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管理職が行わなければならないコミュニケーションって?手法・特徴などを詳しく解説!

現代社会においては経営管理者、中間管理職、チームリーダーが重要な役割を果たしています。ビジネスの現場では、マネジメントは「人の管理」と「業務管理」の2つの領域に分けられ、高度に分業化された現代社会では、マネジメントの機能は問題解決に主眼を置かれます。事実、カナダのマギル大学教授ヘンリー・ミンツバーグの著書「マネージャーの実像」で明確に説明されているように、管理職は管理そのものではなく、問題解決に多くの時間を費やしています。

問題解決には適切なコミュニケーションが欠かせません。今回は、なぜ管理職以上にコミュニケーションが集中してしまうのかを見ていきながら、コミュニケーションとは何なのか理解を深めていきましょう。


なぜ管理職以上にコミュニケーション問題が集中してしまうのか

管理職が担う業務や役割とは、具体的に言えば、現場の社員の声に耳を傾けたり、上層部に問題や課題をプレゼンテーションしたり、部署や部門、上下の人間関係の調整といったものが当てはまります。

つまり、ビジネス現場における管理職の業務の本質はコミュニケーションであり、管理職に問題や課題が集中する理由は、上下の人間関係の仲介を担っているためであると言えます。これは構造的なものであり、コミュニケーションや職場の問題がすぐに上司の問題につながるのは、業務上当然のことです。

現代の中間管理職に求められるコミュニケーションスキルを考えると、最近の若手社員が管理職に昇進したくないという意見も理解できるのではないでしょうか。

このようなコミュニケーションは、非常に高度な能力が必要です。管理職以上に最も重要な能力は、コミュニケーション能力と言っても過言ではなく、要求されるコミュニケーション能力は、「阿吽の呼吸」時代のコミュニケーションスキルではまったく通用しないだけでなく、もちろん国際的なレベルでも通用しません


コミュニケーションスキル研修は、多くの企業で若手社員や下階層に対して実施されています。若手層向けの研修後のアンケートには、必ず「上司も受けた方がよい」という意見が散見されます。

一方、管理職以上には、既にコミュニケーションスキルが備わっているという幻想が存在しています。最近では、管理職以上や経営層にも、1on1の導入や離職防止の目的でコミュニケーションスキルを実施している企業が増えています。これは、管理職以上や経営層でさえ、コミュニケーションスキルが全くアップデートされていないことを示しています


逆に言えば、優れたコミュニケーションを実践する経営管理者、中間管理職、チームリーダーは、優れたマネジメントを遂行していると言えるでしょう。では、具体的にコミュニケーションスキルをどのようにアップデートするかという問題が浮かび上がります。そのためには、まずコミュニケーションをいくつかの観点から構造化する必要があります。

コミュニケーションレベル

ビジネスにおけるコミュニケーションには、さまざまなレベル(意図や手法の違い)が存在します。コミュニケーションを行う立場に応じてその用途が変化し、以下の5つのレベルに分けることができます。

情報の伝達・収集

相手に知らせたい情報を伝えるためのコミュニケーションであり、指示、報告、提案、説明などが含まれ、主に業務上の情報を伝えるものです。社員から上司、そして上層部まで、あらゆる立場の人々が行います。

また、相手から情報を収集するためにも行われるため、このコミュニケーションには、聞き取り、インタビュー、アンケート調査なども含まれます。

つまりは、業務上必要な情報を相手から引き出すためや、複数の相手から情報を収集するために行うもので、主に社員が業務上で行うことが多いコミュニケーションであると言えます。

理解の促進・関係構築

相手への理解を促すためのコミュニケーションは、質問や要約、確認、フィードバックなどが含まれ、業務上の問題や課題の伝達、社員のトレーニング時などでの対話、上司と部下のコミュニケーションなどが当てはまります。このようなコミュニケーションは、上司や管理者が主に行い、相手との関係を築き、維持するためのものです。

社員、上司、管理者など幅広い人々が行う挨拶、交流、共感、支援などは関係構築のコミュニケーションにあたります。こちらは、出勤や退勤時の挨拶、休憩時間の会話、業務上のサポートなどによって関係を築くために行います

意思決定・合意形成

指示や共感、意思疎通、説明など、様々な要素が含まれる意思決定のためのコミュニケーションです。業務上の決断や担当業務の配置、リーダーシップなどに関わる場合がほとんどです。主に上層部や上司が行いますが、社員の立場でも何かを決める際に必要な場合があります。合意形成が達成されると、双方が関与意識を持ち、同じ熱意で業務に取り組むことができます。

一方、合意形成に失敗し、目的や手法に理解や共感が得られず、一部の人が疑問や不満を抱えたまま物事を進めると、途中で認識や意見のズレによりミスや軋轢が生じる可能性があるため、注意が必要です。その結果、スケジュールの遅延や計画の挫折、誤謬などのリスクも考えられます。また、合意形成に成功するためには、双方の考えを整理するために合意が必要な内容が理解されており、かつ納得されている状態が欠かせません

合意形成は、円滑な意思決定や行動につなげるために非常に重要なプロセスです。関係者が持つ多様な前提を明確にし、それぞれの考えを合意形成に取り入れる方法はないか、十分に議論する必要があります。言い換えれば「論理」と「心理」の両方が必要であるということです。


このコミュニケーションモデルの最初の理論化者は、言語学者のヤコブソンです。ヤコブソンによると、コミュニケーションは単なる情報のやり取りだけではないと言われています。

たとえば、挨拶は典型的な例ですが、「おはよう」という言葉には具体的な内容はありません。しかし、お互いに「おはよう」と言い合うことによって、関係構築を目指しているのです。

このようなコミュニケーションをヤコブソンは「交話的コミュニケーション」と呼び、情報が伝達されていなくても重要な役割を果たすと述べています。

質の高い職場を築くためには、交話的コミュニケーションが不可欠なのです。


コミュニケーションの特徴と種類

ビジネスにおいて用いられるコミュニケーションの種類は、想像している以上に多様で、それぞれ特徴も異なります。

特徴や種類、さらにはコミュニケーション能力を向上させるために押さえておきたい概念について解説します。

言葉・記号によるコミュニケーション

テキストを使用したコミュニケーションにおいて、言葉と記号は思考や情報の伝達に不可欠です。メールやSNSなどで用いられる文章は、相手に対して思考や情報を伝える上で重要な役割を果たしています。

適切な言葉選びや文法、表現は特に重要ですが、言葉と記号を効果的に組み合わせることで、文章にわかりやすさと柔軟性を持たせることができます。これにより、相手の理解を得やすいメッセージにすることができます。バーバルコミュニケーションは、この文脈で重要な一部となります。

非言語コミュニケーション

非言語コミュニケーションとは、言葉に頼らずに情報を伝える手法であり、人類が普遍的に用いているコミュニケーションの方法でもあります。別名、ノンバーバル・コミュニケーションとも呼ばれ、身振りや表情、声のトーン、服装、環境などの非言語的な要素が含まれます。もちろん、非言語コミュニケーションはビジネスにおいても重要な手法です。伝える内容以上に、話し方や表情、間の取り方や身振り手振りが受け手に与える印象は強く、非言語コミュニケーションの使い方次第で商談や面談などのやり取りをスムーズに進めることも可能です。


しかし、ノンバーバル・コミュニケーションにより、差別やハラスメントが発生する可能性があることを、管理職は認識しておくべきです。たとえば沈黙や無視、はぐらかしの行動によって、相手をモヤモヤさせてしまうことがあります。言葉の上では何も間違ったことを言っていなくても、非言語的なレベルで相手を傷つけることがあることを心に留めておくべきです。

共通性コミュニケーション

コミュニケーションは、言語や文字を使って行われることが一般的ですが、それを理解するには共通性が欠かせません。発信者と受け手が共有する共通の背景や前提があれば、意図したメッセージを伝えることができます。また、言語以外の要素でも、記号やアイコンを通じて意味を理解することができます。ピクトグラムは、看板やシンボルとして使用され、人々が共有している情報を引き出し、行動を促す役割を果たしています。道路交通やスポーツ競技場など、様々な場面で使われているピクトグラムは、社会に広く浸透しています。

コミュニケーションにおいても同じことが言えます。ピクトグラムのアイコンと同様に、共有している背景や前提があることで、スムーズに意見・感情・価値観・情報を伝えることが可能です。ビジネス上でよく耳にする「ボタンの掛け違い」は、コミュニケーション上の前提や常識がずれて発生するもので、後になって双方が気付くことがあります。

共通性を詳細にすり合わせる能力は、ビジネスにおけるコミュニケーションの成功の鍵です。双方は相手の意図や言いたいことを注意深く確認しながらコミュニケーションを進めましょう。関係構築も初期段階で重要ですが、言葉の意味や意図を整理する緊張感のあるコミュニケーションも欠かせません。共通性を活用するためには、初期段階ではむしろ疑いを持ちながら批判的な思考(クリティカルシンキング)を持つことが大切です。

差異性コミュニケーション

ビジネスにおいて重要な価値を持つコミュニケーションは、「差異性」に由来する側面があります。個々の人々の差異が大きいほど、異なる意見やバックグラウンド知識、情報が集まり、新鮮なアイデアやイノベーションが生まれやすくなるためです。差異性とは、簡単に言えば、個人の異なる要素を指します。文化、キャリアの経歴、価値観、思考方法、言語など、さまざまな要素が差異性に含まれます。人々はそれぞれ異なる経験を背景に持ち、異なる視点を持っています。そのため、異なる視点を持つ人々を集め、意見を交換する状況をいかに作り出すかが、ビジネスにおける価値のあるコミュニケーションを生み出すための重要な要素となります。多様な視点やアイデアが存在するほど、コミュニケーションの場でビジネス上の問題や課題に対して、効果的かつ革新的な解決策を生み出すことができます。

経営管理職や中間管理職は、規則やルールを守りながらも、意見の多様性や反対意見、異論反論といった差異が絶えず続く不安定な状況に立ち向かわなければなりません。それどころか、その差異を価値に変えるプロセスを果たさなければなりません。それがファシリテーションの役割です。

論理のコミュニケーション

コミュニケーションには、お互いが共通に理解するための基盤が必要です。ビジネスにおいて最も重要な基盤は論理です。

様々な情報や感情を、基本的な条件や論理的な進行状況に整理して伝えたり表現したりすることで行うロジカルシンキングやクリティカルシンキングなどが当てはまり、ビジネスで非常に有用なコミュニケーション手法です。

感情のコミュニケーション

感情を重視したコミュニケーションにおいては、「対話」という手法があります。対話は、お互いの立場や意見の違いを考慮しながら、共通の理解と認識を得るために行われるコミュニケーション手段です。

対話の場では、自分の行動や発言の背後にある感情や考え方、価値観について詳しく話し合います。これにより、普段意識していない要素を言語化して明確にし、相手と自分自身の双方の立場から議題や話題を客観的に理解することができます

対話は主に、論理では解決できない感情や価値観を超え、双方の感情を調和させ、コミュニケーションを図ることです。交話的なコミュニケーションの力を借りて、論理を超えた協力関係を築くことができます。

ただし、対話と称されるものは、明るく何でも話せる関係で行うべきではありません。心理的な葛藤を避け、対話と標榜したおしゃべりでは、価値創造は叶いません

まとめ

ビジネスにおけるコミュニケーションは、目的や状況に応じて使い分けられます。また、コミュニケーションは非常に深みのあるものであり、絶対的な正解など存在しない概念です。とくに変化の激しい現代のビジネス環境では、コミュニケーションが手探りで行われることも多いでしょう。

しかし、日々の訓練と工夫によって、ビジネス上のコミュニケーションは向上させることができます。コミュニケーションは、単なる情報伝達手段ではなく、企業や組織の成果や経営・運営を支えるために不可欠な要素です。したがって、ビジネスにおいては、コミュニケーションスキルを身につけることが重要となります。

コミュニケーションスキルを身に付けるには、研修の実施が有効です。効果的なコミュニケーションスキル研修の実施を検討している場合は、ぜひソフィアまでご相談ください。