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「SmartHRらしさ」を可視化し、表現の仕組みをつくる。ブランドマネジメントの挑戦

SmartHRで働くメンバーで「これはSmartHRらしいね」「なんだかSmartHRっぽくないね」といった会話をする場面がよくあります。一方で、SmartHRが発信する情報や制作物に対して「SmartHRらしいですね」と社外の方に言っていただくこともあります。

「らしさ」とだけ聞くと曖昧で定義が難しい印象です。「みんなが“SmartHRらしさ”の表現に迷わない仕組みをつくり、安定してアウトプットできる土台をつくり、ブランド表現のガバナンスが効いている状態をつくる」役割を担う、ブランドマネジメント部のbebeさん、sayurikoさんのお二人に、どのように進めているのかを聞きました。


話者2名略歴

【@bebe(渡邉惇史)】株式会社SmartHR コミュニケーションデザインセンター センター長。
制作会社でエディトリアルデザイン、事業会社でデザイナーとしてアプリやウェブ、販促物まで広く経験。その後2016年にSmartHRに入社し、現在はブランドマネジメント部のマネージャーとコミュニケーションデザインセンターのセンター長を兼務。好物はお米。

【@sayuriko】株式会社SmartHR ブランドマネジメントディレクター。
タイプデザイナーやフリーランスのコミュニケーションデザイナーを経て2021年にSmartHR入社。現在はブランドマネジメント部において、SmartHR Design Systemの運営やブランドに関わる各種プロジェクトに取り組む。好物は小麦。


「らしさ」をつくるブランドマネジメントの仕事

ーーSmartHRらしさの表現に迷わない仕組みをつくる……とお聞きしましたが、日頃どのような業務をしていますか?

sayuriko:今は大きく分けて2つの活動をしています。1つ目は、SmartHRらしい表現をだれでもできるようにするための、ブランドのアセットや情報がまとまっている「SmartHR Design System」のコンテンツとガイドラインの整備。2つ目は、SmartHRのトーン&マナー(以下、トンマナ)を整理するプロジェクトで、「SmartHRらしさ」を表現しやすい状態をつくろうとしています。
そのほかにも、社内で横断的に動いているブランドに関するプロジェクトにメンバーとして参加するなど、時期によってコミットするプロジェクトが複数あるような状態が多いです。

bebe:2024年1月に全社的な組織変更があり、これまでの体制を継承する形で「コミュニケーションデザインセンター」という横断組織をつくりました。大きく変わってまだ3か月半のため、今は組織の立ち上げ業務に時間を使うことが多いですね。
そのため、キックオフミーティングや定例会議の改善、今後の計画を立てるためのヒアリング……といった部分を進めていますが、ブランドマネジメント(以下、ブラマネ)の多くの業務はsayurikoさんや他のメンバーが進めてくれています。

sayuriko:bebeさんはマネジメントの役割が大きいので、体制を整えたり、方針を定める部分に注力していますよね。

だれでも・効率よく・迷わずにSmartHRらしい表現をするためのデザインシステム「SmartHR Design System」

ーー日頃やり取りが多い部署はありますか?

sayuriko:特定の部署というよりは、プロジェクトごとに変わりますね。例えば、トンマナを整理するプロジェクトでは、サービスデザイン部やブランドコミュニケーションデザイン部のメンバーと共に議論・検討しています。また、プロダクトアイコンの制作時には、開発メンバーやPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)とのコミュニケーションが多くなります。

bebe:部内でお互いの動きは認識しており相談し合うこともありますが、部やユニット単位で動くよりもメンバーが個々に関わっているプロジェクト単位での動きが多いですね。
私は、ブランドコミュニケーション本部内の他のマネージャーと、本部の動きについて議論することが多くあります。今期から「サービスやコーポレートブランドの今後」を検討する動きが始まっているので、そこをテーマとしたやり取りが増えています。

ーーでは、特に印象的だったプロジェクトを教えてください。

sayuriko:最近では、「SmartHRらしさ」の発散をしたワークショップが印象的でした。メンバーによって日頃接している領域が異なることもあってか、注目するポイントも違うことがわかり、整理する価値があるなと思いました。

bebe:具体的にどんなところが印象的だったかを聞いてみたいです。

左手前に後頭部が写っており、右奥に腕を組んだ男性が写っている。

sayuriko:いくつかのタッチポイントを並べて見ながら「SmartHRらしさ」をどれに感じるかなどを発散したのですが、例えばSmartHR Design Systemのサイト本体・営業資料・サポートコンテンツそれぞれから「SmartHRらしさ」を確実に感じますが、見た目の印象だけを極力フラットに見ると、トンマナには個々に差があります。施策の目的やターゲットによっても最適な表現が異なってくるので、そういった複数の観点から検討する必要があることが改めてわかり、ブランドをつくるのは奥深いなと思いました。

bebe:sayurikoさんはSmartHRの制作物に関するインプット量が多くグラデーション部分も見えているからこそ、特にそこに意識をおけるのかもしれませんね。

sayuriko:組織変更時に、名刺に記載する肩書きなどの情報について、全社的なガイドラインを定めました。そのときは、「そういえば、組織変更をするなら名刺にも影響がありそうだね」という社内のやり取りから活動が始まったんですよね。確かに、こういった活動もブラマネの領域であり、活動範囲を自分で決めて広げていくような一面があると気付きました。

自分の考えで「一旦進める」気持ちを強く持つ

ーーでは、ブラマネにおいてどのような業務に難しさを感じますか?

sayuriko:情報を整理して「いろいろ検討した結果、こうなった。今はこれを信じる」と思いながら進めていますが、本当に大丈夫かなと不安に感じることはあります。
例えば、先ほど話に挙がった名刺ですが、全社員に関わるものなので影響範囲が広く、考慮漏れがないかと社内に向けて情報を展開するときはドキドキしました。また、SmartHR Design Systemは社外にもオープンに公開しているものなので、意図していない伝わり方になりうる表現になっていないかと、慎重になることもあります。「WIPの精神」でまずは出すことを優先する場面と、丁寧に検討した方が良い場面が入り混じっている感覚があります。

bebe:特に関係者が多いときに、関係する人の立場によって気にしたいポイントが異なることは少なくないですよね。sayurikoさんはそれぞれの考慮点に配慮しながら普段からとても丁寧に、上手に進めていると思います。淡々と進めている印象があるので、もしかすると周りからはあまり難しいことをやっているように見えないかもしれない。でも、sayurikoさんがつくったもの、まとめた内容に対してみんな「わかりやすい」と言っていることが多く、難易度の高いことをいつもやり遂げている印象があります。

SmartHR社の名刺デザイン

sayuriko:ほえ〜恐縮です、ありがとうございます。自分の考えで一旦進めてみる強い気持ちを持って取り組む場面もありますが、その塩梅が難しいところかもしれません。

bebe:「一旦」の部分を決めるのが難しい。そして、周囲が納得できる状態をつくるのも簡単ではないですよね。

sayuriko:そうですね。あとは、業務に明確なゴールが無い感覚があって、面白くもあるんですが、自分で区切りを付けないと「ずっと続いている」感じがしますね。ある意味コントロールしがいもあります。

bebe:今期からブラマネ部は「SmartHRらしさの可視化・言語化」と「表現の補助となる仕組みをつくる」という2つの軸で活動しています。
前者は、「SmartHRらしいって、どこからが“らしい”んだっけ?」という抽象的なものを整理し、基準をつくる。後者は、名刺の記載事項の整理など「これを参照すれば自分たちで進められる」というものです。

難しさとは少し違うかもしれませんが、こういった広い範囲に関わる活動に対してわずか数名で取り組んでいます。他部署から声をかけてもらうなど、様々な活動ができるチャンスがあると思いつつ、人手不足ですべてをやりきれていないもどかしさがありますね。

夜景が見えるガラスにぼんやりと2人の人物のシルエットが見える写真。

ーーでは、ブラマネに携わる面白さはどのようなところでしょうか?

sayuriko:やや私の性格的な話になっちゃうかもしれませんが、私はストレングスファインダーの資質では収集心や学習欲が強く、情報を集めてインプットするのが好きな性質を持っています。そのため、タッチポイントが増えるなどのブランドにおける新しい動きを把握すること自体がわりと楽しいんですよね。

その上で、触れる情報もプロダクトからブランドまで様々ですし、SmartHRは社内の情報がとてもオープンなので、知りたい情報をどんどんキャッチアップしていけます。自由に広く見通せる環境で働くのは面白いなと感じます。

bebe:社員数が増えると、共通認識を持つ難易度が上がりますが、基準があることで効率的に動きやすくなる。また、みんなが「らしい」行動を重ねることで、らしさが強まっていくと思っています。その効果が大きく出せていると思うし、このチームならでは形で貢献できることが面白いと思います。

sayuriko:ブランドマネジメントの取り組みも、私がこのチームに所属する以前の過去からの積み重ねがあって、今の状態ができていることを日々実感します。そして、整えれば整えるほど社内からの問い合わせが必要な場面が減っていくと思っていて。ブラマネの「静かになるほど機能する」面が面白いですし、静かになったらその分の時間で新しいことが始められるな、と楽しみです。

“表現を育てる” ブランドマネジメント

ーーブラマネをする上で、大切にしていることを教えてください。

bebe:「ブラマネ部のメンバーの判断だけが正義」という空気感にしたくないと思っています。例えば、SmartHRが変われば、状況が変われば、人が変われば、その他サービスの数や時代やいろいろなものが変われば、表現の在り方自体も変わると思うんです。そうなったときに、私たちの定義したものが常に最善で最新なわけではない。
仕組みは現時点での可視化であって、時間経過とともに必ず古くなっていきます。そのため新しい表現の可能性を閉ざさないという意味で、「表現を育てるものでありたい」と社内ドキュメントに記載しています。

sayuriko:例えば、組織体制を変更したことで、サービスやコーポレートなど各所でブランドに関する定義の会話が始まっているのですが、色々なチームでブランドに関する議論が生まれているのはとてもポジティブな状況だと思っています。ブランドはみんなで育てていくものでもあると思っていて、そういった組織全体のムードは今年に入ってから特に感じるようになりました。
最近は、ブランドマネジメントとしての役割を期待されて社内の他のプロジェクトにアサインされることもあるので、そういったときにしっかり役割を果たせるよう体制を整えておこうと思っています。

ブランドマネジメント部ブランドマネジメントユニットの、2024年以降の活動に向けた社内向けドキュメントの一部

bebe:部内で議論する際に、私とsayurikoさんの間で意見が割れることもありますよね。私は表現を制限しない意識が強いものの、一方で、なんでもかんでも世に出てしまうと、「らしい」表現の割合が減って、そもそもの「らしさ」がわからなくなる危険性がある。

sayuriko:意見が割れても、「両者譲らず」みたいなことは無いですね。bebeさんは「何を言っても大丈夫だよ」という雰囲気があるので、仮に意見が割れても何でも話せます。

bebe:僕も嘘がつけないので、わかるまで聞いてしまうところがありますね。あとは、意見が割れるのは自分たちでも曖昧な部分ということなので、仕組み化のチャンスな気がします。

また、白と黒の二択にしない意識を持っていますね。ガイドラインは「取り締まるべきルール」というよりも「議論の拠り所になる線を引く」イメージです。
例えば、基本的にはこのサイズで使いましょうね、というものがあったとします。背景には、そのサイズで使われる場面が多かったり視認性を担保したりする目的などがある。ただ、仮にイレギュラーな場面が発生した際に、漠然と「守らないといけないから」ではなく、効果を最大化する目的があるのなら、場合によって柔軟に判断する必要もあると思うんですよね。

ブランドマネジメントにたどり着くまでと、これからのキャリア

ーー少し話を変えて、bebeさん、sayurikoさんがSmartHRに入社してからこれまでのキャリアを教えてください。

bebe:私の経歴は少し特殊なので...…「こういう人もいるよ」という事例としてお話ししますね。私は2016年11月にSmartHRに入社したので、いま8年目です。当時の社員数は15名ほどで、デザイナーとして採用された正社員は私が1人目でした。
その時は開発チームに所属していたためスクラムに参加したり、その一方で営業資料をつくったり、展示会で用いる販促物をつくったり。その他、サービスサイトのリニューアルやノベルティ制作など、その時に必要なことはできる限りなんでもやっていました。

そこから徐々にメンバーが増え、コミュニケーションデザイン(以下、コムデ)とプロダクトデザインの2つのチームにわかれました。私は前者に軸足を置いてその後は活動しています。2022年にコムデのマネージャーが2名に増えてからは、私はブランドデザインのチームとディレクションのチームを担当。そして、現在はブランドマネジメントのチームとコミュニケーションデザインセンターのセンター長として旗振りを担当しています。

sayuriko:私は2021年8月入社で、今2年半が経過したところです。入社時点では、ノベルティなどの物理アイテムの制作を中心に活動されている方と、SmartHR Design Systemの運用などを担当されている方が所属する、ブランドコミュニケーションユニットに3人目のメンバーとして入社しました。当時はまだブランドマネジメントという部やユニットはありませんでしたが、後者の方がお一人でその活動全般を担っているような状況でした。

私はノベルティなどの物理アイテム制作とSmartHR Design Systemのコンテンツ作成などの両方に関わる形で活動し、その後、オフィスや名刺といったコーポレート関連のタッチポイントのアートディレクションに携わり始めます。2023年の夏ごろにチームの体制が変わり、ブランド関係のアートディレクション業務とブラマネの業務を7:3くらいの割合で担当するようになりました。
2024年1月からはブラマネにフルコミットすることになったので、「隣の部に異動」といったような感覚ですね。

ブランドマネジメント部ブランドマネジメントユニットのオリエンテーション資料

ーーbebeさんとsayurikoさん、それぞれの経緯があって今ブラマネを担当されていますが、今後のキャリアの展望をお聞きしたいです。

sayuriko:まだぼんやりとしていますが、ブランドを育てる意識が社内で強まっているので、この流れの中で「ブランドが育つところを一緒に体感したい、変化を見ていたい」と思っています。

あとは漠然とですが、グローバルに利用されているプロダクトにも興味がありますね。ブランドマネジメントの観点だと、国やカルチャーによって守る/守らないの線引や、考慮するポイントが変わってくると思うんですね。組織の数だけ機能するルールや仕組みもあると思うので、そういった知識や経験、引き出しが増えたら面白そうだなと思っています。

bebe:私は異なる価値観に触れる瞬間が面白いと思っていて。もはや会社と関係ないのですが、海外の方とコミュニケーションを取りながらものづくりをすることとか、異国の文化の中で何かをすることに対して、ずっと興味があります。ただ「今後のキャリア」と言葉にすると「これをやりたい」を私はあまり持っていなくて……

ーー必ずしも壮大な夢を描いていなくても良いと思います。

bebe:昔、海外旅行でUberやAirbnb を初めて利用したときにその合理性に魅力を感じ、当時強く影響を受けました。これをきっかけに「社会に新しい価値を生んでいるサービスに携わりたい」と思い、スタートアップへの興味を持ったことがSmartHRへの入社につながりました。そのような"スタートアップ"の中でデザイナーとしてどこまで挑戦できるか、をテーマにこれまで取り組んできたんですね。引き続き、生み出す価値を拡大する「スケールアップ企業」としてのSmartHRの中で、今自分が最大限活きる役割でチャレンジを続けていきたいと考えています。

今のSmartHRにとって必要なものがマネジメントであればそれを私はやりたいですし、他に必要な役割があればそこに力を使いたい。これまでも、自分の価値観と会社に必要とされるものをマッチさせて取り組んできた気がします。

sayuriko:bebeさんは何かを解決するためのエンジンをずっとかけているような、そんな印象があります。

ブランドの形そのものをつくっていきたい人と一緒に試行錯誤しながら、ブランドを育てたい

ーーお二人が所属するブラマネ部は絶賛採用中ですが、このポジションでどういう方が活躍されそうかを教えてください。

sayuriko:幅広い関係者の声を聞きながら自分でも思考し、柔軟な判断をしながら実行もしていけるような方にご活躍いただけると思います。また、ブランドの安定を強化するための守りの動きと、ブランドを広げたり育てることを加速させるための攻めの動き、攻守どちらも求められる場面があるので、どちらの状況も前向きに取り組める方だと楽しめると思います。

bebe:私たちが「自分たちが考えた通りに進めてほしい」というマインドを強く持ちすぎて、みなさんの活動を制限するような状況は生まないように気をつけたいですし、むしろ支援するような活動をしていきたい。一方で自分たちが旗を振って周りを巻き込みながらリードして行く場面もあり、それぞれの場面に合わせた立ち振舞いが求められると思います。そういう意味でのバランス感と柔軟さが大切かなと思います。

sayuriko:事業の成長が速く変化も大きいことは、ある意味ブラマネとは相性が良くないと思っていて。世の中のブランディングのセオリー通りに進まず、一般的なフレームワークが当てはまらないことが多い中で、都度最適な形を考えていく必要がある。
そのため、情報を吸収し、自分や周囲の変化自体も楽しみながら、「まずやってみよう」と思えるマインドは大切そうですね。

bebe:組織の規模が大きくなってきた今、「集団で物事を進めるときに仕組みや基準があると議論を加速させられる」という関心・感度の高い方だとありがたいですね。


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