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歴女が観た「エイジ・オブ・サムライ」感想文!

Netflixの“おすすめ”に表示されて気になっていたこれ。カナダの制作会社が手掛けたこのドラマ仕立ての戦国ドキュメンタリーをやっと観ました。
歴女のはしくれとして、一言で感想を言うと。

「びみょーーー!」

史実と違う歪曲されてる、とかではないんです。
説明パートに登場する専門家達の言っていることは、いたってまとも。ほとんどが外国人研究者なのに、そこについては嬉しい驚きでしたが(専門家に失礼)。

では何が問題かと言うと、ドラマパート。制作者達の“サムライ”のイメージが・・違うねん、そうじゃないねん!

違和感1:主要登場人物のキャラ設定
(心の声)織田信長が野暮ったいし頭悪そう・・豊臣秀吉がシュッとしててむしろ信長っぽい・・徳川家康がチンピラにしか見えない・・明智光秀がひどい悪人ヅラ・・。
(解説)「鳴かぬなら・・」のくだりなんかをご存じない海外の皆さんが、各武将の功績を元に再現するとこうなるんでしょうね。「第六天魔王」の信長は粗暴なサイコパスで、「天下人」の秀吉は農民出身で猿とあだ名されたのに誰より気品がある。太平の世の礎を築いたのに家康にはオーラが無く、光秀は卑劣な裏切り者でしかない。私たちが知っている"あの"戦国武将達は登場しません。いきなり致命的・・。
(やたら活躍する伊達政宗と一瞬登場する武田信玄だけは、渋くてイメージ通り!)

違和感2:世界観が中世ヨーロッパ
(心の声)いくら戦国時代だからって、棺にも納めず薪を積み上げただけの祭壇に寝かせて火葬しないよ!胸に愛刀を抱かせて松明でいきなり着火しないよ!武将は薄暗い深い森の中でひっそり生活しないよ!武将はイスに座らないしベッドで寝ないよ!それより何より、大将は刀振りかざして先陣きって攻め入らないよ!
(解説)"うつけ"の信長が父の位牌に抹香を投げつける、で有名な葬儀がどう見ても仏式ではなく、ヴァイキング式、十字軍式です。そして出陣前に主従で握手しハグする姿から、視界も足場も全く確保できない山中での泥臭いソードバトルから、溢れ出る“ブレイブハート”感・・。もちろん大将は実戦参加型で、秀吉が一兵卒に交じって華麗な太刀捌きで敵兵を倒す姿はかなり新鮮でした。そして夜はほぼ野宿みたいな本陣にて皆と焚火を囲む。・・新しいです。

違和感3:ワイルド過ぎるサムライ達
(心の声)オフだからって、髪振り乱して着物はだけさせてダラダラしてたのかなぁ?癇癪起こして「酒もってこい!」とか怒鳴ったのかなぁ?ウロウロ立ち歩きながらお酒飲んだのかなぁ?敗戦の知らせに激昂してちゃぶ台返しなんかしたのかなぁ?
(解説)もう、全員が野獣です。武士は、というかそもそも日本人は、気に入らないことがあっても大声上げてモノに当たったりしませんよね?怒りに任せて手紙破いたり机の上を無茶苦茶になぎ倒したりしませんよね?まさに首を打たれんとするその時に、恨みと軽蔑を込めて唾を吐いたりしませんよね・・?茶の湯で精神を鍛え、所作を磨いた品格ある武士は登場しません。

あと、違和感だらけのドラマパートの中で個人的に一番ガッカリしたのは、白装束の伊達政宗が命を賭けて秀吉に謁見するシーン。数ある戦国の逸話の中でも特に胸熱エピソードなのに。なのに衣装さん!なんでそんなちんちくりんの白い浴衣を着させたん・・?
政宗は伊藤英明が演じているのですが、男臭さの中に品性が見え隠れする感じが独眼竜(「片目のドラゴン」という意味、と紹介されていました)にハマっていて!惚れ惚れするような"伊達男"だっただけにもう、コントにしか見えなくて。本当に残念でした。

・・キリがないのでこの辺で。
色々言いましたが、良かった点ももちろんありました。

◎「信長は東洋のアレクサンドロス大王」。独創的で枠に捉われない考えをもって農民(足軽)を鍛え上げて武士とし、火縄銃の可能性にいち早く気づくと主戦力にした

◎あまりフィーチャーされてこなかった、信長が父・信秀から引き継いだ伊賀忍者との戦いが描かれていた

◎説明パートにて。勢力図にそれぞれの武将の家紋を使用、和紙風の画面の上で墨絵のように写真や動画が広がっては消えていく見せ方はかっこよかった

◎専門家達が日本刀を“史上最強の武器”、武士を“史上最強の戦士”と評していた

・・少ないですか?良かった点。

まとめると。
「他国の歴史や文化を描くならもっとちゃんと学んでリスペクトをもって制作してほしかったけど、世界に"戦国時代"が優れたコンテンツと認識され始めたのは喜ばしいことだ」

そうなんです。戦国時代って、ネタ切れ感の否めない欧米の映画スタジオにとっては、コンテンツとしてめっちゃ有望株だと思うんです。
本作ではまったく触れられていなかったけど、絢爛豪華な桃山文化は海外でも受けがよさそうだし。本作では「ほとんど誇大妄想」「利己的行為の極み」ってバッサリいかれた秀吉の朝鮮出兵、実は信長から受け継いだ壮大な世界戦略だったのでは、って説もドラマチックだし。信長に仕えた"ブラックサムライ"こと弥助も同じNetflixで映像化されているし。

しつこいですが、歴女としては「ぜひ観て!」とは言いにくいこの「エイジ・オブ・サムライ」ですが。今後、世界的に戦国時代がブレイクする期待を込めて、その先駆けの作品として観ておくのはいいかもしれません。

・・ぜひあなたの感想をお聞かせください!!!

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