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0110「革命はアルゼンチンより」

note でまた面白い人を見つけてしまった。河内一馬さんである。

現在26歳。18歳でサッカーの現役を退いた後、指導者の道を歩み始め現在アルゼンチンで指導者のライセンスを取得するべく学ばれている。

日本にもサッカーが浸透し、若くして指導者を目指す人も多くなったと思う。実際スポーツアナリティクスのカンファレンスに出席した際には高校生や大学生で既に指導者としてのキャリアを真剣に考え学びの場に足を運んだり、実際にチームで指導に当たっているという方が何人もいた。もちろん彼らは私にとっては歳下なので、自分が同じような年齢の時に(というか今も)そんなに真剣に自分のキャリアや夢を考えていなかったことを思ってとても尊敬していた。

しかし、この河内一馬さんはそんな若手指導者(の卵)の中でもちょっと違う次元で凄い。何が凄いかというとビジョンの策定力とその言語化能力と、それを実現するためにアクションを起こしているところが凄い。

彼のビジョンはこちらの note を読むとその大枠がつかめてくる。いい加減な私がざっくり言うと、日本のサッカー界、日本人のサッカーに対する考えを覆したい。本当の意味で日本にサッカーという文化を創りたい。そんな感じだろうか。こんな風にまとめてしまうとよく聞く風だが、内容はよりスタイリッシュで具体的で、クールだ。ダメなものはダメ、とズバズバ切り込む勢いがまた良い。ダメだ私が語れば語るほどこのビジョンの印象を毀損している気がするのであとは実際に読んでください。

懲りずに河内さんのビジョンを分解すると、1つは日本の指導者制度への挑戦、そしてもう1つはサッカーの芸術、アート、ブランド化だ。

ライセンス制度への革命

サッカーは競技である以上それを語る上で強さの追求を外すことはできない。強いチームは選手、監督(指導者)、その他スタッフで構成されるが、日本のトップリーグであるJリーグにおいては監督という立場にのみ強い制約がかかっている。JFAが発行するS級ライセンス、または同等のライセンスを保持していることが求められているためだ。河内さんはその制度を批判している。なぜならこのライセンスは単一の基準で指導者の能力を測るものではなく、取得にはコネクションが必要で、プロ選手の経験がない指導者が若くして取得することが非常に困難、実質不可能となっているからだ。

これにより若い指導者が国内のトップで現場につく可能性がないという事実が指導者への魅力、野心の醸成を毀損し、若いからこそ望める急激な経験の吸収とそれによる飛躍的な能力の向上が見込めない状況だという問題提起だ。

そこで彼は国外(アルゼンチン)で指導者のライセンスを取得し、S級同等のライセンスによってトップチームで指導可能という制度のグレーゾーンを狙って日本で指導に当たろうと考えている。実際アルゼンチンで取得したライセンスがS級相当と認められるか現時点では分からない。しかし少なくとも議論は起きるはずで、それが制度に対する問題提起、改善の流れを作る可能性に彼は賭けている。いや、それを使命とさえ感じているだろう。

ブランドとしてのサッカー

現代サッカーがこれほどワールドワイドに浸透し、莫大なお金を動かすようになったのは間違いなくサッカーのブランド化を人為的に推し進めた背景がある。しかしこれまでそれはサッカーの「試合」のブランド化であり、その過程で強いチームがフィーチャーされることはあったがそれはあくまで「試合」の価値をあげるためであったと思う。なぜなら当時人々にサッカーを届けていたのはテレビであり、テレビに映るのは試合だったからだ。その様子がよくわかる「電通とFIFA」にはアディダスの話も出てくるが、それはあくまで試合を起点にシューズを売っていたにすぎない。

しかし時代は変わり、個人が情報にアクセスできる時代になった。インターネットがあり、TwitterがありInstagramがある。試合を通さずともクラブが、アパレル企業が、選手がそのブランド価値を独自に発信できるようになった。既にサッカーには多くの人がぶら下がり、マーケットがある。そこに関わる全てのものがブランド化に向かうのは必至の流れだ。河内さんはそこにも気づいている。そして独自に92 F.C. というサッカーカルチャーブランドを立ち上げている。サッカーカルチャーをどうブランド化させていくか。日本サッカーに携わる人でそこを本気で考えている人がどれほどいるのか。河内さんは問うているように感じる。

つまるところ

つまるところ河内さんは肩書きこそ指導者だが、日本サッカーのことをめちゃくちゃ考えていてその考えを明確にまとめて言語化までできる人だ。言語化できる人 note に多い。河内さんの発信していることの多くは仮説だ。仮説だが明確なビジョンでもある。この仮説が今後どのような絵になっていくのかとくと見届けたい。

凄くタイミングよく明日河内さん出演の講演に参加するので楽しみである。

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