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韓国海軍が日本の偵察機に軍事用レーダーを照射:どちらの主張に正当性があるのか(訂正あり)

※おことわり
当記事には不正確な情報に基づく論評が含まれております。詳細につきましてはこちら「2019年1月4日配信のレーダー照射記事の訂正とおわび」をご参照ください。

平成最後の年の瀬を迎えた昨年12月、日本の海上自衛隊の偵察機が日本海・能登半島沖で漂流していた北朝鮮籍の漁船を救助していたとみられる韓国海軍の軍艦から軍事用レーダーを照射されました。

(防衛省が公開した動画より 右側の軍艦がレーダーを照射した)

これは、日本政府いわく「攻撃直前の非常に危険な行為」とのことです。

この問題で日本政府(防衛省)と韓国海軍の事実認識は真っ向から対立しており、日韓関係は戦後最悪の状態にあります。

しかも、それぞれが一方的な意見しか言わないので、結局どちらが正しいのか私たち一般ピーポーにとってはなんのこっちゃ分からん状況です。

そうなれば、もはや自分自身で判断するしかありません。
ここからは、主観的な見方はできるだけ排除して事実関係を整理したいと思います。

◇EEZ内ではおとなしく挨拶すべき

そもそもレーダーには2種類あるらしいのです。
1つは、遭難船を探すためのレーダー。遭難した船からの遭難信号を探知して捜索することが多いです。
もう一つは正体不明機や領空侵犯機、戦時であれば敵機の場所を探知し、ロックオンするためのレーダー。狙撃用ライフルに付いている照準器(スコープ)のようなものと考えてもらえれば分かりやすいと思います。

そして今回、韓国海軍が照射したレーダーは後者です。

(レーダーを照射した韓国海軍の軍艦)

韓国海軍が照射した軍事用レーダーは、先ほども示したとおり明らかな領空侵犯や相手の攻撃意思があったときにだけ使用されます。

今回のレーダー照射は韓国の領海でも日本の領海でもなく、公海でもなく、日本の排他的経済水域(EEZ)内で行われました。
つまり、領空侵犯や攻撃準備をしたわけでもない海上自衛隊機にレーダー照射するのは明らかなマナー違反といえます。



排他的経済水域は、領海と公海の中間にあたり、領海ではないのですが海底資源や海洋調査権は管轄する国の所有物となります。
なので、単に通航するだけであれば何の問題もありません。

(レーダー照射事案が発生した「大和堆」=読売新聞)

ここまでを整理すると、日本の排他的経済水域内で韓国の軍艦が活動していたところを海上自衛隊が偵察しに来ただけなのに、軍事用レーダーを照射されたということになります。
おとなしくあいさつしていればこんなことにはならなかったと思います。

◇レーダー照射は本当に危険だったのか

これは、そもそも論になりますが今回のレーダー照射は日本政府がいうように本当に「攻撃直前」の危険行為にあたるのか。
バリバリの右翼で航空自衛隊の元トップを務めていた田母神俊雄氏は今回のレーダー照射を「全く危険ではない」としました。
どういうことかと言えば、「火器管制レーダーは近年フェーズドアレイ方式で常時ほぼ全周に電波を出し続けている。だから、周辺にいる航空機などには電波照射が行われてしまう」というのです。
このオジサンは軍事オタクなので、なにを言っているのかよく分かりません。

(軍事オタクでちょっとナルシストなオジサン。このオジサンとカラオケ行ったら「同期の桜」とか歌い出しそう)

まず、フェーズド・アレイ方式とはアンテナの一種で、テレビの受信アンテナなどに使われるパラボラアンテナの超進化版です。
パラボラアンテナは首を向けた方向に強力な電波を遠くまで飛ばすことのできるアンテナで、東京タワーに代表される電波塔に向けて首を向けていればいつでも強力な電波を受信できちゃうのです(まるでメッカ=電波塔に向かってお辞儀しているかのごとくです)

しかし、これを軍事で使用すると不便が生じます。
というのも、パラボラアンテナは首を向けた方向にしか電波を飛ばせないので、四方八方から飛来してくる相手の戦闘機の位置や距離などを正確に把握しようとすればいちいちその戦闘機に向かって首を向けなければならないのです。

それに対して、フェーズなんちゃらはある程度全方位に電波を出すことができ、敵機の距離や方位を瞬時に特定できるので、今ではこのアンテナが主流となっています。
この長ったらしい説明でやっと田母「神」さんの言っていることが分かっていただけると思います。

つまり、韓国が照射したレーダーの範囲にたまたま日本の偵察機が入ってしまっただけにすぎないのではないかということです。
他の海上自衛官も「(日本の偵察機の)距離や方位を測定」しただけで「状況から敵意も認められない」と証言しています。

ただ、日本の偵察機がレーダーを照射された際にそのレーダーの周波数を記録したり、回避行動をとっていたことを考えれば「攻撃直前」ではないにせよ、威嚇されたと受け取ったのは間違いないようです。

レーダーを照射されたとき、現場には韓国の海上警備を担う救助船と北朝鮮籍の漁船、そして韓国海軍の軍艦がいる状態で、この状況から察するにおそらく韓国としては、この現場を「見られたくなかった」ということになるでしょうか。
韓国側からなにも説明がないので真偽のほどは分かりません。

◇二転三転する韓国側の説明

日本は、レーダーを照射されたその日に事実を公表し韓国側に抗議しました。
一方の韓国は、「レーダーを照射した事実はない」と否認しました。

この韓国側の対応に自衛隊の総指揮官、安倍首相が激怒し偵察機が撮影していた動画を防衛省に公開させました。防衛省もできるだけ事態を悪化させたくなかったので動画の公表には消極的だったらしいのですが、歴代政権のなかでもトップクラスの権力集中が起きている安倍政権に逆らうことはできません。

動画の公開を受けてさすがに観念したと思いきや、今度は「自衛隊の哨戒機(偵察機)がわれわれの軍艦の真上を超低空飛行して威嚇してきたので、日本が悪い」などと反論。

しかし、防衛省が公開した映像には自衛隊の哨戒機が軍艦の真上を超低空飛行したようすは一切映っておらず、レーダーを照射されたときも軍艦からの高度や距離はある程度離れていたことが分かります。

そもそも、海上自衛隊が本当に威嚇飛行したのであれば、真っ先に韓国側がその事実を公表し日本政府に抗議しているはず。
それがなかったということは、韓国側が特段の脅威に曝された事実はなかったと考えるのが自然です。

そして、きょう1月4日。
レーダー照射から2週間経って、やっと韓国側が証拠の動画を公表すると表明しました。ただ、その映像にはレーダー照射した際に日本の哨戒機が低空飛行をしていたようすは映っていません。
これでは、全く信憑性がありません。それどころか、この期に及んでもなお「軍事用レーダー照射はしていない」と言って譲らず、日本側に謝罪を求めるほど。

このように韓国側の主張は二転三転。

もはや、わざと火種を大きくしているとしか思えません。
まあ、それだけ韓国は日本のことが嫌いなんだと思います。

◇好戦的感情を煽るネット世論、不確定事実も拡散

一方で、この態度に普段から韓国を目の敵にしている安倍政権支持者や保守層からは好戦的な声が目立っています。
「火器管制レーダー(軍事用レーダー)の照射は攻撃行為で仮に(日本が韓国の軍艦に)魚雷を投下したり、ミサイル攻撃をしたとしても問題ない」や「断交(国交断絶)が当然」、「これで戦争にならない方がおかしい。」などです。

ただ、火器管制レーダー(軍事用レーダー)照射はあまり褒められた行為ではないですが、防衛省の映像を見てもらえれば分かる通り、韓国軍艦の砲口は日本の哨戒機には向いていないのでこれを攻撃と見なして報復すれば、それは自衛行為ではなく国際法で禁止されている「先制攻撃」にあたります
しかも、こんなアホなことをやらされるのはほかでもない自衛隊です。


普段から、自衛隊をまるで神様仏様のように崇め奉っているわりにはあまりにも思いやりが足りない言説だと思います。腹が立ったからと言って魚雷やミサイルを撃ち込んでいたら、確実に日本は滅びます。少なくとも、防衛省の動画内で自衛隊員は国際法に則った非常に理性的な行動をとっています。この感情に左右されない理性的な行動があるからこそ、日本は不用意な戦争に巻き込まれずに済んできたといえます。
戦争になったら自衛隊任せで自分たちは戦地に出向かないダブスタを決め込むなら、せめて余計なことを言わずにおとなしくしててほしいものです。

そして、韓国側の主張を一方的に不確実な情報も一部で拡散されています。

上の写真は、とある日本人ツイッターユーザーが「韓国側が公表した(日本の哨戒機が低空飛行した)証拠画像」として投稿したものです。
この写真が事実であれば、日本側は大変危険な威嚇行為をしていたことになりますし、そもそもこの距離であれば衝突していてもおかしくありません。

では、この写真は本当にレーダー照射のときに撮影されたものなのでしょうか。
まず、この写真に映る韓国の軍艦の向かって右端(右舷)に注目してください。
3桁の番号(973)が表記されているのが分かると思います。これは、艦船に個別に振り分けられている番号を示します。

(防衛省の動画では何度も「971」と呼びかけられている 画像を拡大するとたしかに「971」と確認できる)

そしてこれを、防衛省の公開した映像に映っている軍艦と照合してみるとあることが分かります。
レーダー照射を受けた日本の哨戒機はその目的を聞き出すため、韓国の軍艦に無線で呼びかけています。そのとき日本側は「艦番号971」と言っています。この番号は動画内の韓国軍艦のようすを映した一コマからも確認できます。
つまり、韓国側が「証拠」として提示した画像に写っている軍艦とレーダー照射を行った軍艦は別物ということになります。
きょう、韓国側が公表した「反論動画」に映っている軍艦の番号も「971」であったので、間違いないと思われます。

(「韓国側の映像」としながらも具体的な出所は示されず)

◇感情的になったところでなにもいいことはない

今回の事案は、日本と韓国だったからこそ起きてしまったことのように思います。
朝鮮人(当時)が日本で強制的にブラック労働をさせられた徴用工問題や、日本軍の相手をさせられた慰安婦問題などに対し、加害国である日本側がその歴史的事実を認めないところからこの関係悪化がはじまっています。

徴用工問題や慰安婦問題は歴史的事実として認められているので、その事実があったかなかったかの問題は議論するまでもありません。

それを、自国の都合の悪い歴史を見たくないあまりに「なかった」と国民だけでなく政治家までもが言ってしまっていることが問題なのです。

もちろん、韓国側もそれらの問題についての賠償請求権を54年前に破棄すると約束しているのでいまだに日本に損害賠償を求めるのはお門違いなのですが…。

おそらく、韓国は今後もどんな証拠を日本が突きつけても照射を認めることはないでしょう。

これはもうお互いがお互いを嫌っているので仕方ありません。
ここは、日本が冷静になって矛を収めるべきでしょう。
戦争も殺人も感情のもつれからです。これ以上騒ぐのは賢明ではありません。

(海上自衛隊は3つの周波数を使って、韓国海軍に呼びかけたが応答はいっさいなかった。)

(フィクション作家として著名な百田先生みたいな根拠のない感情論に走ることのほうが平和国家日本のブランドを貶めることになるのです。平和であることのなにがそんなに気にくわないんでしょうか。こちとらぜひとも平穏に暮らしたいので、争うなら命を懸けるのではなくどっちがおもろいことをたくさん言えるかで競えばいいと思います。そっちの方が平和的です。)

◇韓国と断交すれば困るのは日本

最近、ツイートがどの端末から発信されているか分かるようになりました。(ちなみに、くまモンはiPad、ちぃたんはパソコンからツイートしています。)

ふだんから「韓国とは国交断絶!安倍政権断固支持!パヨクはブロック!」と自己紹介している方がiPhoneからツイートをしているのですが、本当に韓国と国交断絶をしてしまえば日本のスマホ市場からはGALAXYはもちろんiPhoneも消えてしまう可能性があるのです。

昨年秋に発売された最新のiPhoneには有機ELディスプレイが初搭載されました。実は、2018年末の時点で世界の有機ELディスプレイ市場の94%を占めているのが韓国「サムスン電子」です。
ということは、スマホに搭載されている有機ELディスプレイのほぼすべてがサムスンが製造したものということになります。

資本主義経済の世の中である以上、サムスンが自社の製品を搭載したスマホを日本で販売したくないとなれば、それができるのでiPhoneに限らず、日本で販売されているサムスンの製品が搭載されているスマホは手に入れることができなくなってしまいます。

言うまでもありませんが、LINEも使えなくなります。もっとコアな層に呼びかけるなら韓流スターにも会えなくなってしまいます。
少なくとも、韓流アイドルたちは日本で金儲けするために日本にやってきているので例外的にやってくるかもしれませんが。

当然、韓国も日本と断交すればいろいろなことで困ることになるのでできればそのようなことは避けたいと思っているはず。

結局、昔はちょこっとあいさつしに行ったり、殺し合いをしていた関係にあった両国がこれだけ依存しあう関係になった以上、国交断絶はやはり現実的ではありません。それでも、ずっと言ってる人は言い続けると思いますが。

(レーダー照射されたときには怒り狂っていたにも関わらず、現在はのんきに旅レポ動画を投稿する余裕ぶりを見せる安倍晋三大先生。お元気そうでなによりです。今年はどんなイタコ芸を披露してくれるんでしょうか?)

もう書くのがしんどくなったのでこれで終わりますが、どっちが正しいのか悪いのかではなく、どうすればこれ以上仲が悪くならないのかについてお互いが知恵を絞っていくべきだと思います(「どっちが悪いか」を問題にしたのはお前やろが!という声が飛んできそうですが)

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