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アルツハイマー病になった母がみた世界を読んで

老年期認知症を研究する医師が書いた本

齋藤正彦さん著書。
アルツハイマーと診断されたお母さんの、20年間に渡る日記を元に書かれた本です。
お母さんの日記とご自身の日記やメールを照らし合わせ、時系列的に書かれています。

精力的なお母さん

日記を追い始めた67歳~75歳頃までのお母さんは、とても活発に動かれていました。
同じ年代の方とは比較できないほど、毎日躍動していました。
この本を読み始めた時、
このお母さんが、これからアルツハイマーと診断されるの?
と疑うほど、教養に溢れバイタリティーのあるお母さんです。
年齢相応の「物忘れ」に注意を払いながら、生活していたのが伺えます。

たびたび失敗をするようになる76歳~79歳頃までの三年間は、生活にも少しずつ変化がみられるものの、
「しっかりしなければ」
という意識が高く、毎日反省しながら自身をコントロールしていく様子が書かれています。
学びの時間をしっかりと作り、交友関係も減らすことなく、なるべくお出かけすることを意識して動いていらっしゃいました。

ところが、80歳を過ぎたから、
「ボケてしまったのかな」
ということを自覚している言葉が、日記にたびたび書かれるようになります。

葛藤の連続

その後のお母さんは、自分を叱咤激励しながらも、次第に全てのことに対する意欲を失っていく様を日記に記しています。

だんだんと読むのも苦しくなります。
少し前の記事に書いた『認知症の母の苦悩』と重なります。

私の母が、有料老人ホームに入居する前によく発していた言葉は、
「なんだかよく分からない」
「頭が混雑する」
でした。

この本のお母さんも、
「頭が混乱して何がなんだかわからない」
とよく言っていたそうです。
本では、日記が書けなくなった最期の二年間は、
近くでお世話されていた方の家族宛のメールからお母さんの様子を
読み解いていました。
毎日、苦しかったのでしょうね。
「早くどうにかしてほしい」と願っていたようです。

認知症の人の心の中を理解するためには

私の想像でしかありませんが、重度の認知症であっても
『何も分からなくなって楽になる』
という訳ではなさそうです。
常に「何が分からないか、分からない」
ことに頭が混乱し、悩み、イライラしている気持ちになるのでしょう。
母が、暴言を吐いたりするのも、このような気持ちの表れだということであれば、納得します。

認知症を研究する医師でさえ、自分の親のことになると、客観的に物事を判断できない様子もこの本には書かれています。
であれば、専門家ではない私たちは到底理解できないことなのかもしれません。
でも、この本に出会ったことで、少しだけ
認知症の母の『今』を理解することができたような気がしています。

頭の中が混雑する

その通りなのね、ミツコさん。

最後までお読みいただきありがとうございました。






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