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【パパがサンタになった日のことを教えるね】オリジナル絵本(文章のみ)

きみが生まれた日、空がとっても青くキラキラ光っていたのを、
はっきりとおぼえているよ。
嬉しくて空を見上げることなんてあんまりないからさ、
パパをそんな気持ちにさせてくれて「ありがとう」



ママがほんとうに頑張って、きみもほんとうに頑張って、
きみはママのおなかから、この世界に飛び出したんだ。
頑張ってこの世界に出てきてくれて「ありがとう」



パパは、ママの手を握って、応援することしかできなかったけど、きみの顔を初めて見たのは実はパパなんだ。あんなに頑張ったママより先にきみの顔を見れるなんて、パパはズルいよね。

きみの顔を見た時、
パパはきみに会うまでに何十年も生きてきたのに、初めて、涙が流れてることに気付かずに泣いてたんだ。すごいよね。涙が勝手にポタポタ流れるくらい、きみに会えたことが嬉しかったみたい。こんな気持ちにさせてくれて、「ありがとう」
ママも嬉しくて泣いていたよ。


きみが生まれてすぐに、パパはきみの名前をこの世界に登録する場所「役所」という所に行ったんだ。大好きなきみがこの世界で生きるための名前をママと考えたんだよ。きみも気に入ってくれているとうれしいな。

きみの名前の登録が終わったら、パパは役所の一番奥にある部屋に案内されたんだ。。。そこはすごく不思議な雰囲気で、そこだけ世界が変わったような感じだった。

凄く重たい扉を開けて部屋に入ると、


そこには暖炉と、椅子が2つ、そのひとつの椅子には、パパが子供の時に絵本で見た、あの太っちょのサンタクロースが座っていたんだ。

パパが部屋に入るとすぐ、サンタクロースがパパに話しかけてきたんだ。



「ようこそ新米サンタさん、私はサンタクロースです。さぁ、そこの椅子に座って」

不思議と怖くもなく、驚きもせず、パパはワクワクして椅子に座ったのをおぼえているよ。

サンタクロースが持っていた杖を振りかざすと、
座っていたパパの膝の上に、突然サンタクロースの服が現れたんだ。

ニコニコ笑うサンタクロースが続けて、


「今日からあなたをサンタに任命します。可愛いあなたの子供専属のサンタです」

「あなたのサンタの仕事は、毎年クリスマスの夜、子供が寝た後に、この服に着替えて、起こさないように枕元にプレゼントを置くこと。それだけです。簡単な仕事でしょ」

「プレゼントは、子供が喜ぶものをクリスマスまでに私に伝えにくること、そこで私があなたにプレゼントを渡すので、家まで子供に気づかれないように運ぶこと。わかりましたか?」
「毎日子供と一緒にいるあなたの方が、子供の喜ぶプレゼントがわかるでしょ?」

パパは目をまんまるにしながらうなずいていると、ニコニコしていたサンタクロースの顔が急に真剣な顔に変わって、



「でも、プレゼントを渡せる条件が1個だけあるので、それを必ず守ること。。。それは。。。」



【⠀毎日、「ありがとう」を子供に言うこと⠀】




真剣な顔が、またニコニコ顔に戻って、

「生まれてきてくれたことだけでも、こんなに感謝してるんだから、こんな簡単なことはないでしょう?
でもこれすら守れない悪いサンタはいっぱいいるんだ。あなたは、いいサンタでい続けるようにね」


いい子のところにしかサンタさんは来ないよって、きみは聞いたことない?
実はあれは、パパがサンタクロースに言われたことをパパが忘れないようにパパ自身に言っていたことなんだよ。知らなかったでしょ。



「この仕事の終わりは、あなたの子供が、あなたがサンタだということに気付かないフリをした時。
そこであなたのサンタの仕事は終わりです」

『でも、子供がサンタクロースを信じていると言い続けてきたら、どうやって気付かないフリをしていることがわかるのですか?』

「大丈夫、毎日ちゃんと子供と向き合っていたら、きっとわかる時が来るから、安心して」


サンタの服を持って、扉を出て振り返ったら、そこにあった扉は消えてなくなって、サンタの服だけがパパの手に残ってたんだ。すごく不思議な体験だったよ。


それからパパは毎日きみに「ありがとう」を伝えた。
すごく簡単なことだったよ。


うんちの音でパパを笑わせてくれて「ありがとう」


パパのカバンに盛大におしっこをかけてくれて「ありがとう」
(ママに新しいカバンを買ってもらえたよ)


全部にイヤイヤイヤイヤ、ちゃんと気持ちを伝えてくれて「ありがとう」


おぼえたての言葉でいっぱいお話ししてくれて「ありがとう」


一緒にサッカーをしてくれて「ありがとう」


ママが風邪をひいたとき、ママの代わりにママをしようとしてくれて「ありがとう」


運動会で、一番遅かったけど、最後まであきらめずに一生懸命走ってくれて「ありがとう」


服のポケットに砂を満タンに持って帰ってきてくれて「ありがとう」■


パパと一緒に虫取りに行ってくれて「ありがとう」


パパとけんかをして、パパを怒ってくれて「ありがとう」



サンタを見るために頑張って徹夜しようとしてくれて「ありがとう」


好きな人のこと、教えてくれて、「ありがとう」


サンタが最後に来た時のクリスマス。。。

朝、きみは今までで一番喜んだ顔をパパに見せてくれたよね。
その時に気付いたよ、サンタクロースではなくて
パパに「ありがとう」を伝えてくれているってことを。


なんだか嬉しいような悲しいような複雑な気持ちになったけど、
パパは勇気を出して、きみに、
「サンタさんは来年からは来ないよ」
って伝えたよね。

実はきみの成長した姿が嬉しくて、
パパはバレないように涙をこらえてたんだ。
だから不器用な言い方になっちゃった。

パパをサンタさんにしてくれて、本当にありがとう。





実はこの話には続きがあるんだ。


それはきみが生まれた年、サンタクロースに言われた言葉。

「いつかあなたのサンタの仕事が終わった時には、子供にこの話を教えてあげなさい。子供には、他の子にはこの話はヒミツにするように、ちゃんと伝えるんですよ」


だから今、きみにこの話をしているんだ。


パパが見たサンタクロースは、間違いなく本物のサンタクロースだった。
だから、サンタクロースは本当にいるよ。
でも、みんなにはみんなのサンタさんもいる。
だから、この話はパパときみだけのひみつだよ。


パパの子供になってくれて「ありがとう」





あとがき・・・

このお話は、子供向けの絵本ではなく、子育てに奮闘している親、これから子供を迎える方、に向けて書いています。

育児で大切なこと、それは、子供を自分とは別人格として接して、
子供の存在に感謝をすることだと思います。
子供が思い通りにしてくれなくて、日々イライラしてしまったり、
心身ともに疲れ果てて、子育てがつらくなってしまう時は、
多々あると思いますが、そんな時に、少しでもこのお話を思い出して、
子供と向き合ってもらえるきっかけになったら嬉しいです。

ちゃんとしなさい、〇〇はしたの?、早くしなさい。
このようなことを子供に言ってしまうことも多くあると思いますが、
そんな時でも、親の希望に沿った行動をとってくれたら、
ちゃんと感謝を伝えてあげることが大切です。

子供は親の分身でも、道具でもなく、一人の存在です。

例えば、早くしなさいって親が怒り、そのあと子供が急いでしてくれても、
親は子供に怒ったままです。
そんな時は、早くしてくれてありがとう。と伝えてあげてほしいです。

子供は、まだ知らない世界を全力で生きています。
日々生きているだけで、ありがとうの出来事であふれていると思います。

「ありがとう」は、科学的にも立証されていて、
言う側、言われる側にも幸福感をあげる
魔法の言葉といわれています。

子供の自己肯定感、自己効力感、幸福感を高めるには、
日々子供の言動に、存在に、親が感謝をすることが
とても大事だと思っています。

子育てを心から楽しむ人が増え、親も子供も
笑顔にあふれる世の中になることを心から願っています。


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