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本を読まない人の読書会

〇「本を読まない人の読書会」とは?

大人も若者も本を読まなくなった。新聞さえ読まなくなった。多くの人が、本なぞ読まなくたって、何も困ることはないと思っている。
本を読まない人ばかりだと、本の紹介をしても仕方がない。
「本を読まない人の読書会」は、そんな本を読まない人であっても、参加しさえすれば、読書の喜びがわかるようになることを目指している。

今回は第8回目の「本を読まない人の読書会」の報告だ。

〇紹介された本

『仲直りの理(ことわり)進化心理学から見た機能とメカニズム』
大坪庸介著 ちとせプレス 2021年 2500円+税

○まず本の紹介がありました。

・弱小動物は、集団で抵抗しなければ強大な動物に滅ぼされてしまう。だから群れ内部のケンカを、仲直りして治める。
群れをつくる動物には仲直りに関与する遺伝子が発達した。その有能遺伝子を持つものだけが選択され生き延びてきた。人類もそうであった。
・仲直り理論は、個人の生活にとどまらず、国際政治やビジネスの世界でも応用されている。
・にもかかわらず、争いがなくならない。それはなぜか。
・紹介者の感想も述べられた。著者は逃げているようだ。この学問がアカデミズムの枠内にとどまっているから、紛争解決に応用されない。

○その後は、本の枠にとどまらず自由な話し合いが始まりました。

なぜウクライナでの戦争を止められないのか。
・互いが、自分が正しいと信じ、間違っている相手を打ち負かそうとやっきになっている。
・価値観の違いがあるのは当然だが、互いが相手を知ろうとしない。
・ウクライナとNATOは、侵略者から独立を守るための戦いだ、として戦争を美化している。
・ケンカをするより、仲良しがいいに決まっている。毎日人が死んでいるのだから、即刻停戦が誰にとってもいいはずだ。
・西欧では、欲望刺激がとことんエスカレートし争いの原因となっている。東洋には、孔子の教えが浸透していて、我慢することを教えられ欲望のままの行動が少し抑えられている。
・けんかするほど仲がいいといわれるのは、普段から主張をぶつけ合って互いの理解が深まるからだ。主張しないで我慢したり、相手の話を聞かないで無視したりしていると、いつか爆発する。ケンカしたことがない人は、他人に関心がないからだ。

仲直りをする、させる、にはどうすればよいのか。
・相手をきちんと理解する。ウクライナとロシアは話し合う必要がある。
・仲直りができない理由を聞く。本心や下心まで聞き出す。
・納得できる代案を示す。希望が持てる将来展望を示す。
・戦争初期の3月に、トルコの仲裁で、即刻停戦、和平に向けて協議を継続するなどの骨子で双方が合意している。それでロシアはキウイ方面から撤退したが、ウクライナ側が市民の虐殺があったとして言論攻撃を展開した。それでロシアは合意を破棄した。
・言論攻撃は停戦を望まない戦争の親玉(黒幕)が仕組んだのだろう。ボブ・ディランの歌にある「戦争の親玉」のことだ。そいつの正体を暴いて引きずり出せば、すぐにでも停戦が実現する。
・そもそも米国は、早い時期から戦争になるとわかっていたのに、止める努力は一切しなかった。
・この本は、戦争について書いていないことが不満だ。
・共生を目指してきたはずの人類に、自分さえよければよいという変わりものが出現した。当初、そんな出来損ない人間は、自然に淘汰され生き延びられなかったが、現代では生き残るものも出てきた。資本主義社会は、むしろそうした出来損ないの方が成功して豊かになる。仲直りよりも勝ち負けが優先される社会にこそ問題がある。

○今回を振り返って

参加者は言いたいことが言え、考えるきっかけになったようだ。
直接、本の売上につながらなかったが、考えること、問題意識を持つことが、読書につながっていく。
この本についての批判点も話題にした。ただし、タイトルに惹かれてでも読めば考えるのだから、この本の存在意義は大きい。本との付き合い方でも得られるものがあった。
大幅に脱線することはあったが、参加者の関心が向かえばそれでよしとした。突き詰めれば、仲直りのテーマに関連しないものはない。
今後の課題は、いかにして参加者を増やすかである。


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