤って何だったっけ?」という現状を認識させられます。

エージェント・スミスはそれらを俯瞰的にみている狂言回しや作者&観客の分身として機能していました。

本作は、オールドスタイルの役割を担うネオとトリニティは、それでも「引き裂かれた運命のヒロインと再び出会ってキスをする」という古典的なストーリーラインを貫き、そこで一旦フィナーレを迎えつつ、スタッフロール後の最後の最後にゲーム「マトリックス」の開発者たちによって、ネコの動画の方が「マトリックス」より価値があるのではないか?といったジョークで終わります。

その後の観客はスマホの電源を入れて、SNSをチェックしたり、YouTubeを見たりすることになるわけですが、それはそれで仕方ない一方で、「150分超は映画館でスマホを見ずに過ごすだけの価値はあるんじゃないか?」という問いかけを作者がしているように感じました(あくまで押し付けでなくソフトな主張としてね)

まとめ

「赤い錠剤と青い錠剤をどちらかを選ぶか?」というのはかつては、SF的で哲学的な「決断」がテーマだったものが、現在では、日々の生活の中の些細な有り様や立ち居振る舞いの「積み重ね」のなかで、どちらも丁寧に、ときには両方を選び取っていくのが良いのではないかというのが”中年”となった今の感想です。結局のところ悪役?であるアナリストも消滅させられることもなく生き続けるしかないこの時代にいる一方で、ネオやトリニティもどこかにいるのではないかという両立が大事ではないでしょうか。

総評としては
”中年”を自覚せよ。されど人生は続く。
といったところです。自分はこの映画はアリだと思いました。

おまけ

覚えてないけれど、トリニティとbotの旦那のキスシーンがあっただろうか。ないとしたら「子供はいるけどチューは観客には見せない」というラインをエンタメ的にはコントロールしているんだなぁと感じました。あったとしたら、実際ガッカリした気分になったと思いますね。


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