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口頭決裁文化の会社にテレワークは向かない

「他の会社(業種)はともかく、うちの会社(業種)にテレワークは向かないよ」

テレワークの普及に連れて、耳にする機会が増えたフレーズでは無いだろうか?

確かに顧客との対面が求められる仕事や
工場で作らなくてはならない製造の仕事のように「場所」に制約される仕事は存在すると思う。

しかし、「場所」に制約される仕事以外でも「テレワークは向かない」というフレーズで片付けられているケースが発生していると思うのだ。

本来なら「場所」に制約されないはずなのに、結果的に場所に縛られてしまう事も確かにある。
例えば、官公庁や取引先への書類提出や捺印。このような「対外的な手続き」を理由に出社が必要なケースはあるだろうし、自社の努力で変えられる余地は少ないと思う。

一方、同じ書類提出や捺印でも社内手続きであれば、解決可能なはずだ。
しかし、「他の会社(業種)はともかく、うちの会社(業種)にテレワークは向かないよ」となってはいないだろうか。

書類の取り扱いや捺印の電子化、手続きそのものを不要にすることに一定の理解を得ても、「単発で見た期待効果」とそれに対して「必要なコスト(時間、労力)」を鑑みて判断し、結果としてあまり進まない という現象が、あちこちで起きていないだろうか。

こうなると結果的にテレワーク時に実施できない業務が増え、「テレワーク向いてないよね」となり、そして「他の会社(業種)はともかく、うちの会社(業種)にテレワークは向かないよ」にループして戻ってくるのである。

「向いていない」ループを回避しないと…

前述のように「場所」や「自社以外の要因」による影響が大きく、テレワークがアンマッチと理由で「採用しない」というのは、合理性のある判断だと思う。

一方でそうした理由ではなく、「向いていない」 ➡︎ 「ルール、仕組みを変えない」 ➡︎ 「テレワークだと業務効率が悪い」 ➡︎ 「向いていない」というループの中でテレワークを回避し続けるのは、合理性のある判断ではないのではないだろうか。

テレワークは仕事に関して場所と時間に柔軟にする働き方である。従業員の時間効率ばかりに目が行くが、実現すると企業にも相応のメリットがあるはずだ。(優秀な人材確保、オフィス面積縮小、移動時間減少、交通費削減など…そして副次的にはテレワークを機能させる為にプロセスや情報の透明性が必要となり業務改善にもメリットがあるはずなのだ)

もちろん「今時点」で「向いていない」事はあると思う。
この向いていない環境の中で、「やみくもにフルスロットルで突入する」のは、適切ではないだろう。

では何から始めるべきなのだろうか? 

答えを出す前にこれまでの働き方やそこから類推される「向いていない」背景から考えてみたい。

そもそもテレワーク前夜まで企業は基本的に集まって仕事をしていた。
そこには、今でもある「場所」という制約要素の他に「知の集中」という要素があったと考える。

出社にこだわる背景は口頭決裁文化?

企業として成果を出す上で「知の集中」が大事な要素であると言うことに異論がある方は少ないと思う。

「知の集中」の為に「集まる」のは有効な手段だ。
かつては情報の持ち出しは難しく、同じ空間を物理的に共有する事が、知の集中の唯一の手段だったのだろう。

しかし、今はテクノロジーの進化によって書面や音声、映像など様々な情報を会社から物理的に持ち出す事がなく共有可能になった。

離れてもいても「知の集中」は可能になったはずなのだ。

しかし、オフラインと同じレベルで単純に情報を共有できるか? というと物理的な空間を共有していない事もあり、簡単ではない。そこでオンラインの場合、「準備」がより必要となる。

「情報を伝える為の準備」だ。準備の時間はかかるが、結果的にこの準備により理解も進むし、記録も残しやすい。また、関係者全員の移動などの時間を考慮し広い結果で見ると時間効率が高まる事が多いと思う。

しかし、口頭決裁文化の会社では、この準備のスキルが高くない傾向がある。それは、情報に不足があっても口頭で補足可能だったからだ。

一方、書類決裁文化の場合、「過不足なく主張をまとめる力」が必要になる。(= 本人がいなくても伝わるものを作成し、判断してもらえる力)

この「過不足なく主張をまとめる力」が「準備」に求められる力だと思うのである。
この力があれば、メールやチャットなどでのコミュニケーションが取りやすくなる。また、WEB会議・WEB商談などは口頭補足が可能とはいえ、物理的空間を共有していない事で出来る事も限りがあり、準備ができる企業とは差が出てくる事だろう。

実際、テレワークに向いていると言われる企業は普段からメール、チャットのコミュニケーションを活用している企業が多いと聞く。
口頭決裁文化の企業と違い「過不足なく主張をまとめる力」を企業文化の中で身に着けていたのではないだろうか。

勿論、口頭決裁が優れているケースもある
緊急を要する判断が、準備に時間を取られすぎて機を逸してしまうというのはナンセンスだろう。**
口頭決裁と書類決裁を比較すると前者の方が即時性が高く後者の方がマルチタスク効果が高い。本質を理解して「使い分け」**するのが大事だと思う。

「過不足なく主張をまとめる力」を手に入れ「テレワークに向いていない」からの脱却を**

口頭決裁が優れているケースもあるが、マルチタスク効果も忘れてはいけない視点だろう。

そして「過不足なく主張をまとめる力」は結果的にオンライン、オフライン問わずビジネスパーソンとして持ちたいスキルだろうし、企業としてもこれが出来るビジネスパーソンに所属してもらうのは価値がある事だろう。

また、前半に書いたようにテレワークも突き詰めて考えていくと「企業にも相応のメリットがある」ケースが相当あるだろうと感じる。

「今は」向いていないかもしれない。

でも「この先ずっと向いていないのか?」 「向いていないままで良いのか?」 考える必要があると思う。

そして単純に「ウチは向いていない。」で片づけるのではなく、

「準備」=「過不足なく主張をまとめる力」を身につけていってはどうだろうか? それが選択肢を増やし「使い分け」が可能になる第一歩であると思う。

テレワークを実践、研究する中で、このように考えている。


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