まあ仕事もせず、お金も無かったから長らく休んでいたLOST BIRDでの店舗営業を再開した。

といっても以前もオープンしても人は来ず、鳥を探しているはずなのに閑古鳥が鳴いては泣いて店仕舞いしていたので、今回もほとんどお客さんは来ない日々。
この和田岬という場所は地図に存在していて地続きで来れるのだけれどみんなの記憶から忘れられたファンタジーのような場所なんだろう。
ラフテルとでも呼んでみようか。

そんな中でも1週間に1人来てくださるお客様と話すと、オリジナル欲しいですとか、レディース増やしてくださいとか、アイデアをくださって有難い。
そのうちの偶然通りがかって入ってくださったお客さんが、店内にたわしていたソフビフィギュア見て「これ売れるよ？売ってよ」と言ってきた。
スーパー戦隊もレンジャーも特撮も興味なかったから「これが売れるんですか」と言いながらGoogleカメラに晒してみるとどれも高額なものだった。

よく古着どこで買うんですか？って言われて拾ってますとか俺は言う。今日来てるカシミアのニットもレオパードのハットも拾ってきたものだから嘘じゃないし、その埃まみれになりながらソフビも拾ってきたものだったから驚いたもんだよ。古物商だから拾ってきたなんて言ったらまずいんじゃない？ってそれはお話なんだから信じるかは自分で考えねえ。

ソフビたちを次の日にまとめてメルカリに出品したらば、その日のうちにほとんどが売れて、無一文だったところから少しホッとする額になった。
なんだか年が越せそうだな。
そう思って床につけば、
翌朝には携帯が鳴いて「ほかまくんあれのお支払いお願いします」あっ、そうだった、あれ払わなきゃな。助けてもらったんだった。
世の中うまくできてるね。
お金入ったらすぐ出てっちゃうんだもの。

と言いつつ発送準備。
届かないとぬか喜び。また糠漬けと米の暮らしはごめんだね。少し金が入ったんだから安心させてくれ。5kg¥1,200の米。

準備中もまだある商品にもどんどん問い合わせが来た「お値下げ可能ですか？」「馬鹿言わないで、相場ってもんがあんだよ」「他にもソフビ持ってますか？」「またあんな埃まみれなって拾いに行かなきゃなんねえのかよ」

「自立しますか？」

自立しますか？は？？？？
一瞬、意味がわからんで大学卒業した若者にでも質問してきてるのかと思った。
二本足で支えなしで直立するかと言うことだろうし、間違ってないけど、自立ってのはちと意味深。
「この角度で自立します。」と返したが「今回はやめときます」と言われてキープ。

待て、待て、その返しだとさっきの「自立しますか？」は本当にどういう意味だったんだ。
あなたは私に教えを残して消えるのか。神よ。
はい。お客様は神様です。っしゃせい！



今までの商売ってのも考えてみたらば、
卸先に行って買ってきたものをまた自分のとこで売るって仕事、自分で0からどこから見つけてきたわけじゃあない。
ましてやソフビは何か良いと拾ってきたわけだが、お客さんに教えてもらわないと何も金にはなっていなかった。
ましてやメルカリ無ければ食えてやなかったよ。
今までの仕事も誰かの紹介でしかなくて自力で就活なんてしたことないよ。



「自立しますか？」

社会っていうのは人がたくさん関わって何か事が成り立ってるわけだが、今の仕事は業界の中でも自立してるかと言われれば難しい。
古着屋ってのは大体アメリカ行って、スリフトやマーケット回ってくるわけだけど、アメリカも行ったことなければ他の国で過去2回ほどそんなことしたっきり最近は全然できてやしない。そもそも赤字を切り続けて毎日火の車だよ。そうきっとこの日常は例えるならば劇場版・ホカマックス地獄の高松線。

「自立しますか？」

そう、古着が売れなきゃ本を売ればいい、
本が売れなきゃ家電を売ればいいとホカーアントワネットが囁く。
そもそも物が売れなきゃ事を売ればいい。
売れる物はなんでも売ればいいのだ。
こだわること、何かにすがってぶら下がるってことは自立からは程遠い。


「自立してますか？」

なんでそんなとこにいるんだい。君はもう才能だなんだという年齢は遠にすぎている。30過ぎれば普通の大人。30/90 tick tick boon...
実際、和田岬に来たことはご縁だが自分だけで選んだことではないのだ。
先日の東京旅情を読めばわかる。
憧れた東京で居場所を見つけられなかったのだ、男の夢は終わったのだ。人の夢、ゆったりとしあわせな暮らしをしたい。ただ、東京の広々とした公園を休みの日に散歩したかったのだ。
まだ遅くはないのだ。
一つ夢を見たら起きなきゃならない。
今僕は古着屋という夢の中にいる。
そろそろ起きる時が来たのかもしれない。
まだ外は寒いか。布団は温いだろ。


「自立しますか？」
坂口恭平のお金の学校
山下陽光のバイトやめる大学
読んでた時にはもう、もうやってた。
でも学ぶことも共感も多い。

「自立しますか？」

あんまりに満月が綺麗で眺めていたら自転車がパンクしやがった。ヘニャチンで真っ直ぐ立ちやしないから乗り捨てて、てめえの足で歩き帰った。
気持ちよく飲めたのか早い時間に友達は酔い潰れて寝ちまった。ウトウトして危なかったから支えてやって、最後は横になった。
ロックイベントに行ったあまりに押し合うもんだからバランス崩してみんな転んでしまった。お互いに立ち上がって手差しのべた後はみんなで肩組んで踊った。

「自立しますか？」
それはコンティニューボタン。
今日これを書いている夕方だって早く配送しなくちゃ。次の出品をしなくちゃ。
Netflix見て、何時間か経ちましたがまだ続けますか？いや、洗濯物して自炊しなきゃ。
キムチ鍋しようと思ってスーパーに行ったのにキムチを買い忘れる。
煙草でADHD特有の昂りを否す。
死にやしないし、死んだり大きな怪我しなきゃいいよ。

コンティニューします。


「自立しますか？」

今年をまとめる記事にするつもりも無かったが、
昨年は夏が終わり今年の夏までぼんやりとした時間が続いたせいで目標なんてなかったしまるで思い出せしないほどに記憶も無い。
今年の言葉は「無」2023年の目標があるとするなら「自立」だろうかな。
無理にそんなこと言うんじゃあ無いよ。
きっと仕事で独立することもお金があることも自立じゃなくて意味わかってないんだなら意味考えることが目じるしにやってくれんのよ。



まずは手始めに、すがってきたファッションを手放すところから。断捨離だよ。
なんでもできるってこえー。

自立ったっておれは男だからあれしかたたねえよ。なにいってんだ馬鹿野郎！
男は本当に馬鹿タレで弱い生き物だな。
仕様もないこと言ってる暇があればささっと工場に新作の生産の依頼しな！

BGMはビートたけしと落語だぞ

とっとと、おきろ(^_-)