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ガードナーの「自己革新」について学ぼう - ④自由のために組織は何をするべきか

さあ、土曜日だ。
土曜日は、ガードナーの「自己革新」を読み解いていこうと思っている。
先週の記事の冒頭にも書いたが、これから書く一連の記事には、ボク自身のバイアスがかなりかかるだろうと思っていて、ガードナーが本来書いていたものと若干乖離するかもしれないことを予めお伝えしておく。

先週は「束縛の中の自由」というタイトルで書いた。
組織の中で、ひとりひとりが自由な発想で、自分の仕事に価値を感じることが革新につながる…という内容だ。今日ももう少し「組織」としてどうすべきか?というお話にお付き合いいただきたい。


加工されたデータ

「もしある組織が圧倒的な力強さと柔軟性のうち、どちらかを選ぶことになったら、圧倒的な力強さを選ぶのは避けられないだろう。」

組織は、考えうるすべての状況に対応するために、どんどんと部署を増やしていき、組織内の仕組みが複雑化していく。そうなると、もう二度と元には戻れない。単純化することは難しくなってしまう。組織が小さいことの利点は、意思疎通の簡易さ、柔軟性、多様性、不測の事態への対応性などだが、組織が巨大化すると形式や手続きなどの表面的なものを尊重するようになる。

組織が大きくなると、トップにいる人たちが直接的な経験をすることが少なくなり「加工された」データに依存するようになる。現場で実際に起きていることは、いくつかのレポートラインを通過するうちに、抽出され、選別され、集約され、編集され、コード化され、統計的に表現され、一般論化され、提案の形にまとめあげられてしまう。

情報処理システムの問題点

ガードナーがこの本を書いたのが60年ほど前だが、彼は1960年代当時に情報処理システム(現代だといろいろなBIツールが出回っているよな)の問題点について警鐘を鳴らしている。

情報処理システムは、ある特定の種類のデータを規則正しくふるい落としてしまう。そこで省略されたり歪められたりした情報は、文字や数字で表現されることはない。そしてデータが急激に増加し、複雑化したことによって、トップ(や上層部)に座る人たちが、そういったツールを使うことに長けた人になっていく。それはそれでやむを得ないことだ…

そういった情報処理システムがふるい落としてしまうもの。
それは「感覚」「感情」「情緒」「直感」などの非合理的なニュアンスだ。そして、それが組織の本当の姿だ。

経営者やアナリストは、定期的に抽象化の世界から外に出るべきだ。そして処理されてない「現実」を恐れずに直視しなければならない。ガードナーは「将軍であれば前線に行って過ごす時間を持つべき、研究開発の責任者であれば、研究所に行って自ら研究すべき、営業マネージャーであれば、定期的にサンプル商品を持って顧客訪問をするべきだ」と言っている。

情報処理システムはとても便利だが、それは不完全なものであると。

トップは何をするべきか

組織が大きくなると、外見を整えることにお金や労力を費やすようになり、組織は硬直化し、革新とは程遠い方向に進んでしまう。しかし、どんな大きい組織も「イノベーション」に取り組みたいと考えている。そうすると、「イノベーションを起こす活動をすること」が目的の部署が誕生する。しかし、イノベーションが必要なのは製品やプロセスではなく、組織自身なのだ。

一部の経験豊富な(そして優秀な)経営者は、思い切った組織改革をすることで、一時的にイノベーションが起きる可能性があることを経験則的に知っている。組織内で人が自由に移動(異動)することで、組織が流動化し、部門間の壁を取り除き、部門間の対立を弱め、情報やアイディアをブラッシュアップさせる効果がある。

そして、もう一つはコミュニケーションだ。
最近では、組織移動しなくても、組織内の誰とでもコミュニケーションを取ることができるツールも多い。ただ、そういったコミュニケーションツールを上手く使えている組織は少ない。ボクが見てきたところでは、だいたい決まった誰か(往々にして組織のトップ)が思い立ったときにチームのトークルームの中にショートメッセージをポストし、(本来インタラクティブなツールなのにも関わらず)一方向のコミュニケーションになっている場合が多いと思っている。

硬直化しないために個人でできること

現代の世界の良いところは、ひとりの人が同時に複数の組織に属することができることだ。たとえば、仕事以外に趣味でツーリングのチームに所属していたり、ボランティアのビーチクリーニングに参加したり、副業もそうだ。そして、仕事として複数の組織に少しずつ関わっているのが「専門職」である。例えば、弁護士や会計士、コンサルタントなどもそうだろう。

それは、複数の組織をまたいで情報やアイディアの交換をすることができるというメリットがある。そして、日本全国(場合によっては世界中の)各地の人たちとの交流ができるのであれば、多様性を推し進める効果もある。そして組織力を高めることで、大企業に対する発言力を持つことも可能だ。

ただし、専門職の部分で言うと「組織の中に蔓延る力学」の外で活動できることが専門職の強みであり、新鮮なものの見方ができる理由である。なので、専門家(これは士業、コンサルタントだけに限らず、業務の受託事業者であっても)は、常に専門性を研ぎ澄ます努力をすることが重要で、その圧倒的な専門性を以って、組織に(迎合することなく)敢然とモノを申さなければならない。

(続きはまた来週)


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