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生活に疲れた日に読む本|レシピ本/語学書


生活に疲れた日は、なにを読むか


だれにでも、生活に疲れてしまう日があると思う。お皿洗いや洗濯といった生きていくために必須の家事、公私ともに抱える無数のタスク、仕事や勉強で成果を求められること……。そんなものに圧倒される日。もちろん余裕があるときには、そんな日々が楽しいものだけど。

疲れてしまって「いったん一時停止させて!」と白旗を振りたくなる日は、自分の生活にまったく関係のない本を読む。現実世界との接続を切り離し、自分だけの時間に閉じこもるのだ。

そんなとき、どんな本を読むかが重要だ。いくら自分の生活に無関係でも、むずかしい本はちょっと大変。癒し系のエッセイもいいけど、ほっこりと励まされるのさえ疲れる気分のときだってある。

いろいろな本を手に取ってきたなかで、最終的に私の中で定番となったジャンルがある。それは、レシピ本語学書だった。

写真集+詩集みたいなレシピ本

レシピ本は、ふつうは読みものではない。料理の参考にする分量書きだ。でも世の中には、読んで楽しいレシピ本が意外とたくさん存在する。

ただ、疲れた日に読むレシピ本は、自分の生活に関係がないことが重要。「時短料理をできるようにならなきゃ……」と頭の片隅で課題を抱えながら時短レシピ本を読むと、たぶんもっと疲れることになる。

この本は私のお気に入りのひとつ。レシピ本だけど、ひとつひとつのレシピの紹介文がユニークだ。

ふつうのレシピ本は「甘酸っぱくておいしいレモンケーキです。レモンティーと合わせて飲んでみて!」というふうに、味の紹介がメインになる。ところがこの本は、それが全然ないのである。

甘納豆のスティックケーキ
何度もとり出してながめては、幼い心をときめかせた
宝石箱の中のルビー、サファイア、エメラルド……。
そんな思い出の時間を、ケーキにとじこめて。

P19

抹茶マーブルのバークッキー
すり切れるくらい何度も読んだ小説には、
あの頃の思い出も、いっしょに眠ってる。
しおりがわりにはさんだ、四つ葉のクローバー。

同上、P41

紅茶のガトーショコラブラン
小花のクロシェ、ちっちゃなドイリー。可憐なレースフラワー。
少しずつ集めていった、大好きなもの。
白くて、やわらかくて、やさしい気持ちになれるもの。

同上、P61

ケーキの写真もおしゃれで、どこか懐かしい空気感がある。写真集+ちょっとした詩集のような感覚で読める本。もちろん実際に作ってもおいしい。

二十年近く前の本なので、デザインのあしらいも少しレトロでかわいい。

モネ 庭とレシピ

『モネ 庭とレシピ』も、ぱらぱらめくるだけで楽しい本。香川の地中美術館を訪れたときに購入したからか、個人的にはその日の風や陽射しの雰囲気がこの本に詰まっている感じがする。

モネの絵画はもちろん、終の棲家の写真、庭に咲いていた花々の図解まで収録されていて、ちょっとした散歩気分で読める。モネが食べていた料理の再現レシピは、意外とシンプルで挑戦しやすそう。

読める語学書「言葉のしくみ」シリーズ

語学書も、基本的には勉強するものであって、読むものではない。でも、新書みたいにすらすら読んで楽しめる画期的な語学書がある。白水社の「言葉のしくみ」シリーズだ。

ここでも生活にまったく関係ない国の言語を選ぶのがポイント。たとえば英語だと「仕事のためにやらないと」などと余計なプレッシャーを感じるおそれがある。

知らない言語の見たこともない文字列や不思議な文法は、それだけでわくわくしてくる。「この言葉を毎日話して暮らしてる人も本当にいるんだ」と思えて、世界って広いなあと感じる。

言葉のしくみは現在26言語がカバーされているよう。「ずっと気になっているけど、まだ縁がない」という国がもしあれば、言葉のしくみをぜひ読んでみて。


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読書好きの人々は、それぞれ疲れた日に読むとっておきの本を持っているのだろうか。「疲れた日こそ、とてつもなくむずかしい哲学書を読む!」なんて人も、もしかするといるのかもしれない。


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