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かわら版No.14 議員実務の基本のき「間違えないことの作法」

いつもお読みいただきありがとうございます。9月定例会も26日の本会議での審議を残すのみとなりました。5月より米沢市議になって早くも5か月が経過しようとしているわけですが、ちょっとした違和感をここに記しておきたいと思います。

大学院の修士課程を修了した私は、札幌市役所のオンブズマン室の専門調査員(法律職の特別職公務員)として、(また、同時に専門学校の短期大学部の憲法の非常勤講師として)働いていました。当時の札幌市役所のオンブズマン室は、民間人から選任されたオンブズマン(特別職公務員)が3名、私の身分である専門調査員が3名、これに札幌市役所の公務員である部長1名、課長1名、係長2名、臨時職員2名という体制でした。私の主な業務は、札幌市オンブズマン条例に基づき、市民から、オンブズマンに対してなされる、市の業務に関する苦情申立てについて、オンブズマンの調査を補佐することでした。具体的には、当該条例に基づく調査に関する全ての文書を起案することであり、調査に関連する事実確認、関係法令確認等を適正に遂行することです。

ですので、実際の実務では、該当法令の条文を確認することが必須でした。面倒くさがらずに法令に当たり条文を確認し、地道に一つ一つの法令の関係性を理解していかなければなりません。条文を正確に読みまた解釈する力は法の体系を気にしながらコツコツと身に着けていくしかありません。特に、行政実務の関係法令は多岐に渡るため丁寧に一つ一つ法令に当たる必要があります。また、法律の理解ですので、論理を尊重し、法的なものの考え方を前提としなければなりません。いわゆるリーガルマインドです。具体的には、①事実と主張を区別して抽出し、②論点を整理し、③事実や情報について価値判断に基づき事実認定し、④主張が法的に構成できるものなのか法律構成するという、一連の法的思考力です。

あれから約20年が経過し、今米沢市議会議員として働かせていただいています。日々思うことは、初心に帰って条文を確認し、法的思考力を丁寧に組み立てることが、米沢市議会での議案の審議においてもとても大事だということです。どんなに時間を経たとしても、常に初心に帰り、上記の思考手続きをルーティンとして踏むこと、条文を読み、当該条例の実例や判例に当たり、専門家の書いた逐条解説に目を通すことが、議員として意見を述べ、市民生活を守るうえでも、とても大切です。

当時一人のオンブズマンと仕事をする中でよくご指導いただいた言葉がありました。「行政の仕事で一番大切なことは、間違えないこと」「市民の皆さんにとって大事なことは、間違えないという行政との信頼だと思います。」このように仰っていただきました。当時は何となく理解しているつもりでしたが、今はこの言葉の重みを感じます。結果を急ぐでもなく、結論ありきでもなく、丁寧な手続きに基づき間違えない正確さこそ行政と市民の信頼関係の前提です。それは議会も同じなんだろうと思います。このオンブズマンの先生の、苦情申立ての面談に来られた市民の方がお帰りになる際に、市民の方をお見送る際の、お礼とお辞儀の美しさ(人格的姿勢の美しさとでも言えばいいのか)の記憶は、約20年を経た今でも鮮明です。

9月定例会を通じて、米沢市当局とのやり取り、議会でのやり取りの中で、この基本のきができているのだろうかと、少し考えさせられる場面がありました。米沢の市政が、議会が、議員の質が良くなるためにはリーガリティの経験と技術を持つ者がもう少し増える必要があるのだろうと思います。私としても、これからも基本のきができる職人気質の議員となれるように研鑽を積みたいと思います。

今回もお読みいただきありがとうございました。

かわら版No.14


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