見出し画像

市場価値の磨き方ーステージ×役割でとらえるキャリア進化


※本記事は、2017年9月に書かれた↓の記事のリライトになります


「1億総デザイン社会へ 自分らしくを、アタリマエに。」のテーマで綴る連載シリーズ、第2回です。

キャリア編の第2回は、市場逆引きでのキャリアの考え方について書いていきたいと思います。

昨年、ビジネス書のなかでも、転職本としては異例の売れ行きを誇った北野唯我さんの『転職の思考法』をお読みになった方もいるかもしれません。

市場価値=①技術資産×②人的資産×③業界生産性のかけ算の中で、「20代は専門性、30代は経験、40代は人的資産でキャリアをつくれ」といったメッセージもあります。

あらためて、自分の人生のキャリアを考えて行く中で、今回は市場逆引きでの考え方を紹介していきたいと思います(より内発的な「生き方」の話はまた次回以降で書きたいと思います)。


1. 経営ステージ×役割でなりたい像をイメージする


さて、では本題に入ります。今回のお題は、キャリアを考えるうえで、企業の経営ステージとその中で求められる役割をどうイメージするか。

僕が社内でコーポレート部門のミッションをつくるときに「経営ステージの進化」という表現を使っていたのですが、そもそも「経営ステージ」ってなんだろう?とか、「経営者」ってなんだろう?とか考えるわけです。

そんな中で、マッキンゼー入社同期であり、ぼくのメンターもしてくれている朝倉さんの『論語と算盤と私』という本がとても参考になりました。

2016年の著作ですが、その年のビジネス書では個人的にベストヒットでした。そこで書かれていることでもありますが、ひとくちに「経営者」といっても、その種類はステージによって異なります。

画像1

これまでのキャリアの中で、色々な経営者を近くで見させてもらうことが多かったのですが、経営者といえども起業家と再生期のプロ経営者の感覚は違うと思うんですよね。どちらが好き・嫌いというのもあると思います。

成熟期に近づいていくと、市場環境や解決すべき経営課題が複雑になっていく。それにともなって(朝倉さんのいうところの)「カルマポイント」がたまっていくというか、人間の「業」みたいなものを背負った大人になって、色々な「しわ」もふえて深みが増していく。

企業がのぞむ・のぞまないにかかわらず寿命を重ねていく中で、赤ん坊(=創業期)から徐々に年を重ねて、成人するタイミング(=象徴的なのはIPO)があって、その途中で中二病(例:現実課題からの逃避)とか反抗期(例:株主との軋轢)があったりする。

成人するまでは、いろいろな面倒(=経営課題)はあっても、なんだかんだ自由気まま(=トップダウン)にやれて、逆にトップの器がそのまま会社の器の大きさを決めるというステージ。でも成人した後は、家族(=ステークホルダー)を背負った大人になっていくし、いつかは子供(=後継者)もできて、経営をまかせていくようにしなければならない。

色々な人とキャリアについて話している中で「経営に何かしらのかたちで携わりたい」という人はたくさんいて、「将来は社長になりたいです」「起業したいです」「社長にならなくてもいいけど、右腕になりたいです」「経営を支援する立場としてプロでいたいです」などいろいろと聞くことが多い。

たとえば「社長になりたいです」という考え方ひとつとっても、それは経営ステージによってだいぶイメージが変わってくる。それは、経営トップの伴走役となる社外のプロフェッショナルや、実行役となって各機能を担う社内のスペシャリストにしても同じこと。

ぼく自身でいうと、これまでの10年のキャリアの中で色々な違うステージや立場を経験させてもらいました。それこそ、コンサル(=マッキンゼー)で再生期の企業のコストカットを支援したり、拡大期の企業の成長戦略をつくったり。事業会社(=楽天)で新サービスを立ち上げたり既存事業のターンアラウンドをやったり海外スタートアップを買収したり。

今は成長期のランサーズで経営を担わせてもらってますけど、その中でも、新規事業の立ち上げ(=攻め)を複数やったり、一方で大人になるためのガバナンス(=守り)みたいなことを考えたり。そういう経験を重ねてきたことによって、自分の得意不得意、自分が価値を発揮できるところや、なりたい像が見えてくるようになりました。

皆さんもぜひこの経営ステージみたいなものと、そこで担う役割や立場のようなものを、ときおり俯瞰してみるとよいかもしれません。


2. 社内外にメンター・ベンチマークをつくる


とは言いつつも、「経営ステージ」なんてえらそうに俯瞰だけしていても、物事は始まらないし何も動かない。そこでおススメなのは、自分なりに、なりたい姿に向かってメンター・ベンチマークをつくることです。

メンターと言っているのは、「孫さんみたいになりたい!」みたいなあこがれ(=遠い先の夢)でもなく、同期入社・同僚で「あいつには負けない!」みたいなライバル(=足元の座標)でもなく、自分の現在地点と向かいたい先との距離感をそっと教えてくれる、まぁ相談ごとにのってくれる先輩みたいな存在(=少し先の道標)です。

ある場合にはそれが社内の上司や先輩だったり、ある場合にはそれが社外の業界の先達だったり。上司や先輩はわかりやすいのですが、経営者やその道のプロになっていけばいくほど、(社内ではなく)社外のメンターやベンチマークをどう見つけるか、が重要になってきます。

たとえばランサーズ代表の秋好は起業家であると同時にその先のスケールにいたっている事業家でもあると思いますが、近いうちに大人になってプロ経営者としての道を歩んでいくべく、自身の羅針盤となるような先輩起業家をメンターにしています。

具体的には、同じくらいのステージ、5年先のステージ、10年先のステージにいる(と考える)起業家を3人ずつリストアップして、3か月にいちど会ってメンタリングをしてもらうということを仕組み化している。

これだけでもすごいと思うのですが、さらにすごいと思うのは、そうした縦の関係(=先のステージに行っている人)だけでなく、横の関係(=同じステージで違う立場にいる人)にもメンタリングしてもらっているところです。具体的には、起業家を側面から支援・アドバイスする立場にあるVCやコンサルタントなどの専門家にも定期的に会っています。

たとえば、経営者開発コンサルタントとして直近で『40歳が社長になる日』を書かれ、ランサーズの社外取締役をしていただいている岡島さんも秋好のメンターの1人です。

こういう仕組みが必要なのは、何も起業家に限ったことではないと思っています。たとえばあなたが仮に、いま財務担当で、将来的にCFOになりたいと思ったとする。

まずは自分が目指したいステージでCFOに必要とされる役割を見きわめ、先のステージにいる先輩とのネットワークを積極的につくりにいって、自分の現在地点を定点観測していくとよいのではないでしょうか。

画像2


3. 早くリスクをとってチャレンジする


メンターになってくれるような先輩が見つかったら、次はその人たちを道標としてベンチマークしながら、積極的なチャレンジの機会を探すことです。

もちろん、チャレンジには(不確実性・不確実な要素という意味での)リスクが伴います。でも一方で、同じステージでの同じ役割、つまり似た環境でずっと仕事をするということは、(たしかに楽ではあると思いますが)それだけキャリアが硬直化していくということでもあります。

年功序列型の組織・企業はこれからどんどんなくなっていくと思いますし、JALや東芝のような日本を代表する大企業でさえいつ経営危機にさらされるかわからないという状況です。

産業寿命や企業寿命が明らかに短くなっていく一方で、人の寿命は長くなって100年人生時代に突入していくわけですから、むしろ、同じことをずっとやり続けていることが(環境の変化に対応できないという意味で)リスクになるかもしれない。

自分も楽天からランサーズに、ベンチャーの世界に飛び込むにあたってリスクをとりました。最後の最後は、あまりロジカルに考えて決めたことではありません(「ええ!先生!」というツッコミはご容赦!)。

「1億総デザイン社会」という自分なりのビジョン・コンセプトが実現できる機会を、積極的にベンチマークを探していく中でタイミングよく見つけた、という感じです。

自分がとるリスク(=不確実性に高い自分への投資)に見合うリターンを得るのは自分でしかない、と思います。違うことをやればその分、失敗するかもしれないという思いは常に頭をよぎりますが、個人的には、ほとんどの失敗はすべて成長・学習の機会(=ラーニングエクスペリエンス)だと思っています(このあたりの話はまた次々回にしたいと思います)。

これは、何も違う企業や組織への転職に限った話ではないと思います。同じ企業の中にせよ、キャリアパスをたいていの人は意識する。そして一度は「自分はこのままでいいんだろうか」と悩むわけです。

チャレンジの機会が実はそこに転がっているかもしれないのに、それに気づかずに見過ごしてしまっていることも多い。そしてそれを気づかせてくれるまわりのメンター的な存在がいないこともさらに多い。

ぜひ皆さんも、早い段階でリスクをとってチャレンジしてみることをおススメます。早ければ早いほど、チャレンジにともなう変化への対応力がついていくと思います(「アジリティ」とか「レジリエンス」なんて言葉が使われたりもしますね)。

リスクをとってチャレンジを重ねていく中で、自分が最も価値の出せるステージ、自分がもっとも輝ける役割が見つかっていくのではないでしょうか。


今回のポイント


というわけで今回のまとめです。

画像3


最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。ぜひ次回も楽しみにしていてください!

本連載シリーズのまとめスライドはこちら↓


本連載シリーズの記事一覧はこちら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?