『BDSM&fetishイベント縛羅天-第伍幕-』に出演した話
#過去イチの長文です
みなさんこんにちは、縛師のたかせ秦之助です。
先日、『BDSM&fetishイベント縛羅天-第伍幕-』というイベントに出演をさせていただきました。
今回、本当にたくさんのことを考え、チャレンジをしたので、備忘録的なアレを残しておこうと思い立ちまして、徒然なるままに記していこうと思います。
出演を決めた背景
上記のTweetにもある通り、緊縛をメインとしたショートしては約2年半ぶりでした。
お話をいただいた当初は、出演するか否か、かなり悩みまして。
2年半もショーをやっていない
今後も当面はショーをやっていくつもりがない
現時点でショーで表現したいアイデアがあるわけでもない
みたいな状況でして、果たしてお受けしていいものだろうかと。
んで、逆にお受けする理由はあるだろうかと考えてみまして。
主催の凰ヒロさんには日頃お世話になっている
今の自分にお声をかけていただけたことがとてもありがたい
前回のショーから2年半経った自分の現在地を確認してみたい
ショーをやると決めた時の自分の思考をトレースしたい
という感じで、凰ヒロさんへの感謝と、ショーをやる自分に対する好奇心があるなーとなりまして。
んで、そもそも「迷ったらやれ」みたいなタイプでありましてからに、それならお受けしようと決めた次第であります。
コンセプトを考える
そんなこんなで、果たしてどんなショーをやりましょうかと。
実は以前、こんな記事を書いていまして。
積極的にショーに出演していた当時は、常にその意識で生活していたのもあり、取り組むべき課題や、使ってみたい音源や表現などをストックしていたのもあり、大体「音源→コンセプト→衣装→緊縛の展開」みたいな感じで構成を考えていました。
でも今回は前提条件が大幅に違いまして。
そもそも、2年半前と今の自分では、土台となる立ち位置やら活動の方向性やらが全然違うものになっていまして。
2年半前は「自分に合ったショースタイルを探る」ような感じで色々考えていたのですが、今は縛楽として、縛師たかせ秦之助として、あえてショーをやる意義みたいなものに立ち返る必要がありました。
緊縛表現の王道を探る
その上で、まず緊縛ショーといえばどんなものがあるのかをよくよく考えてみまして、おおよそ2つのタイプに集約されているなと思いました。
嗜虐行為的緊縛の本質を追求するタイプ
緊縛技術で魅せるアクロバティックなタイプ
厳密に言えば上記以外の表現もたくさんありますが、王道といえば上記の2つに集約されているイメージです。
前者に関しては、たかせはそもそも嗜虐嗜好ではないので、そもそもできません。
2年半前の自分で言うと、後者を追求していましたが、現在の自分はそれとは全く違うスタイルで緊縛を実践していまして、そんな自分が急にアクロバティックな展開を見せ出したら、意味わからないと思いまして。
そしてそもそも、たかせは身体能力が割と低めなため、そのスタイルが自分に合っていないことは、2年半前までの活動で痛感していたりします。
そうなると、王道とはなり得ない演技をするのかという話になりますが、一方で、『王道から逃げるべからず』的な思想を持っていまして。
はてさて、嗜虐嗜好もなく、身体能力も低い縛師に、表現できる王道はないのか…?と言う話になります。
緊縛のポテンシャルってそんな程度のものか?とも思います。
それもそれとして、自分が普段から掲げている活動コンセプトって、そもそも王道から外れたものなんだっけ?と。
いやいやいや、自分の活動は、現在の、そしてこれから王道だと思っています。
マジで思っています。
もちろん、特に嗜虐嗜好の方からは邪道と見られていることは承知していますが、緊縛の普及が著しい現在においては、緊縛人口の内訳で言えば、自分のスタイルこそ王道だとすら思っていたりします。
であるならば、緊縛のステージにおいてはまだあまり表現されていない、新しい王道を提案することができるのではないか?と思い至りまして。
たかせ秦之助が実践する王道とは何か?
自分の活動コンセプトを確認しまして、自分が考える、緊縛における最も重要なポイントはなんなのかを再考しました。
そしたら「対面でのコミュニケーション」「究極の1on1コミュニケーション」と書いてありました。 #確認するまでもなかった
ならば、これをピュアに見せようと。
つまり、緊縛表現の王道として、既にある
嗜虐行為的緊縛の本質を追求するタイプ
緊縛技術で魅せるアクロバティックなタイプ
というコンセプトに、
誰でも実践可能な1on1コミュニケーションをを表現するタイプ
というコンセプトを加えませんか?という提案ができないかと。
これはつまり、嗜虐嗜好がなくても、身体能力が高くなくても、緊縛を楽しむことは誰にでもできるんだよというメッセージです。
これであれば、縛楽として、たかせ秦之助として、あえてショーに出演する意義があるんじゃないかと考えた次第です。
ショーの構成を考える
ではどうすればそれを表現できるのか。
やらないことを決める
逆説的に既存の王道2パターンの表現を含まないことを決めました。
嗜虐的な表現をしない
アクロバティックな(技術的に高度な)表現をしない
最もやらなければならないことを決める
で、
受け手とのコミュニケーション(アイコンタクトや会話)をとるために、可能な限り受け手の正面に出るムーブを多用する
緊縛って、その構造上、縛り手が受け手の背面にきたり、かつ吊り縄においては、受け手を見下ろす場面が多くあります。
実際、緊縛を実践している最中に、受け手さんとほとんど目も合わせなければ、言葉も交わさない場面をよく見かけます。
もちろん、縄を通してだけあらゆるコミュニケーションをとることも、緊縛の奥義だとは思いますが、それはとてつもなく高度なことで、一般の実践者たちにそれを求めるのは、かなり無理があると思っています。
そんなこんなで、緊縛において、受け手さんと目を合わせるタイミング、言葉を交わすタイミングはこれだけあるんだよと言うことを実演することを、第一のポイントとしました。
一方で、あくまでステージ上で演じるショーでもあるので、緊縛的な動きとして見栄えのする展開は必要だよなーというのもありまして。
緊縛の展開を考える
動き(展開)が多すぎるとアクロバティックになってしまう vs 動きが少なすぎるとショーとして成立しない、と言うところで。
そんなこんなで捻り出したのが、「全身を大きく一回転させる」でした。
座りからスタートして、ほぼ逆さに近い体勢まで一気に足を上げた鯱鉾で高さを出し、身体の(ほぼ)直線を見せる。
腰前(腹)で吊縄を取り、足を下ろしてブリッジにして、身体の曲線を見せる。
縦位置から横位置へ、直線から曲線へ、最小限の展開(数)で最大幅の変化を見せることで、ショー的な見栄えを担保できないだろうかという試みでした。
と、言うわけで、出演を決めてからここまでは割とスムーズに決まっていったんです。
ここまでは… #ここまでは
受け手に合わせて縛り方を調整する
正直、ここが一番時間がかかりました。
これはひとえに、たかせの技術力不足と言う話だったりするのですがががっが…
展開がシンプル(縄数が少ない割に、動きが大きい)が故に、受け手にかかる負荷(ダメージ)が大きいことが問題になりました。
鯱鉾にするための足縛りだけで、延べ3日分の練習時間を費やしました。
ブリッジにするためにかける腰縛りを組み直すだけで延べ2日分の練習時間を費やしました。
通しで演技するのに耐えられる後手縛りを組み直すだけで延べ1日分の練習時間を費やしました。
各所、かなり緊縛のセオリーから外れた縄の掛け方をしていまして、緊縛上級者の方から見たら、なぜそこをそんな縛り方、テンションで掛けているのか、不思議に思った点もあったんじゃないかと思います。
今回、そもそも後手縛り、足縛り、腰縛りしかしていないので、ほぼ全ての縛り方を、受け手の身体に合わせてチューニングしています。
受け手の身体的な特徴を見切って、オーダーメイドな縄をかけることにおいて、今回の件で、一番たかせのスキルが向上した点は、ここだろうなーと思ったりしています。
音源を選定する
ここも今回、めちゃくちゃ苦労しました。
苦労をしすぎた結果、確定するのが本番前日になるという事態でした。
なんでこんなに苦戦したかと言いますと、先述した通り、これまでは音源を軸に構成してきたのですが、今回はコンセプト先行だったため、コンセプトに合わせた音源を揃えることに難儀しました。
これによって、2回も白紙に戻し、3度目の正直でなんとか仕上げに至るという紆余曲折。
音源に込めた2つのメッセージ
理想で言えば、演技を引き立てるようなBGMとしたかったのですが、上記の理由により2度も白紙に戻される事態。
結果、音源のコンセプトそのものを見直しました。
多様性の表現
今回、ショー音源としては異例の、全楽曲ボーカルありとなりました。
なぜそんな結果になったのかというと、今回の選曲は、全てデュオで揃えたということに意味を持たせたからです。
1曲目 男女のデュオ
2曲目 女女のデュオ
3曲目 姉妹のデュオ
4曲目 R&Bとラップのデュオ
5曲目男女のデュオ
6曲目 日本人と外国人の男男デュオ
#1曲目と5曲目の構成が被っているのはご愛嬌
『緊縛は究極の1on1』コミュニケーションであるという、たかせの活動コンセプトになぞらえれば、緊縛には組み合わせの分だけ表現の多代性があるのだというメッセージを、音源で表現してみました。
つまり、今回の音源は、緊縛の演技を引き立てるためのものではなく、緊縛の演技と並列で多様性を表現するメインキャストとして設定しました。
故に、全曲オンボーカルという選択をしました。
ともすれば、音源に飲まれて演技が霞む可能性すらありました(というか、多分そうなっていた)が、現時点のたかせの実力では、緊縛の演技だけで魅せることが困難であるため、苦肉の策として、このような構成となりました。
受容性の表現
一方、ただデュオで揃えたというだけではなく、歌詞の内容にストーリーを持たせています。
1曲目 自身の醜さと向き合う曲
2曲目 一時的な現実逃避の曲
3曲目 理想の世界を妄想する曲
4曲目 小さな光を見出す曲
5曲目 自己肯定を促す曲
6曲目 ともに前に進もうとする曲
緊縛は、自身の醜さや社会的な責任からから一時的にでも解放される手段でもあり、そんな醜さや逃避したい心理を受容する手段でもあると考えています。
そんな、(たかせが考える)緊縛のポテンシャルを一つのストーリに仕上げてみました。
照明演出を設計する
今回、会場となったSM Bar ミラージュさんは、緊縛のショーができるステージとしては、最高級の音響と照明の設備がありました。
一方で、下記の記事でも言及している通り、緊縛ショーにおいては、照明演出まで考えられていることは、極めて稀だったりします。
そのため、この照明を活かさないのは勿体無いと言いますか、緊縛ショーにも照明って大事だよねということを、多少なりとも実践できないかと考えました。
とはいえ、たかせもそこまで照明に詳しいわけでもなく、プロのオペレーターを手配する余裕があったわけでもないので、そこまで込み入ったことはできませんが、ミラージュの総支配人(?)である東さんに無理を言い、曲ごとに、その曲調に合わせて照明を切り替えるオペレーションをしていただきました。
#本当にありがとうございました
もっと緊縛ショーで照明が活用されるようになるといいなーと思っています。
その上では、SM Bar ミラージュさんは、最高の環境だと思いますので、緊縛ショーイベントを企画される方は、ぜひ最有力候補の会場として、ミラージュさんを検討していただきたいです。
音響だけでもめちゃくちゃいいです。
反省点
そんなこんなで迎えた当日ですが、2年半のブランクと、1ヶ月半足らずの準備期間を舐めんな的な話で(舐めてはいなかったけど)、自己評価的には遥かに及第点に届かないレベルでありました。
予想通りっちゃ予想通りではあるけども…
音源も、それっぽく説明はしましたが、演技との一体感を放棄してしまったこともあり、結果として途轍もない情報量になってしまったと言いますか。
時間配分もめちゃくちゃで、前半がんばり過ぎたせいで、後半に時間があまり過ぎて予定にないアドリブを付け加えまくるという体たらく。ff
これで観客を感動させるなんて到底無理ですね。
謝辞
とはいえ、改めて自身の活動に向き合えたことは、本当に貴重な時間となりました。
そして、緊縛ショーにはまだまだ可能性があることが、確認ができました。
出演の機会をくださった主催の凰ヒロさんや、会場を提供してくださったSM Bar ミラージュさんには、大変感謝をしております。
本当にありがとうございました。
凰ヒロさんのTwitter
SM Bar ミラージュさんのTwitter
また、受け手のさおりちゃん、練習時間を十分に確保できない中、かなり無謀な挑戦に付き合ってくれたことに、感謝しています。
本当にありがとうございました。
そして、当日会場にお越しくださり、ご覧くださいました皆様におかれましては、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
#期待はずれだったらごめんなさい
余談
準備があまりにも大変すぎて、日常の業務に支障をきたしすぎているので、また当分はショーはお休みかなーと思っています。
緊縛サロン縛楽でスタッフが雇えるようになって、時間の自由がある程度確保できるような状態になったら、また改めて挑戦したいとは思っています。
その時は、きっと今より遥かにマシな演技ができるだろうと思います。
そもそも自分は緊縛ショーに感動してこの世界に入ってきた者なので、新しい緊縛ショーの形を提案し、業界の発展に貢献することは、一つの夢でもあったりします。
近い将来に、そこにも注力できるよう、邁進したいと考えておりますので、引き続き縛楽、並びにたかせ秦之助を、何卒よろしくお願いいたします。
お知らせ
緊縛サロン 縛楽
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緊縛教室『縛楽式』
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