最後の64日。
2010.2.26
銀座にて。
歌舞伎座が間も無く建て替えとなるため、記念に撮影した一枚。
さよなら公演まで、あと64日。
恐らく私は、アナログなものが好きだ。
手巻きの腕時計、レコードの音に、古い建物。本は電子書籍ではなく紙に印字された文字で読みたいし、料理も圧力鍋を使って時間を短縮するよりも、土鍋でくつくつ時間をかけて作る方が楽しい。
今はお休み中だけど、書道教室にも通っている。
そんな私がフィルムカメラを10年以上愛用している最大の理由は、どんな風に撮れたか、プリントしないと分からないというドキドキ感とワクワク感にある。
フィルムの枚数は限られている。
だから、下手な鉄砲数撃ちゃ当たる的なペースでシャッターを切っていたら、一瞬のうちに膨大な数のフィルムを消費してしまう。
撮り直しも出来ないから、シャッター速度や露出を(乏しい勘に頼るしかないのだけど)慎重に調節し、ここぞと思う瞬間を逃さないようにシャッターを切る。
うっかりフィルムを巻き忘れていて、待ち焦がれていた瞬間を逃して悔しい思いをしたことが多々あるし、出来上がった写真はイメージしていた光景とは程遠くてがっかりすることも多い。
むしろ、思い通りに撮れていない場合がほとんどだけど、だからこそまた撮ろうと思える訳で、デジカメだったら趣味としては続かないだろう。
最近、再び使い捨てカメラの人気が盛り返してきているようだけど、この先、いつフィルムの生産が終了してしまうのか、不安でならない。
もし、あと64日でフィルム生産終了という事態に追い込まれ、さらに、これが最後の一枚となった時、私は一体何を撮るだろうか。
大好きな海と空、夕焼け、癒しの鴨……。
そういえば、 このカメラは私が父から受け継いだものだった。
実家に置いてきたアルバムには、生まれて間もない姿、幼稚園での運動会や、家族旅行で撮った写真等が収められている。それらは全て、このカメラで父が撮影してくれた。
フィルムカメラとの出会いは、当時付き合っていた人に勧められたのがきっかけだけど、偶然にも父がこのカメラを持っていたから始めてみる気になれた。
もし、最後の一枚を撮影する日が訪れた時は、感謝の気持ちを込めて、父を撮影したい。
ふと、そんなことを考えてみた。
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