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新春企画!一般入試がなくなる世界を考えてみた(5)【赤本がなくなる日から始まる新たな市場の争奪戦】


一般入試が終わった社会を妄想しています。前回はこちら。

今回は、こんなことを考えてみました。

これまで一般入試の場合、それなりに教材がある環境での受験勉強が確保されていました。それは、コストをある程度抑制する側面がありました。

一般入試が廃止されるとどのような受験環境になるのでしょうか。今回はそれを考察しています。

記事中に登場する企業名は架空のものです。

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長く大学入試の過去問を扱ってきた、通称「レッド本」は、一般入試が廃止されることを受け、本年度をもって刊行が終了する。現在は東京大学と京都大学の2冊のみが刊行されているが、紙の本は予約制となっている。発行する教学新社(京都市)の担当者は、時代の役割を終えたと感慨深げに話す。

というのも、このレッド本の廃刊を受け、教学新社は、数研受験出版(京都市)と合併し、教育フロンティア出版となり、新業務体制に移行するためだ。

これまで、数多くの一般入試向けの問題集などを出版してきた新数研出版は、一般入試の廃止を見越して5年前に学校向け教材を販売する新数研出版本体から受験参考書を販売する部門を数研受験出版として分社化した。

今後教育フロンティア出版は、大学教育資格認定試験(資格認定試験)対策の教材の作成と販売を行う。ただ、その先行きは不透明だ。資格認定で求めているものを出版物によって提供できる範囲に限界があるという指摘があるからだ。

一般入試が廃止されることで、今後は学校現場で何を使って受験対策をすればいいのかという混乱が広がっている。

一方で、千載一遇のチャンスととらえている企業もある。
総合型選抜入試対策大手の「未来塾」は、総合型選抜入試から衣替えする大学教育資格認定試験(資格認定試験)対策ツールの販売を全国で開始する。私立高校を中心に多くの問い合わせが来ているといい、営業職員を増強して対応している。
「当社のノウハウを対策ツールに落とし込んでいる。塾で提供しているサービスを学校で受けられる」と力を込める。

とはいうものの、学校の法人契約で、百万円を超える販売価格は議論を呼んでいるのも事実だ。
私立高校の担当者は「正直、高いという印象はぬぐえないが、それでも導入せざるを得ない現実もある。足元を見られているとも思う」と複雑な表情だ。

また、地方の私立高校の理事は
「資格認定試験のコストはいくらになるのか全く見えない。ノウハウが都市部のサービスに偏れば、地方は不利になるのは間違いない。入試の公平性は崩れたとみるべきだろう」という。

しかし、都市部の資格認定試験を専門に扱う塾・予備校も安泰ではない。
「資格認定試験は、結果をコントロールするノウハウをもつところは、いまのところないと言えます」と教育ジャーナリストのX氏は語る。
評価されているポイントが学校によってまちまちで、学校ごとの対策を行うと、対応が膨大となるため、サービスの集約が難しいからだという。

「今のところ機能しているのは、規模の大きいW大対策くらい」というのが現実だという。

来年度から一般入試が廃止される。そこで登場するのは、「東京大学対策向けの資格認定試験対策サービス」だ。
「正直なところ、東大の資格認定試験がこの試験のスタンダードになってくれることを期待している。そうすれば、サービスを絞り込めるし、ノウハウも集約される。これ以上、資格認定試験が多岐に渡ると対策そのものが機能しなくなる。これ以上、価格の高騰は抑えたい」と資格認定試験専門予備校の経営者は本音を漏らす。

「いずれにしても、一般入試が廃止されたことから、資格認定試験対策ビジネスは、本格化する。レッド本などの参考書で受験勉強が何とかなった時代は終わった。保護者は、さらなる教育費の高騰に頭を悩ませることになるだろう」
X氏は、そう締めくくった。

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総合型選抜入試が本格すると、確実に「受験コスト」は増大するとみています。そもそも、大学が実施する総合型選抜入試そのものがコストがかかるので、まず受験料が上がるはずです。
そして、その対策となるコストとなるとさらに膨れ上がることでしょう。

そうなると、難関大の競争は、コストの競争となる可能性は十分にあると思っています。そうなると、当然富裕層が有利になり、社会の流動化は低下することでしょう。

一般入試を廃止してまでも、そんな社会にするべきなのかは、この点も当然議論されるべきだと私は思いますが、あまりコストアップの議論はないのが個人的には残念でもありますね。


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