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ウイルス騒動の中で会議が減った


新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。今週は学校の臨時休校が始まって影響がより広範なものとなり、「いつまでこんな暮らしが続くのか」とげっそりした方も多いことでしょう。

私の身近なところで言うと、会社の会議が大幅に減りました。「密閉された空間で大人数が集まることは極力、避けるように」というお達しがあり、会議がなくなったり、あってもPCを使ったテレビ電話形式になっているのです。正直、膨大なコロナウイルスの影響の中で、これだけは「いいこと」でした。

私は常々、日本での会議の多くは「空気を読む場」なのではないか?と思ってきました。身近なところでは「情報共有のため」という会議が多いのですが、いまの時代、それだけならメールでも情報共有アプリでも簡単にできます。

しかし、実は会議で重要なのは「情報」ではなく、そこで「リーダーが何に熱量をかけて語ったか」や、「職場のメンバーがどっちの流れに向かおうとしているのか」という「空気」なのです。

日本語というあいまいな伝達手段では、時に何が重要なのかさえ文書から読み取りにくいことがあるのですが、「やっぱりこっちの方向に組織が進もうとしているんだ!」という「空気」こそが最大の「情報」であったりするわけです。

新型コロナウイルスは、そんな会議を前提とした日本の組織風土を変えるところまではいかずとも、「ちょっと揺さぶってみる」くらいの効果はあったと思います。会議が減ったことで、情報共有はメールなどで「明確に・サクサクと」やるようになって効率が上がりました。そして、重要なことは担当者に直接聞いたり議論するようになり、「本当に集団の意思決定が必要な会議」だけが存続しようとしています。

会議の時間が削減されたことで「ちょっとだけ立ち止まって考える」余裕も生まれてきました。これも大変ありがたいことです。以前は会議から会議へとはしごしているだけで「何かをやった」ような気分になっていましたが、実は何もしていなかったことがわかってきました。会議がなくなった分の時間で、いまの職場の問題点や改善ポイントを考えるようになり、少し見通しが良くなったような感覚を得ています。

時には集団行動から離れて自分の状況を顧みることも必要・・・・。今回はそんな気分でピアノによるソロ・アルバムを聴いてみましょうか。トミー・フラナガンの「アローン・トゥ・ロング」です。

トミー・フラナガンは「名盤請負人」と言われていますが、それは自分のリーダー作ではなく、ジャズ・ジャイアンツのサイドメンとしてです。ソニー・ロリンズ、ジョン・コルトレーン、アート・ファーマー、エラ・フィッツジェラルドなど枚挙にいとまがありませんが、彼らのバンドで名脇役として洗練されたプレイを披露してきました。参加作品では様々な編成をこなしていますし、自分の作品ではトリオが中心ですが、珍しくソロに徹したのが「アローン・トゥ・ロング」です。

ここでのフラナガンはリズム・セクションから解き放たれ、「自分の内なる響き」に身を委ねているかのようです。メロディックであり、常に「エレガントな音の流れ」がある充実の演奏。1970年代に日本の会社が制作したということで目立つ作品ではありませんが、フラナガンの秀作の一つとして挙げてもよいのではないかと思います。

1977年12月8日、NYでの録音。   
Tommy Flanagan(p)

①Parisian Throughfare
バド・パウエルの作品。ここでは「躍動感と優雅さ」が同居しています。流れるようなタッチでメロディが提示された後、ソロに入ったフラナガンが一瞬、スピードを落とす瞬間があります。そこから振り子が戻るようにスイング感あふれる演奏になるのですが、この一本調子にならないバランス感覚と、リズム隊がいないのに強烈なノリが(内に秘められているのですが)あることに驚きます。

⑥Maybe September
パーシー・フェイスら3人の合作。ここではバラッドの名手としてのフラナガンを聴くことができます。メロディのしっとりとした部分はスローで音数少なく提示され、そのまま歌の続きのようなソロに入ります。抒情的なフレーズが続いていきますが、その中に「切れ目」がありません。ベース・ドラムがなくても紡ぎだされた音と音が絶妙につながり、隙を感じさせないのです。全編が歌のような演奏、見事です。

⑦Strollin'
ケニー・クラークによる作品。こちらはミディアム・テンポで快調に進んでいきます。アルバムの中でも通常の4ビートに近いスイング感があるチューンでしょう。左手が刻むリズムには余裕があり、右手が明るいフレーズをピシピシと決めていきます。こんな気持ちいリラックスしたプレイをしてもらえるならと、多くのミュージシャンが声をかけたことがよくわかる演奏です。

ウイルス騒動が収まった時に、おそらく会議の多くは元通り開催されるのだと思います。しかし、一度「ソロ活動」をしたメンバーたちが見る会議の風景は以前とは違っているはずです。組織を運営していく上で大切なことは何なのか、そして、時には立ち止まって考えることが必要なのではないか・・・。この非常事態の中で、学べることは学んででおきたいものです。

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