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オススメ映画を紹介するよ! そこかしこに伊藤沙莉編

伊藤沙莉さん(以下敬称略)は今や日本映画に欠かせない人気女優です。ハスキーボイスと人の良さを感じさせる笑顔が魅力的です。今回は言及しませんが、「パンとバスと2度目のハツコイ」「寝ても覚めても」「蒲田前奏曲」などの作品のように、主に主人公の友人として登場したりもします。伊藤沙莉映画出すぎ問題というのがあって、主人公の友達率も高すぎる気がします。映画出演の多さは最後にも触れますが、それだけ必要とされているんですよね。今回主役脇役出演作をいくつか紹介します!

ペンション・恋は桃色

オススメ映画と言いながら例によってドラマからご紹介。父親シロウ(リリー・フランキー)、娘ハル(伊藤沙莉)が営むペンション「恋は桃色」。ここに面倒くさいヨシオ(斎藤工)が転がり込んできます。season2まで公開されていますが、ストーリーの流れはseason1もseason2もほぼ一緒です。ペンションに宿泊する女性とシロウがいい感じになってでも振られたりわちゃわちゃする前半と、「家族」をひとつのテーマとして泣かせにかかってくる後半です。シロウの恋人候補としては、筧美和子、三倉茉奈(s1)、剛力彩芽(s2)、その他キーパーソンとして細野晴臣(s1)、山口智子(s2)が登場します。そもそもラブホテルと間違えられる怪しいペンション名「恋は桃色」は、細野晴臣の楽曲から来ているんですよね。続けて見ると、「存在自体謎な宿泊客(ラバーガール大水)」「ガラス越し後ろ姿の入浴シーン」「斎藤工撮影のドローン映像」などなど、お約束の小ネタがあったり結構楽しめます。それでいて後半の感動エピソードもあり、ほっこりした良いドラマです。

もうひとつのオススメポイントは、ヨシオと飲み友達との居酒屋無駄話シーン。JOY(s1,2)、石田たくみ(カミナリ)、安藤ニコ(s1)、益子卓郎(U字工事)(s2)が面倒くさい話をするヨシオとアドリブっぽい会話をただしているだけです。でも役者さんのナチュラルな顔が見られて面白いんですよね。そして、s2では、我らが眉村ちあきがメンバーとして加わっているのです。映画は何本か出ている眉村さんですが、ドラマへの出演は珍しいですし、斎藤工と共演というのも熱いです。さらに歌唱シーンもピックアップされています! 必見です!

伊藤沙莉の話をほとんどしていません。このドラマでは脚の不自由なハルをナチュラルに演じています。ヨシオに突っ込んだりして、恋多いシロウやわかりづらいヨシオを引っ張って、物語を進める役割なような気がします。

オススメなドラマシリーズですが、正直わちゃわちゃし過ぎるこのペンションには泊まりたくないですね。


ブルーアワーにぶっ飛ばす

30歳でCMディレクターをしている砂田は、東京で日々仕事に明け暮れ、理解ある優しい夫もいて、充実した人生を送っているように見える。しかし最近は、口を開けば毒づいてばかりで、すっかり心が荒んでしまっていた。そんなある日、病気の祖母を見舞うため、親友の清浦とともに大嫌いな地元の茨城に帰ることになった砂田は、いつものように清浦と他愛ない会話をしながら茨城に向かうが、実は今回の帰省に清浦がついてくるのには、ある理由があった。

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今回紹介する作品の中では、結構インパクトあった作品です。夏帆演じる砂田は、ちょっと痛い感じ。対照的に親友の清浦(シム・ウンギョン)は、発言も行動も自由奔放。砂田がなり得なかったキャラクターです。シム・ウンギョンって知らなかったんだけど、この映画では魅力爆発しています。

映画的には大きなネタが一つ仕込まれています。隠すつもりはないようなので、予告編だけでも推測できると思います。夏帆の荒み方とか、田舎の閉塞感とか、心痛む場面も多いですが、シム・ウンギョンに見惚れていると楽しめるかと思います。

で、エンドロール見ていたら伊藤沙莉を発見。「どこにいた⁈」ってくらい気付けなかったです。確認すると、田舎のスナックで歌っていました。いろんな映画出すぎですね。


ボクたちはみんな大人になれなかった

1995年、ボクは彼女と出会い、生まれて初めて頑張りたいと思った。彼女の言葉に支えられ、がむしゃらに働くボクだったが、1999年、彼女はさよならも言わずに去ってしまう。ボクは志していた小説家にはなれず、ズルズルとテレビ業界の片隅で働き続ける。2020年、社会と折り合いをつけながら生きてきた46歳のボクは、いくつかの再会をきっかけに“あの頃”を思い出す。

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森山未來が、21歳から46歳までの主人公佐藤を演じています。20代は流石にどうかと思いますが、大きな違和感はありません。テレビのフリップや映像作りを生業にしてしぶとく生き抜いているイメージ。ある意味冴えない感じに歳を重ねた感はありますが、やっぱり東京だしテレビ業界なんだよね。自分を振り返ってみると、もっと地味だったし、映画に切り取れる場面は少ないような気がします。彼の半生を現在から過去へと遡っていくのがポイントで、「なぜこうなってしまったのか」の種明かしが少しずつされていきます。

いくつかの恋愛も描かれますが、若い頃文通(!)で知り合ったのが伊藤沙莉演じるかおり。サブカル好きな、普通が嫌いな、ちょっと変わった女の子です。オザケンとか懐かしいですね。かなり昔に別れてしまいますが、佐藤がググってみると、普通に結婚していたりします。

佐藤はかおりに再会しようとしたりはしませんが、未来に希望が持てた時代の、忘れられない存在なのでしょう。実は物語上、佐藤のことを密かに思いづけていた人もいます。それも切ないですね。


ちょっと思い出しただけ

2021年7月26日、この日34回目の誕生日を迎えた佐伯照生(池松壮亮)は、朝起きていつものようにサボテンに水をあげ、ラジオから流れる音楽に合わせて体を動かす。ステージ照明の仕事をしている彼は、誕生日の今日もダンサーに照明を当てている。一方、タクシー運転手の葉(伊藤沙莉)は、ミュージシャンの男を乗せてコロナ禍の東京の夜の街を走っていた。目的地へ向かう途中でトイレに行きたいという男を降ろし、自身もタクシーを降りると、どこからか聴こえてくる足音に吸い込まれるように歩いて行く葉。すると彼女の視線の先にはステージで踊る照生の姿があった。
 時は遡り、2020年7月26日。照生は部屋でリモート会議をし、葉は飛沫シートを付けたタクシーをマスク姿で運転している。照生は誕生日の夜に誰もいない部屋で静かに眠りにつく。また一年遡り、誕生日を迎えた照生は、昼間は散髪屋で伸びた髪を切り、夜はライブハウスでの仕事を終えたあとに行きつけのバーで常連のフミオ(成田凌)とダンス仲間の泉美(河合優実)と飲んでいた。同じ頃、居酒屋で合コンをしていた葉は、煙草を吸いに店の外に出たところで見知らぬ男から声をかけられ、話の流れでLINEを交換することに。葉のアイコンを見た男が「あれ、猫飼ってるんですか?」と尋ねると、葉は「いや…今は飼ってないけど」と返し、続けて「向こうが引き取ったから」と切ない表情でポツリと呟く。彼女がLINEのアイコンにしていた猫は、いまも照生が飼っているモンジャだった…。

時は更に1年、また1年と遡り、照生と葉の恋の始まりや、出会いの瞬間が丁寧に描かれていく。不器用な2人の二度と戻らない愛しい日々を“ちょっと思い出しただけ”。

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いや、公式のあらすじが長いんですよ。そんなに説明しなくてもいいのに。簡単にまとめると、伊藤沙莉演じるタクシー運転手葉と、元バレーダンサーの照生(池松壮亮)の出会いと別れを、毎年の照生の誕生日を遡りながら定点観測していく、というストーリーです。でもそれって、「ボクたちはみんな大人になれなかった」と丸かぶりじゃないですか? どちらが先に企画出たのか分かりませんが、同じ伊藤沙莉で似たような映画って、ちょっとどうなの?って思います。

とは言え、コチラの方が2人の恋愛に焦点を絞っていたり、誕生日の一日だけを描いたり、各年に共通して登場する人物(河合優実、尾崎世界観、永瀬正敏など)がいたりと、わりと整理されているので見やすかったです。ラストも2人の接点を効果的に描いていたような気がします。

「ボクたちはみんな大人になれなかった」も「ちょっと思い出しただけ」も、青春時代の甘くて苦い恋愛や、怖いものなしだった若さや痛さなどをエモく思い出させてくれる良作だと思います。でも、明らかに内容かぶっているので、それを連続して鑑賞するのはオススメしません。伊藤沙莉映画出すぎ案件の意外な弊害かもしれませんね。

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