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時空も超える?!『夜桜お七』のスゴイ歌詞


なぜ今『夜桜お七』なのか


1994年に発売されたこの大ヒット曲。なぜ今更話題にするかというと、年末『NHK紅白歌合戦』で坂本冬美さんの『夜桜お七』を聴き驚愕したからです。
もちろん今までも聴いたことがあったのですが、なぜかこの時初めてこの歌詞のすごさに気づいたのです。
この歌詞は誰が書いたんだろう・・・と思わず検索。
歌人の林あまりさんという方が書かれていました。
なるほど!となんだか納得。普段短歌で伝えている方だからこそ、こんなに短い言葉でありありとビジュアライズされ、聴いた人にたくさんのことを想像させることができるのではないかと感じた。歌詞に書いてある以上のことがものすごく伝わってくるのです。

そんな思わず唸ったことを私なりの解釈で書いてみます。

思わず唸る歌詞の数々

タイトルの「夜桜お七」。この4文字でまずもう映像が浮かぶ。
夜桜の妖しい美しさと、お七の狂気があわさって女の情念とでもいうか、これから始まるストーリーがただ事じゃないことを想像、期待させる。
私は「お七」については「あぁ・・なんか江戸時代だったかに男の人に会いたくて火事起こした女の人だっけかな・・・」くらいしか知識がありませんでしたが、詳しく知っている方はもっといろんなことが想像できるのでは。

夜桜お七 作詞:林あまり

赤い鼻緒がぷつりと切れた
すげてくれる手ありゃしない
置いてけ堀をけとばして
駆けだす指に血がにじむ

夜桜お七 作詞:林あまり

こちらの冒頭部分、いきなりゾクゾクするような状況。「赤い鼻緒がぷつりと切れた」で「赤い鼻緒」は子どもを連想しがちですが、タイトルに「お七」が出ているので、私はすぐ大人の女性の白い足と真っ赤な鼻緒がイメージできました。「ぷつりと切れ」て「すげてくれる手ありゃしない」のだから別れたのだなと理解。
「置いてけ掘り」は日本むかし話なんかにも出て来ていたのではと思いますが「おいてけ~おいてけ~」と堀から声が聞こえるという江戸時代の怪談話の舞台です。当然、取り残されるほうの「おいてけぼり」とかけていると思います。そこで場面は江戸時代で夜だと解釈。そして「血がにじむ」のだもの。別れたことで痛手をおっていて未練があるのだろうと感じさせます。
夜の黒、鼻緒の赤、白い足、赤い血と鮮烈なイメージが湧いてきます。

さくら さくら
いつまで待っても来ぬひとと
死んだひととは おなじこと

夜桜お七 作詞:林あまり

そこから一転サビの部分へ。そこで私が一番驚愕した部分。

「いつまで待っても来ぬひとと 死んだひととはおなじこと」

え?!ちょっと待って。
それ・・・それ言っちゃっていいの?!って、ほぼ吹き出しました。そのざっくりとした仕分け!
私はこの部分がこの曲の歌詞の中で一番のポイントだと思う。
冒頭の未練たらたらな雰囲気から一転メロディーも明るくなり童謡の「さくらさくら」のメロディーからこの歌詞。

「いつまで待っても来ぬひとと 死んだひととはおなじこと」

そうなんですよ。どんなにつらくてももう戻ってこないんです。あきらめるしかないんですよ。
人の気持ちは変えられない。
でも辛くて忘れられないし諦められない。
だから心の中で「あのひとは死んだ。そう。死んだの」と決めたんです。
死んだんだもの、来れない。会えなくて仕方ない。
死んだんだもの、恋人になれなくても仕方ない。
死んだんだもの、もう他の人にとられることもない。

そんな極端な心の整理を彼女はしたのではないでしょうか。どうしようもなくてそう思うことにしたのです。それ程好きだったのでしょう。
でもこう思ったことで開き直って突き抜けた感が伝わってくる。冒頭のものすごく未練を感じる歌詞があってこそ、この部分がとても爽快。

多分、こういう極端な「心の整理」身に覚えがある方もいらっしゃるのでは・・。私は共感しました(小声)

すごい歌詞だ・・と感心していると、後半また爆弾がやってきます。

くち紅をつけて ティッシュをくわえたら
涙がぽろり もひとつ ぽろり

夜桜お七 作詞:林あまり

え?!ちょっと待って。(2回目)
今「ティッシュ」って言った?!「ティッシュ?!」と
一瞬脳がバグるのです。
しぐさは女性はみんなする「ティッシュオフ」だから理解できるのですが、江戸時代と思って聞いていた私をいきなり混乱させる「ティッシュ」という言葉。
ここで時空を飛び越えて一気に現代に戻しているんです。「ティッシュ」という言葉ひとつで。

すごすぎる・・・と本当に感心。プロの仕事ってこういうことだよな、とつくづく感動。

終わりに

私なりの解釈で、この歌詞のスゴイと思った部分を書いてみました。とにかく鮮烈な色合いの映像が浮かぶ。そしてサビからはさらに桜吹雪でもうほとんど脳内お祭り騒ぎ状態?!演歌の世界というよりはエンタメになっている。
「お七」については私はなんとなく「愚かな悪女」的なイメージだったのですがちょっと調べてみたら諸説ありましたが「とにかく彼氏に会いたくて火をつけてしまった未熟であり純粋な少女」だったという説が私の中で納得いき、イメージが変わりました。
そうイメージするとまたこの歌詞の受け取りも変わるかも。

坂本冬美さんの歌唱力、演歌の枠を超えた曲調の面白さ(作曲:三木たかし)そしてこのスゴイ歌詞の魅力で大ヒット、しかも長く人気があるのだと感じた。歌詞を全文は載せられないのでせひ検索して聴いてみてください。
今度カラオケで歌ってみようと思います(そんなまとめ)








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