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万城目ワールドを学ぶ"万城目"学(『ヒトコブラクダ層ぜっと』に寄せて)


 なんか、久しぶりに万城目学さんの本を手に取りました。

 そう、この本

『ヒトコブラクダ層ぜっと』

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 新刊で出てたのは知ってたんですが、ちょっと長そうなので、置いてたんですよね。

 ただ、副反応による熱にうなされながら、砂漠にいるような感覚だったんで、これが読むタイミングに違いないと、読み始めたら、すいすいと読み終わってしまいました。

 まあ、いつものようにストーリーは奇想天外なんですが、今回、この物語のベースには”古き良き時代”の冒険活劇があります!

 個人的には、万城目ワールドとしては、けっこうストレートだと思うんで、これまで、読んでなかった人でも、冒険(探検)ものが好きな方にはお薦めな本なんです。


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 タイトル聞いたら、"何じゃこれ"みたいな感じですよね。
 この『ヒトコブラクダ層ぜっと』というタイトルからして、万城目ワールド全開なんです。

 もう、タイトルからして、読者を奇想に誘う... これも万城目さんらしい、らしい。

 これまでの万城目さんの著作名を見ても


『鴨川ホルモー』


『鹿男あをによし』


『偉大なる、しゅららぼん』


  などなど、1見しただけでは、どんな話かまったく分からないタイトルなんですよね。

 まあ、読み終わってしまえば、そういうことか~って感じなのですが、万城目学さんの小説に初めて触れる人は、何だろうと思いますよね。

 自分は『鴨川ホルモー』からだったのですが、とにかく最初は、タイトルの”ホルモー”に全く惹かれず、ちょっと敬遠気味だったんですよね。
 そのうち、面白いよ~って評判を聞いてから手に取ったわけなんですが...

 ふざけてるけど、ホントに面白かったんですよね。

 正直に言うと万城目学さんの本は、タイトルが奇抜なだけではなく、物語の方もかなり奇想天外です。
 こんなの、よく考えるな~、って、いつも思います。

 SFやファンタジーといったジャンルには収まりきらない。

 強いて言うなら

 空想小説

 とでも呼ぶのが、一番ふさわしい感じがします。


 今回の『ヒトコブラクダ層ぜっと』でも、スケールの大きな空想を描いてくれています。

(出版社の紹介文)
 貴金属泥棒で大金を手にした三つ子の前に、ライオンを連れた謎の女が現れたとき、彼らの運命は急転する。わけもわからず向かわされた砂漠の地で、三つ子が目撃する驚愕の超展開とは!? 
 稀代のストーリーテラー・万城目学が挑む、面白さ全部載せの物語。

 多分、紹介文読んでも、よく伝わらないとは思うのですが、万城目学さんのストーリーを伝えるのは難しいんですよね。

 

 紹介文の中に ”砂漠” とあるんですが、主な舞台となるのは、いつもの関西圏ではなく、あのチグリス・ユーフラテス川のメソポタミヤの地です。
 そこで、謎の多いシュメール文明が大きく関わってくるのですが、個人的には、このシュメール文明の話に引き込まれてしまいました。

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 古代エジプト文明とかは知ってるんですけどね~。
 シュメール文明の名前は知っていても、あんまり詳しくはなかったんですが、この本を読んで、俄然、興味を持ってしまいました。
 古代文明のことが気になる方にもお薦めですね。


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 万城目学さんの物語は「予測不能」「奇想天外」と言われたりするのですが、世の中には、定番から外れることを良しとしないジャンル小説もあるんですよね。

 例えば、私の好きな「本格ミステリー」なんかは、最後に "意外な真相が明かされること" が定番化されているジャンルで、逆に、真相が明確でなかったりすると、定番から外れることになって「問題作」と呼ばれたりします。

 読者からすれば、多かれ少なかれ、その本がどういうジャンルに属していて、どんな感じの本なのか、大まかに捉えながら手に取っていると思うのです。
 その最初に想像していたものと、実際に読んだ感じとの対比で、その人の「期待通り」「期待以上」「期待外れ」が生じていくというわけです。


 そういう意味で、万城目さんの本の場合は、定番のジャンルに収まらない事、予測不能の展開が ”定番” のジャンルだと思って読むのが、正しい読み方だと思うんです。


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