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曙色のパノラマ、日々新た。

平日の出社日はいつも、
午前5時50分頃、
僕は横浜から東京に向う
横須賀線の中にいる。
この日々が30年続いている。

空席がない程に乗客はいて、
僕は車窓際に立っている。

この早朝の、この場所。
読書に没頭する大切な時間枠。
横浜から電車が出ると
気になって顔を上げる場所がある。

車窓から広がる景色は
線路際に立つ建物が殆どで、
瞬く間に移り変わる。
まるで静止画のフォルムを
横に早回しするように。
単調がゆえに本が読めるのだ。

でも電車がその場所に至るとき、
その建物が全くなくなり、
全景に地平、大空のパノラマが広がる。

夕焼けは茜色、朝焼けは曙色、
東雲色(しののめ色)というらしい。
薄い朱、オレンジだが、紫やピンクもある。
その混合色のえもいわれぬ魅力が
様々な形の雲に映え広がる。

夜から朝へと切り替わる、地球のエネルギー。

美しいという領域では収まらず、
圧倒され、胸が熱くなり、
全身がしびれ、涙がこみ上げる程。

僕は手に本を持ったまま、直立不動で
車窓からの生の映像に包まれる。

富士山の御来光や世界の名所の風光明媚
だけではないのだ。

この時間、ここにいるからこそ
堪能出来る贅沢。
この景色を見るために僕はここにいる。

この時間だから、季節ならでは。
何か見えない力が
僕にこの景色を授けてくださる。

思わず両手を合わせたくなる。
早朝に僕は自分を新しくする。

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