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日曜日の本棚#15『寝ながら学べる構造主義』内田樹(文春新書)【入門書こそ面白いと信じる著者が提供する納得の面白さ】

毎週日曜日は、読書感想をUPしています。
前回はこちら。

先週は多忙のため、お休みしましたが、今週は頑張って記事をアップします。現在読んでいる本が歴史的な名作文学ということもあり、久しぶりに併読で新書を読んでいます。

今回は、神戸女学院大学名誉教授で、思想家、武道家でもある内田樹(たつる)先生の『寝ながら学べる構造主義』(文春新書)です。

若いころは、新書が好きで乱読していましたが、今は小説がベースになっています。
今回、久しぶりに新書に手を出してみました。理由は、Amazonのkindleが半額セールをやっていたからです(^^;

内田先生に大変失礼な不純な動機でしたが、読んでよかったと思います。

内容紹介

構造主義は現代思想の代表みたいにいわれるけれど、一体どんな思想なんだろう。そう思って解説書を手にとれば、そこには超難解な言い回しや論理の山。ああ、やっぱり現代思想は難しい……。そんな挫折を味わった方はぜひ本書を。フーコー、バルト、レヴィ=ストロース、ラカンといった構造主義の主唱者たちは、要するに何が言いたかったのか、「思想の整体師」の異名をもつ著者が、噛んで含めるように説き明かします。「そうか、そうだったのか」の連続となること必定です。
(文藝春秋社のコメントより)

入門書の面白さを知る筆者の書く入門書

まえがきで内田先生は、入門書の面白さを解説されています。

・・・「よい入門書」は、「私たちが知らないこと」から出発して、「専門家が言いそうもないこと」を拾い集めながら進むという不思議な行程をたどります。(中略)よい入門書は、まず最初に「私たちは何を知らないのかを問います」(中略)入門書は専門書よりも「根源的な問い」に出会う確率が高い。これは私が経験から得た原則です。

まえがき

内田先生は、日本で最も本を刊行されている一人でしょう。このような視座を持っておられることを持ってしても納得のいくところです。

物事の根源的な問いから出発している人が書いた本が面白くないはずはありません。本書は2002年刊行の本ですが、いささかも古くなっていません。

人物を中心に配する意味

本書は、構造主義を理解する上で、重要な4人の人物を挙げています。
フーコー、バルト、レヴィ=ストロース、ラカンがそれですが、知識としてこれらの人物について、私は
フーコー・・・まあまあ知っている。入門書も読んだ。
バルト・・・名前だけ知っているが、主張は全く知らない。
レヴィ=ストロース・・・名前と『野生の思考』の存在は知っている。
ラカン・・・名前さえも知らない。

という感じでした。このようなバックグラウンドの読者である私が読んで、フーコーのところは面白かったが、ラカンのところはチンプンカンプンだったというのは、内田先生の主張では、ダメな入門書です。

本書はそうなっていません。ラカンについて興味が沸いた。バルトってどんな人なんだろうという好奇心を喚起させる。構造主義を興した4人の人物をそろって読者に興味を持たせる仕事こそが入門書の仕事なのだと痛感します。

本書ならではの面白さ

本書で一番面白かったのは、このころのフランス思想で中心人物であったともいえる、ジャン・ポール・サルトルをレヴィ=ストロースが断罪したと書かれているところでしょう。

「えーっ、そうなの?」という驚きは、結構エンタメ的でもあります。

「お代を頂戴するんで、こんな企みを入れておきますよ」という内田先生の「作為」も楽しいところでもあります。
(木戸銭が少なくて、すみません。別の本も買いますという心境です)

上記4人に加えてサルトルの実存主義も同時に興味を喚起するところも楽しいところでもあります。

本書がそのまま構造主義的になっている

本書は、構造主義前史とするところから出発します。ここでは、哲学者としてのカール・マルクスの業績であったり、素人には全くどのように理解すれべきかわからないフロイトの仕事への視点を授けてくれます。

本書を俯瞰すると、それがそのまま構造主義になっていることに気づきます。その意味でも巧みな構成となっており、入門書としての意義は、高い次元で達成されているのではと思います。



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