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映画作家 田中登

映画を観尽くし、日活ロマンポルノに行きついたのが十数年前・・・。石井隆監督が脚本等で携わった『天使のはらわた』シリーズから始まり、神代辰巳監督作品を池袋新文芸坐で鑑賞する。その中で『女地獄 森は濡れた』のエログロの境地に驚愕する。そして、『丑三つ村』で田中登監督を知る。前々から田中登監督の『㊙色情めす市場』を鑑賞したかったのだが、念願かない渋谷シネマヴェーラにて鑑賞したのが三年前。

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『㊙色情めす市場』

大阪のドヤ街でしたたかに生きる娼婦トメ。ドキュメンタリーのように西成の労働者たちの姿を活写しながら、その街でふわふわと宙に浮いたように生きてゆくトメの天真爛漫な姿は悲壮感や絶望感を超越している。そして、トメが重度の知的障害である弟を慈しむように抱き合う濡れ場を観たとき、田中監督が描く世界はボーダーレスで信念を貫いていると感じた。


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『人妻集団暴行致死事件』

今作品では、心臓が悪く軽度の知的障害のある妻がレイプされ殺される。その妻の亡骸を室田日出夫男氏演じる主人公が風呂場で清めるシーンが脳天を突き抜けるほどの衝撃である。妻の体を慈しむようにあらい、お湯をはった風呂に一緒に入り、抱くところまで田中監督は演出している。ここまで人間の絶望を描き切る手腕に心を強く揺さぶられた。この風呂場のシーンは、一生忘れることができないであろう。


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