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再構築の、その先。

3年3か月勤務した会社を辞めて、今月から新しい会社で仕事を始めた。

今回はお話をいただいたのが2月の終わりで、順調に面接を経てあとはOffer Letterという段階で先方の都合で1か月半ほど無しのつぶてになり、そもそも転職自体を考えてもいない段階で降って湧いたお話だったからと、こちらも悠長に構えていた。

前の会社を辞めたかった訳でも無かったし、だいぶ自分の裁量に任せてもらえていて自由に仕事ができていて、大きな不満があるわけではない。
色々な方から信頼を置いていただいていたのも肌で感じていたし、ただちょっと業務内容と報酬がアンバランスだと思っていたくらいで、辞めたいと思うほどの環境ではなかったから、逆に退社することにとても躊躇した。

でもそれでも新しい環境に飛び込んでみようと思ったのは、深く考えなければぬるま湯で居心地の良いところにいて、いずれ自分の市場価値が無くなるのが少し怖かったから。
それと、穏やかな生活に少しだけ、飽きてきていたから。


何日か有給消化できたので、20年来ずっと行きたいと思っていた夏の京都に行くことにした。
この季節の京都はとても暑いうえに祇園祭で混雑するのだけれど、いつか早朝に咲く蓮の花を見てみたいと思っていて、きっと今年がゆっくり訪ねる最後の機会になるだろうから、と春と同じように手配をした。

着いた日は祇園の宵山が終わったあとで、少しだけ街は落ち着きを取り戻していた。
もう蓮の咲いている時間には間に合わないので、代わりにこちらもいつか行ってみたかった八瀬の寺を目指した。

磨き上げられた卓に反射する青もみじ。
いつもは春と秋しか公開されないのだけれど、この夏は特別公開されている。
これもまた、今年限りの“特別“。

八瀬は市内よりは涼しかったのだろうけれど、それでも鴨川の水音では足りないと思うほど陽射しが強かった。
今度はストールをお供に、真っ赤な紅葉を観に来ようと思った。

翌日、朝7時台だというのに蒸し暑くて陽射しの強いなか、花の寺を目指す。
蓮池と鉢入りの蓮、白と薄桃色の花が沢山出迎えてくれた。
薄桃色に筋の入った蓮の花が陽に透けて、青空とのコントラストが美しい。

蓮は1日目から3日目は昼前には花を閉じ、4日目には夕方まで咲いて、一気に散るのだという。
たった4日、開いている時間で言えばトータルでおよそ1日分くらい。
夏の陽射しの下でも静かに空に向かって花を開く姿には、”凛”という言葉が似合う。

お詣りついでに本堂に立ち寄ると、お不動様が鎮座していた。
私は28日の生まれで不動明王の月縁日にあたるので、お不動様にはいつも護ってもらっているように勝手に思っていて、いつも少し恐ろしげなその顔を前にすると、自分の歩いている場所を糺されているような心持ちになる。

私は、周りの人とは違う道を歩いているのかもしれない。
自分の進みたい道がいつも正しいとは限らないし、すべての人から理解されるとも限らない。

いつも少し悩みながら、選んできた。
“悩んでも良いけれど、迷ってはいけない“というある本の一節を心の中で反芻しながら。

何が正しくて、何が間違っているかなんて、誰にも分からない。
今の世の中のルールに従っているかどうか、ただそれだけ。
新しいフィールドで挑戦することを、無謀だと言う人もいる。
それは他人の価値観で、振り回される必要なんて無いのだけれど。

分かっていても少しだけ心細いのは、見えない未来を楽しめるだけの心の余裕が、まだ足りないのかもしれない。

全て思い通りの人生なんてあるはずもないのだけれど、少しでも叶えられたらいいな。
20数年来焦がれていた、夏の都に蓮を観に来られたように。

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