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退院する ~とあるOLの乳がん日記【145】

145.

退院日の前日も、最後にたぶんどこかに行ったんじゃないかと思うけれど、メッセージアプリにも、日記にも、何も手がかりがなかったので、全然わからなかった。

退院日の明日は天気予報で雷マークがついているくらい、天気が悪いらしかったので、大丈夫かいなと思った。

午前中に先生が来て、最後のチェックみたいな感じで私と話をして、アンケート表を書いた。
アンケート表には、睡眠はどうでしたか、とか、食欲はどんな感じでしたか、とかが書いてあった。

明日は、10時頃に撤収で、そこから手続きをするとかしないとか言った。
結局、引っ越す友達とは会えなそうだった。
あと、便秘も全然治らなかった。

これは退院したあとの話だけれど、退院した翌日から、お腹がずぅっと、ごろごろごろごろ鳴るようになった。
今まで入院中、活動を止めてた腸が、退院するとなったとたん、じゃあ動かないとって思い出したみたいに、いきなり動き出すようになった。

音は自分だけじゃなくて、周りの人にも聞こえるくらい、ずっとごろごろごろごろ鳴った。
それは結構続いて、今度はお腹がゆるくなってしまった。
ずっと続くので、心配になって、たしか先生か薬剤師さんに相談したりした。

そうしたら、退院後に渡された薬の中に、便をやわらかくする薬と、下剤が入っていたから、もうそれは飲まなくていいですよと言われて、やめるようにした。
そうして今までの眠っていたのを取り返すくらい、ごろごろごろごろ活発に動き回ったあとは、やっと少しずつ元に戻った。
身体って生きているんだなと思った。

**

いよいよ退院日になった。
片づけをごそごそとして、荷造りをした。

最終日に先生と最後に挨拶したかとか、全然覚えていないけれど、とりあえず全部準備が終わってから、看護師さんに明細表を持ってくるので待っていてくださいねと言われたので、片づけたベッドの上に座って待った。

10時前後に来ると言っていたけれど、全然来なくて、忙しいのかなと思った。
待っている間に姉からメッセージが来て、明細は22日間で合計いくらになるんだろうねとやりとりしたりした。
いざ退院となるとやっぱりどきどきして、大丈夫かなと思ったけれど、姉はみんながついてるよと言った。

ぼんやりずっとベッドで待っていて、さすがにいくらなんでも忘れられてるんじゃないかと思ったので、ナースステーションへ行った。
そうしたらやっぱり普通に忘れられていた。

差額ベッド代がないとはいえ、お会計はさすがに2桁いったけれど、限度額認定証の上限額に、22日間の食事代が加算された感じの代金で、たぶん周りから見たら破格だった。
大部屋から出るときは、同室の人たちは出かけてしまっていて、誰もいなかった。
ナースステーションにいる看護師さんたちに挨拶をして、病院を出た。

今日は天気が悪いと聞いていたけど、太陽が出ていて、全然天気がよかった。
そういえば駅まで歩いている間に、テレビカードの精算をしていなかったことを思い出した。
たしか400円残っていて、これのために戻ることを迷ったけれど、精算したお金で美味しいものでも飲もうと思って引き返した。

引き返してから、また駅に向かっているときに、横断歩道で同室だった人とすれ違った。
挨拶はしなかったけれど、気づいたろうかと思った。

姉から連絡があって、最寄り駅の駅ビルで一緒にお昼を食べようと言ったので、とりあえず駅ビルで待ち合わせて合流することになった。

そうして私はスーツケースをガラガラ音を立てながら、駅に向かった。

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