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ライツヴィル探訪(続々エラリー・クイーン)

 exploration of ”Wrightsville”


 ライツヴィルというのは、作家エラリー・クイーンの探偵小説に出てくる架空の町の名前です。

 エラリイ・クイーンの探偵小説で有名なのは、ひとつは「Xの悲劇」や「Yの悲劇」など、元舞台俳優のドルリー・レーンが探偵役となって活躍する『レーン四部作』。
 そして、もうひとつ、作者と同じ名前のエラリー・クイーンが探偵役で活躍するシリーズがあります。(紛らわしいのですが...)
 こちらは30作以上の長編があるのですが、そのシリーズの中に、「ギリシャ棺の秘密」や「エジプト十字架の秘密」など、タイトルに国名の付いた『国名シリーズ』と、冒頭に紹介した町”ライツヴィル”が舞台となる『ライツヴィルシリーズ』があるのです。

 『レーン四部作』や『国名シリーズ』は、作家エラリー・クイーンのキャリア初期のシリーズなのですが、本格推理小説の名作として名高く、ファンの多いシリーズです。

 この二つの有名シリーズに対して『ライツヴィルシリーズ』は、中期〜後期に位置付くシリーズで、知名度の点では、いささか地味なんですよね。
 が、今月、発売された<ミステリマガジン>で特集されてるのを見かけて、なんか嬉しくて、思わず”note”してしまったというわけです。


<ライツヴィルシリーズ>
 架空の町”ライツヴィル”が出てくる長編作品は6作品有ります。

1.「災厄の町」
2.「フォックス家の殺人」
3.「十日間の不思議」
4.「ダブル・ダブル」
5.「帝王死す」
6.「最後の女」

 そのうち、新訳がある(予定も含めて)のは3冊


 この『"ライツヴィル"シリーズ』の特徴は、何といっても探偵エラリー・クイーンの切れの悪さ…  普通の本格推理小説なら、様々な容疑者の中から、切れ味鋭い推理で犯人を指名する!みたいなのが定番なのですが、このシリーズではちょっと事情が違います。

 探偵エラリーが登場した『国名シリーズ』では、時には不可能に見える殺人事件を、洞察力と緻密なデータ収集のもと、鮮やかに解決していく天才的な探偵として描かれています!
 ところが、『ライツヴィルシリーズ』になると、悩んで悩むんですよね〜、時には探偵業を放り投げたり……みたいなこともあったり.... その姿は、いわゆる本格推理小説の定型からはみ出そうと足掻いてる感じもして、なかなか興味深いのです。

 ただ、『国名シリーズ』のような話を求めて読むと失敗するのが『ライツヴィルシリーズ』なんで、イメージを切り変えて、人間らしい不完全な探偵エラリー・クイーンを楽しんでもらいたいのです。


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 さて、このシリーズには、若干の時系列があって、出来るだけ順番に読むことをお薦めします。
 ハヤカワ文庫で、シリーズ#3の「十日間の不思議」も、間もなく新訳で発売予定なので、これを機会に読んでみるのも楽しそうです。

 そして、「十日間の不思議」を読み終わった方は、同じくハヤカワ文庫で5年ほど前に新訳となった「九尾の猫」に進んでいくことをお薦めします。


次から次へと殺人を犯し、ニューヨークを震撼させた連続絞殺魔〈猫〉事件。指紋も動機もなく、目撃者も容疑者もまったくいない。〈猫〉が風のように町を通りすぎた後に残るものはただ二つ――死体とその首に巻きついたタッサーシルクの紐だけだった。過去の呪縛に苦しみながらも、エラリイと〈猫〉の頭脳戦が展開される!


 こちらは『ライツヴィルシリーズ』ではないんですが、「十日間の不思議」とは、少なからずつながりのある作品なのです。
 5年前に「九尾の猫」が新訳となった時も、なぜ、「十日間の不思議」が先じゃなかったのか不思議でしょうがなかったのですが、今回、出版されて一安心なのです。


 まあ、こうやってクイーン中期の傑作たちの新訳が出されていくことは、新しい読者さんとの出会いの場になることは間違いないので、このままシリーズ後半も新訳になるといいなぁと、勝手に思ってたりするのです。



(関係note)