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抗がん剤治療と妊孕性


妊娠・出産に対する私の思い

私は子どもが好きです。
友人・知人のお子さんとプライベートで関わることもありますし、仕事として直接/間接的に子どものためになることがあれば積極的に取り組みたいという思いもあります。

一方で、自分自身が妊娠・出産するというイメージがどうも湧かないまま30代になってしまいました。正直、痛いのが怖くて堪りません。
お母さんになった友人からは『痛いけどそれどころじゃない』とか『いつの間にか痛みを忘れて2人目産んでる』なんて聞きます。そういうお話を聞く度に、母って強い…と感動します。
(私なんて、ヒトがウズラくらい小さい卵から生まれたら良いのに…なんて考えたことが何度もあります)

ぶっちゃけnoteにするつもりなので包み隠さず表現しますが…
私は、子育てはしたいけど痛いことは絶対に嫌、出産はしたくないという幼稚な考えをずっと持っていました。

がんによって、望んでも妊娠できない体に

2023年1月に主治医から『直腸がん』『多発性肺腫瘍』と診断を受けました(詳細は別の機会に書きますね)。
今後行っていく治療の説明を一通り聞いて、その翌々週には初回の抗がん剤治療を予約しました。

その話を職場の先生にお伝えしたところ『妊孕性の話は聞いた?』と。
私、ナニソレ状態。
(今思えば、主治医先生!最初にちゃんと教えてくれい!という感じです)

妊孕性と私の決断

妊孕性とは、妊娠するための力を指します。
がんの治療によって生殖機能が低下し、妊娠が難しくなるそうです。
今後の妊娠を希望する場合は、がん治療に入る前に卵子や精子を凍結保存する妊孕性温存という選択もできます。
参考:妊孕性(にんようせい)|がん情報サービス

当時結婚、妊娠、出産の予定が特になく、仕事に大きな価値観を置いていた私が出した結論は、とにかく早く治療に入ること。
すなわち、卵子凍結に時間もお金も使わず、予定通り抗がん剤治療に入ることを選択しました。

決断に至るまでの葛藤

実は悩まなかったわけではなく…
私は長女で、両家にとっての初孫です(それはもう大事に育てられました、ありがとう)。
そして現状、私を含めきょうだい・いとこ全員独身。
その状況を見て、何故か自分がやらねば!と気負っていた部分もありました。
それに、両親に自分の子どもを抱っこさせたかったなとか、祖母たちにひ孫だよって遊んでほしかったなとか思うことはありました。自分が大事に育ててもらった恩返しみたいな感じです。

”家”を考えると妊孕性温存は選択肢に挙がりますが、それよりも自分自身の思い(痛いのは怖い、とにかく仕事をしたい)を優先したいと考えていました。
家族に申し訳なさを感じながら。

同僚の妊娠報告を受けて

そう考えていたのと同じ頃、たまたま職場の同僚と食事に行きました。
同い年で仲良くしてくれる同期で、1年目から沢山遊んでいろいろな思いを共有してきただいすきな人です。
その人から『妊娠している』と教えてもらいました。
(職場で1番最初に教えてくれたんだって。わーい☺)
その人の妊娠・出産に対する思いを事前に聞いていたので、私もほんっとうに嬉しかったです。お店でちょっと泣きそうになっちゃいました。

配慮に欠けるかなとも思いつつ、私も自分自身の妊孕性の話をさせてもらいました。
病気の治療によって妊娠できなくなること。個人的には妊娠できなくなっても問題ないけど、家族のことを考えると選択が難しいこと。子どもがいる環境で生きていきたい思いが強くなったときには、養子縁組を考えたいこと。今は少しでも早く治療してガンガン働きたい思いが強いこと…。

長々話しましたが、同期はしっかり聞いてくれたうえで私の意思を尊重して応援してくれました。嬉しかった。心強かった。
その分、これから生まれてくるその人の子を私も大切にしようと誓いました。

母への報告と後悔

私の中で気持ちが固まった頃、母にも伝えました。
決めちゃう前に、本来は先に相談しておくべきだったね。ごめん。

私の話を聞いて、母は『悩むね…』と答えました。
私の中では結論が決まっていたので、母の思いはそっちのけで治療に入る形になりました。

私がした選択自体に後悔はありませんが、少なくとも家族には事前に相談して、私の意思を丁寧に伝えておくべきだったなぁという思いは後々出てきました。

私が混乱していたのと同じように、家族だって混乱していたと思います。
父も母も私の前では冷静でいてくれたし、当時の私には家族の思いまで気を回す余裕が全くありませんでしたが、気持ちが置いて行かれているような感覚は家族にもきっとあったんでしょうね。

いつも好き勝手やってごめん。
家族の思いを蔑ろにしてしまっていることには少し後悔が残っています。

以上、抗がん剤治療と妊孕性についてでした。


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