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「思ったのと違う」をやり抜く力

先日アメリカの大学生から相談を受け、その内容がとても印象に残ったのでシェアします。

この学生はデータサイエンス専攻の1年生。4年後の就職を見据えて既に様々なインターンに関わっており、今回の相談は「今学内インターンの仕事を辞めようか迷っている」というものでした。彼はインターンやプロジェクトを掛け持ちしており、それに加えて授業や課題もあります。大学1年生のうちから、4年後の就職について具体的に努力し始めている姿はまぶしく、更に人を頼る力を若くして既に身につけている事に感銘を受けました。


彼の悩み

具体的な悩みを聞いてみると、ネットワーキングを目的として始めた仕事(経営者や技術者を呼んで講演会を開催する(TED-TALKの様な)の運営側の仕事)が、「なんかか思ったのと違うな。。。辞めようかな。。。」というものでした。インターンを通して技術習得に集中したいかも、というのが大きな理由でした。

この「なんかこの仕事思ってたのと違うな。。」という感覚懐かしいです。私も新卒入社直後、思い描いていた仕事像と現実のギャップに衝撃に受けてそう感じていました。3年目ぐらいでも「この仕事やっていて、この先どうなるんだろう」と不安になったり。5年経っても「やり方をこう変えた方がいいんじゃないかな」。その時時々に応じて形を変える「思ったのと違う」と共に歩んできました。もう10年以上やってますが、きっとこれからもそうなるでしょう。なぜなら、自分が成長し続ける限り、理想と現状は常に乖離し続けるものです。現状を高めるために、学習し続け、より広い見聞を持ち、前よりも高い視座から今の現状を捉えれば「思っているのと違う」と感じ続けて当然です。

彼の相談に対して私は「技術力向上を目指すならその仕事は少し違うから、今の仕事続けながら他のインターンも並行で探したらいいと思う。けど仮にこの仕事を続ける羽目になっても、気の進まないことを最後まで上手にやり切った、という実績が残るから前向きに取り組むのもいいかもね」という、日本人らしい玉虫色の回答を出しました。

この回答になった理由は、他のインターンで技術力が上がるのであれば、就職という彼のShort Termの目標は達成できる。けど今のTech業界はLayoffだなんだでInternの採用どころじゃないので、優秀だが1年生の彼には難しいかもしれない。仮に他のインターンがダメだとしても「気の進まないことを最後まで上手にやり切る」経験と力は彼の人生にとって中長期で活躍する糧になると思います。

成長の先に待つ現実

先の例の様に、成長し続ければ「思っているのと違う」と感じるものです。
また、どんな仕事もいずれは部下を持つ様になり、昇進すればする程自分の好きなエンジニアの仕事から遠ざかっていきます。一方で、マネジメントは多くの部下(彼や私の場合はエンジニア)に自分の知識や経験を継承し、「集」の力でより大きな価値を創造する立場です。長期的にはどこかで、好きな仕事 VS 社会的インパクトのトレードオフに折り合いをつけなければいけません。「「死」とは何か」でも議論されていた様に、人類の生まれてきた意味の一つとして、自分の知識や経験を後世に受け継いでいくこと、があると思います。マネジメントはその手段の一つで、自分の「やりたい」を犠牲にして、「思っているのと違う」をやり抜き、社会に貢献しているわけです。大袈裟かもしれませんが、彼が今気の進まない仕事をやることは、長期で彼の人生に役立ち得ると思い、玉虫色の回答になりました。

これは部活動で、1年生が準備片付けをする、というのにも共通していると思います。大学1年生の時は「自分達が一番練習しなければいけないんだから4年生がやる制度に変えてはどうか」なんて思ったりしていたものですが、振り返ってみれば、4年生は部全体の運営に責任を負って生活しているので、前例のマネジメントと同じ立場だったのだと気づきました。1年生の時に「やりたくない」ことをやる力をつけ、2年生になると1年生を指導する(ミニマネジメント)。3年生は翌年を見据えて4年生の背中から学ぶ(マネジメント見習い)。そして4年生になると選手であるだけでなくマネジメントを実際にやるわけです。そう気付けたら、この順番であることがスッと腹落ちしました。

まとめ

さて私はエンジニアになるために、商社でのマネジメントの道を辞める決断をしました。やりたいこと、を優先して横移動したわけです。この先自分がどう思うかは分かりませんが、もしこの先マネジメントになる機会に巡り会えたなら、次は私も、やるべきこと、をやってみようと、この記事を書きながら考えさせられた次第であります。

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