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医学部多浪生に伝えたいこと

加熱する医学部医学科(以下医学部)入試。大学受験業界に身を置くと、自分が担当していなくても、医学部多浪生をチラホラ見かけることになります。
11月半ばとなり、そろそろ本番が見えてきたこの時期だからこそ、医学部多浪生にお伝えしたいことがありますので、書いておきます。

医学部入試は苛烈だからこそ、厳しいことを書くということをあらかじめご理解ください。また、私は私立医学部については、マネジメントの経験がないので、国公立大医学部入試について書いています。

(1)勝負の大半は既に決している

たとえ、一発勝負の一般入試であっても、勝負の大半は決しているということです。実は春の段階で約半分程度の勝負は決しているというのが現場の実感です。
というのは、医学部の場合、定員が多い九州大学医学部であっても100人ちょっと(来年度は105人とのこと)です。元々定員が少ない上に、現役浪人ともに優秀な人が受験するので、この段階で合格圏外いる場合、逆転はほぼないと考えるべきです。

(2)「何度繰り返しても同じ」の可能性が高い

多浪生の方は、数年前は、「1浪目なので、来年は・・・」と考えておられたかもしれませんが、あまり現状が大きくは変わらなかったので、多浪されているのだと思います。自分の成績はそれなりに上がっても、医学部の合格水準に近づくことができかなったのではと思います。

それは、受験生の問題だけではないというのが私の率直な実感です。
医学部合格者の分布は、前年度不合格者の上位者だった浪人生(つまり、あと少しで合格だった人たち)と満を持して受験の学齢になった極めて優秀な現役生でかなりの部分を占めていると私は理解しています。

また後者の割合が年々増えており、医学部入試の苛烈さは、競争に参加する現役生のクオリティの高さにこそ根源的な理由があると理解しています。

ならば、医学部入試は構造上、このようなサイクルで回っている以上、その枠内に割って入るには、「覚醒」レベルの成長が必要ですが、現実にはそのような離れ業ができる多浪生は、本当に一握りでしかありません。

(3)体力勝負としても厳しい

浪人生の方は、気がつかないかもしれませんが、客観的な立場で受験生を眺めていると、現役と浪人との差は、思った以上に体力の差が大きいと感じます。現役生は、土曜日などは、朝から共通テスト模試を受けて授業にやってきて、国公立大2次レベルの演習を楽々とこなすだけのパワーがあります。

これからこの体力差はじわじわと数字に還元されていくのではと思います。
現役生にひっくり返されることはあっても、その逆はないということは理解しておくべきことでしょう。

医学部に行けなくても敗者ではない

そんなことを塾講師ごときに言われなくてもわかっていると思われるかもしれません。私もこんなことを書くことへの躊躇もありますが、それでも書く理由は、人間は苦しい時程、楽観論になびく傾向がある感じているからです。もちろん、私も例外ではありません。厳しい数字の受験生が、何らかの要素でいい方向に転じてくれないかと思うことは日常茶飯事です。
他学部ではそのような事例もなくはありませんが、医学部では残念ながら皆無です。

自分の気持ちに折り合いがつけば、他学部の選択を考える「勇気」も大切ではと思います。なかなか難しい判断なのだろうとは思いますが、「医者にならなければ、人生の敗北者」ではありません。人生の新しい目標を設定し、そこで頑張るのも立派な人生の歩み方ではと思います。

医学部に合格するためには、本人の努力だけなく、才能であったり、周囲の環境にも依存します。広くとらえれば、運も排除できないということです。それも頭に入れておいて損はないのではと思います。


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