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在宅勤務の環境整備に関わる費用負担は企業と従業員のどちらがすべきなのか?

在宅勤務の増加と実施スタンスの変化

テレワークの利用は、昨年と比べて大きく伸びている。テレワークの中でも「雇用型の在宅勤務(以下 在宅勤務)」の利用が増加しているだろう。

この在宅勤務では自宅が就業場所となる為、自宅の環境整備が必要となるが、この費用負担は「企業と従業員のどちらがすべきなのだろうか?」

今回は、この疑問について答えを出したい。

疑問に対する答えの前に「在宅勤務」の現状だが、多くの企業において昨年までと今年で「実施スタンスが変化している」と思う。

どんな変化か? それは、昨年までは「従業員からの希望」による在宅勤務が多かったはずだが、今年は「会社都合」「会社指示」による在宅勤務が増えているという変化だ。

具体的に言えば、育児や介護、自身の怪我などの際に在宅勤務を利用できるというものから、出社が適切でないという会社の判断の元、在宅勤務が活用されているケースが増加しているということだ。

テレワーク導入の目的 と 実施スタンス

企業がテレワーク(*)を導入する目的は、分類すると3つに分ける事ができる。❶企業の成長戦略(効率アップ、人材確保、コストダウン) ❷従業員のセーフティネット(介護、育児などの従業員の望まざる離職の防止) ❸広義の事業継続(事業の維持、事業活動を止めない)

(*)在宅勤務はテレワークの一つの形態。この段落ではテレワーク全般の目的と実施スタンスについて記載する。

この目的によりテレワークの実施スタンスも変わる。

❶企業の成長戦略(効率アップ、人材確保、コストダウン)の場合

「会社」がテレワークを実施したいと考えていて、「会社の都合」によりテレワークが実施される = 会社の積極的な希望スタンス

❷従業員のセーフティネット(介護、育児などの従業員の望まざる離職の防止)の場合

「従業員」がテレワーク(主に在宅勤務)を実施したいと考えていて、「従業員の都合」によりテレワークが実施される = 従業員の積極的な希望スタンス

❸広義の事業継続(事業の維持、事業活動を止めない)の場合 <今年増えているパターン>

会社や従業員が「テレワーク(主に在宅勤務)を実施したいかは関係なく」「会社の都合」(*)によりテレワークが実施される = 会社の消極的な希望スタンス

(*)この❸の場合、「会社の都合」と言い切って良いのか? 何とも言えない面がありそうだが・・・

今年、増加しているのは❸のパターンが多いと思われる。

スタンス別 費用負担の考え方

前段でテレワーク導入のスタンスを整理したが、このスタンスにより費用負担の考え方が決まると考えている。

会社の積極的希望スタンス

会社が企業の成長戦略として導入する場合のスタンスだが、在宅勤務であれば会社都合により自宅で勤務することになる。勤務する場所、すなわち就業場所は基本的に会社が環境を用意するものである。この考え方からすれば、費用負担は基本的に「会社」がすべきであろうと思う。

一方、この場合、出社を前提としなくなる為、通勤手当が不要になったり、社員の専用デスクが不要になりオフィス面積の削減ができたりとコストカットも可能となる。コストの面で言えば、負担額の増加だけでなく減少にも目を向けて判断したいところだ。

とはいえ、実際、一概に負担金額を出す(決める)ことが出来るのか? 例えば在宅勤務により家にいる時間が増えエアコン使用による電気代が増加。この場合の負担額はいくらなのか? と決めようとすると、プライベート利用と業務利用を区別にするのは、なかなか難しいだろう。この費用負担の仕方についても大事な論点だが、今回の投稿からそれる為、別な機会にまとめる事としたい。

従業員の積極的希望スタンス

従業員が介護や育児などの個人的な事情に対応する為に導入する場合のスタンスだが、この場合、会社としては出社して業務をして欲しい所、本人の希望により自宅で勤務する事になる。

就業場所の環境整備は本来、会社が整備するものではあるが、オフィスという環境が用意されている状況で従業員の希望により自宅を就業場所にしているという考え方をすれば、費用負担は基本的に「従業員」がすべきであろうと思う。

基本的に従業員ではあるが、福利厚生的に会社が負担するというのも当然あり得ると思う。ただよくよく考えてみると、その福利厚生をするのは、従業員のエンゲージメント向上や離職防止を考えての事だろう。そう考えると企業の成長戦略よりの話になり、結果的に「企業の積極的スタンス」に収斂すると思う。

会社の消極的希望スタンス

前の2つのスタンスは、希望者が明快であるから考えやすいが、困るのがこのスタンスだ。

そして、このスタンスのパターンが、現実としては「昨年より増加し、数も最も多い」と思う。

消極的にテレワークを選択しているだけで、どちらが要望しているのか判断が難しい所だが、従業員が勝手に在宅勤務を行う事はないだろうから、便宜的に「会社の消極的希望スタンス」と名付けた。

想定されるケースは、台風など災害により交通機関が止まり出社困難なケースや影響力のある感染症の拡大防止が必要なケースなどだ。

会社の消極的希望スタンスの場合は、期間や頻度、会社からの強制度合いによるのでは?

悩ましい所ではあるが、結論を出すのがこの投稿の目的なので考えてみる。

まず、そもそもの話になるが「会社の消極的希望スタンス」であり、会社もやりたくてテレワークをしているわけではない。

つまり、従業員のセーフティネットとしての目的としての継続があるかもしれないが、これを除けば会社はテレワークを導入したいわけではなく、時限立法的な側面が強いと言える。

その点からすると在宅勤務の「期間」「頻度」「会社からの強制度合い」によって決めるべきではないかと思う。

「期間」

例えば災害により交通機関がマヒしているケース。台風などで電車が動かないと言っても1日か2日がほとんどだろう。大きな災害でも長くて1週間程度の話だとすれば、この為に費用負担を精算する、あるいは設備を用意するというのは現実的ではないだろう。

その為、このようなケースの在宅勤務であれば、自宅の環境なので従業員が負担する事にするべきだと思う。

一方、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年…と期間が伸びるほど、自宅とはいえ、特に設備面の用意が必要になってくるだろう。その為、期間が長くなると会社の負担を検討していく必要があると考える。

「頻度」

期間が長ければ、会社負担で決まりなのか? と言うと、そうではなくて、この場合は長さだけでなく頻度も影響するだろう。例えば期間が1年でも月1回程度が在宅勤務の実施頻度であれば、この為に何かするのは現実的なアプローチではないだろう。

一方、例外がなければ週のほとんどが在宅勤務というような状態であれば、仮に1ヶ月でも会社の費用負担を検討していく必要があるのではないだろうか。

「会社からの強制度合い」

一定期間に一定頻度であれば、会社負担で決まりなのか? というと、これも必ずしもそうではなくて、もう1つ要素があると考えている。

それは、在宅勤務の「会社からの強制度合い」という要素だ。最初の2つのスタンスは「誰の希望か?」で決めているが、このケースの場合は、在宅勤務は会社と従業員のどちらの希望で行われていると言えるのだろうか? 

どちらとも言い難い為、「会社からの強制度合い」により、どちらの希望なのかに決着をつけ、それにより費用負担も決着させるのがベターではないかと思うのである。 

仮に消極的スタンスでも「必ず自宅で業務をすべき」という会社からの強制度合いが高いものであれば、原点に立ち戻り会社都合により在宅勤務を実施と考え、基本的に会社が負担すべきとの事になるのではないだろうか。

一方で「会社が費用負担しなければ在宅勤務なんてしたくない」と言う従業員からの問いに対して「それならば適切なオフィス環境の用意はしてあるので、どうぞ出社してください」と答える状況であるならば、会社からの強制度合いが高いとは言えず従業員の負担に傾くのではないかと思う。

このように会社の消極的希望によるスタンスで在宅勤務を実施する場合、在宅勤務の「期間」、「頻度」、「会社から強制度合い」を検討材料として会社と従業員の費用負担の落とし所を決めていくべきだと考える。

テレワークに対する答えをいつ出すのか?

今回は在宅勤務実施における環境整備費用の負担を企業と従業員のどちらがすべきなのかとを整理したが、整理方法を実施のスタンスで分けたように、テレワークとの向き合い方を決める必要があるのだと思う。

一定規模以下の企業を除けばテレワークを0にするという結論はあまりないいと思う。それ故、どのスタンスでテレワークと向き合うのか? どのようなスケジュールでテレワークが有効に働く状態にするのか? などの テレワークに対する答えを各企業が出す時期にきていると思う。

人口減少社会の日本では、少なくとも日本人の優秀な人材を確保するというハードルは高くなっていくだろう。優秀な人材を確保できなければ経営者にとって理想的な経営をするのは困難なものになると思う。

その中でテレワークとどう向き合うなのか?

個人的には、セーフティネット的な福利厚生の思想ではなく、企業の成長戦略として向き合う選択しかないと感じている。

ただし、すべての企業が無闇矢鱈に始めた所で上手くいくものではないだろう。必要な準備があるはずだ。そこで各企業は、「どのようなスケジュール、プランニング」すると有効に機能させる事ができるか? という答えを出す為のアクションに取り掛かるべきではないかと思うのである。

この辺りについても何処かの機会で投稿できればと思うが、本日はここまで。お付き合い頂きありがとうございました。

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