チャンスの女神には、前髪しかないという。
女神の前髪をつかむ感覚ってこんな感じかもなって思ったことがあった。

それは、食べたいなぁってものが頭に浮かんだ瞬間をぱっとつかまえたときだった。

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電車のなかの温かさに、身体がゆるんでた。こくこくと居眠りしていたからなのか、あたたかいものが食べたくて、食べたくて、お腹が動く。

とはいっても、家にあるもので済ませんて日の方が多いのだけど。
あの日もそんな日だった。夜になって低くなった気温に加えて、北風が吹きつける夜だった。

でも、掴んでしまったこの気持ちをどうにか叶えてあげたくなった。

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はやく眠りたい身体を寒さで起こす。
とっぷりと暮れた街並みのなかで人を引きこむ明かりを目指す。

ぱっぱっと済ませてっと言いたいところだったのに、ちょこちょこと寄り道して。
電車に乗る前にもお買い物をしていたからか、一袋ぶんの荷物でもう手が限界で。鍵を出すのも大変なくらい、ふらふらと帰った。

荷物をどさっと置いてから、ガサガサと野菜のはいった袋をもってキッチンへ。
お鍋に野菜をいれて、火をかける。くつくつと煮えてきたら、火を弱くして、着替えにむかった。

居心地のよく過ごせるようなあたたかい洋服に着替えたら、ほどよく柔らかくなっている野菜。さっと味をつけて、マグカップに。

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早口のいただきますをして、一口たべる。すると、冷たくなっていた身体の体温があがる。それと同時に、これこれって喜んでいる声がきこえる。

あたたかいものが食べたい気持ちを掴んでから時間がかかったけれど。実現できたとき、すごく幸せだなぁって思ってしまった。

頭よりも身体が動いたって方が正しいのだけれど。きっと、野菜スープが食べたい気持ちだって、掴まなければきっと別のものを食べて幸せにはなっていたけれど。

ぱっと浮かんだその気持ちを、大切にできたことに、とても嬉しさを感じてしまった。

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チャンスの女神には、前髪しかないという。
幸せの女神なら、お腹をつかむのかなぁ、なんて。笑

おいしいものを、食べられることも。
食べたい時に、食べられることも。
どっちもうれしいものね。

さて、今日はどうやってお腹をつかもうかな。