歯科恐怖症の私、2年ぶりの歯科、新しい歯科医院へ

2年ぶりに歯科に行ってきました。
過去10年、隣県の大学病院で全身麻酔(1回)か静脈麻酔(4回ほど)による治療を受けてきた私は、今回、自分が住む町の歯科医院に行きました。

病院を変えることにした理由は、ずっと治療を担当してくれた先生の退職です。
2週間前、「左下の奥歯に違和感があります。診ていただきたいのですが」と予約の電話を入れると、予約が以前よりも取りづらくなっていること、先生から自身の退職を告げられました。
思わず「私はどこで治療をすればいいのでしょうか」と口から出てしまいましたが、先生をさぞ困惑させたと思います。

1カ月先、11月上旬に大学病院での予約を入れてから、大袈裟でもなんでもなく、ただ絶望した私。
歯科治療が怖い上、そこまで電車とタクシーを乗り継いで向かうのも怖い。
「歯医者に行かなくても死にはしない」と言われたとしても、何の慰めにもならない。

予約の電話をし、絶望し、親に相談し、消えたい気持ちと今を変えたい気持ちがごちゃ混ぜになり、その日は1年半ぶりに大学病院へ向かう電車に乗り込みました。
なんとかしたかった。

落ち着いた気持ちの波と不安な気持ちの波が小さく繰り返す中、大学病院のある街へ行き、そして戻ってきた、その夜。
ネットで何の気なしに「歯科 静脈麻酔」と検索すると、私が住む町に、私が大学病院への紹介状を書いてもらった当時、ないと思われた「全身麻酔・静脈麻酔で治療できる歯科医院」がヒットしました。
しかも家の最寄りのバス停から10分もかからない距離に。
驚きました。
翌朝、予約の電話を入れました。

それから約2週間後、日付が変わって昨日、受診してきました。
歯医者に行く前の日は眠れるか心配で心配で仕方ないのですが、遅寝遅起きが染みついた体を睡眠導入剤の力で修正できたこともあり、1時30分頃に寝て、7時間睡眠。
予約は10時45分だったので、9時30分頃にアルプラゾラム0.4mgを服用し、バスに乗り込みました。
バスが来るまで10分ほど、なんとも言えず、なんとなく胸がざわつく待ち時間があったので、とりあえず180秒、ゆっくり呼吸しながら、秒を数えました、目を瞑って、心を落ち着かせるために。

新しい歯科医院。
「どうなるのだろう」と不安な気持ちになるのは当然のことなのでしょう。
まず真っ先にトイレがどこにあるのかを探しました。
初診時の問診票を書き終えてから、ざわざわする心を、背筋を伸ばしながらのゆっくりとした呼吸、吐いて吸って吐いての繰り返しで、整えました。

11時少し過ぎ、名前を呼ばれ、治療を行う、歯科おなじみのチェアに座りました。
歯科恐怖症であることは予約時に伝えていたので、新しい先生からはまずじっくり話を聞かれました。
歯科治療が苦手になったのはいつからか、服用している抗不安薬を飲むようになったのはいつからか、不安障害・パニック障害と診断されたのはいつからか、大学病院で全身麻酔・静脈麻酔をするようになったのはいつからか。
おそらく20分くらいは諸事情を話すことで流れていきました。

この問答の中で私も自分自身のことがよく分からなくなっていることに気付きました。
過呼吸を初めて起こしたのは大学に入る前、2007年ですが、メンタルクリニックに通い出したのは8年ほど前で、もちろんそれより前は何の診断もなかったこと。
大学時代の前半は普通に歯科治療を受けた記憶はあって…歯科で初めて過呼吸を起こしてからは口の中を開けることはできても、嘔吐反射が酷く、住む町の歯科ではお手上げだったことは思い出せても、過呼吸と普通の歯科治療ができなくなったことが完全には結びついていないような気がして。

じっくり事情を聴かれた後、行ったことは「口の全体を診る」「違和感がある歯を叩く・空気を当てる」「フィルムを口に入れないレントゲンを撮る」「歯周ポケットを測る」。
口の中が乾いているとえづきやすいので、こまめにうがいをしながら、行いました。
チェアの上で10分から15分くらいは口を開けていましたが、えづくことなく、落ち着いていました。
よく眠れていて体調が良かったこと、アルプラゾラム服用から2時間後で不安が小さくなっていたこと、先生と話すことで緊張が緩和されていたことが要因だと思います。

チェアの上で口を開けながら、この場をやり過ごす方法として、頭に浮かんだのは「寝ようとすること」。
アルプラゾラムでぼんやりする準備が万全だったので、うまくやり過ごせました。

先生からは「小さな虫歯はちょいちょいありますが、今すぐどうこうしなければならないことはありません」「歯は基本的にしっかりしています」「歯石の除去や口内のレントゲンなど、できることから少しずつやりましょう。日帰りの全身麻酔を行うなら、具体的に何を行うか考えていきましょう」ということを言われました。
初診は最初から最後まで大学病院と同じ水準、それ以上の、丁寧で親切で慎重なものでした。
チェアの上で泣きそうになりました、ありがたくて。

私が気にしていた「左奥下の違和感、普通にしている時は何もないけれど、温かい物を食べると、微妙に染みる気がする違和感」は問題ないようでした。
仮に問題があったとしても、家の近所で治療してもらえる病院があることに私は安堵したのですが。

今後の心配、例えば午前中の全身麻酔前の空腹が過呼吸のトリガーにならないかなどありますが、とりあえずは歯科を受診できたこと、近所の歯科で診てもらえることの喜びで締めたいと思います。
大学病院へは予約取り消しの電話をし、麻酔歯科治療を行っている最中だったであろう先生への感謝の伝言を託しました。
いつかお礼を伝えられたらと思います。

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