橋本そら

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橋本そら

小説とエッセイを書いてます/コラムのようにサクッと読める【日刊ボンクラ東京】を週二回で連載中です。 /人と人が繋がり生まれる温かさが、創作の根元にあります。東京の下町とお酒の場、古本屋が大好きです。

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  • 【日刊ボンクラ東京】マガジン

    毎日更新している1話完結の短編小説、【日刊ボンクラ東京】のまとめマガジンです。 「都会ど真ん中より、少しズレた東京」の町を、いろんな角度でお楽しみください。1話400字程度です。

  • 橋本そらのオススメ小説まとめ

    友人のK君によれば、これがオススメらしいです。

最近の記事

【400字小説】新宿駅、南口、交差点

 潜水メットを被った女をここら辺で見なかったか? メモ用紙(場所はあのハンバーガーショップの前だ)  なぜ僕に聞く?  あいつを追わなきゃならないのさ。  もちろん見たさ。あんな格好なら誰でも見る。  僕は彼女の尻を一生忘れないだろうね。  ジャンプスーツを着ていたか?  ああ。 メモ用紙(信号が青に変わる)  やっぱり…。俺はな、俺はあいつにペットの金魚を盗られたんだよ。アーノルドっていうんだ。  さぞ美しい金魚だったんだろうね。  いや、シワシワの老い

    • ずいぶんと遅刻した気がする、春の到着。 予想外の暑さと花粉の攻撃で苛立ちを覚えると、今年もこのイライラが来たのかと思う。恒例行事。

      • とあることがきっかけでジャズを少しずつ勉強中。 ロックはかなり聴いているのですが、また違う面白さがあるなあ、としみじみ思っております。 読書に合うんだなこれが。

        • 仕事が休みの日に、好きなものにお金をじゃぶじゃぶと使うのは気持ちがいい。 古本を買ったり、酒を飲んだり、美味しいカレーを食べたりする。 罪深いぞ、と思う。快楽だなあ

        【400字小説】新宿駅、南口、交差点

        • ずいぶんと遅刻した気がする、春の到着。 予想外の暑さと花粉の攻撃で苛立ちを覚えると、今年もこのイライラが来たのかと思う。恒例行事。

        • とあることがきっかけでジャズを少しずつ勉強中。 ロックはかなり聴いているのですが、また違う面白さがあるなあ、としみじみ思っております。 読書に合うんだなこれが。

        • 仕事が休みの日に、好きなものにお金をじゃぶじゃぶと使うのは気持ちがいい。 古本を買ったり、酒を飲んだり、美味しいカレーを食べたりする。 罪深いぞ、と思う。快楽だなあ

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        • 橋本そらのオススメ小説まとめ
          2本

        記事

          毎日更新はめちゃくちゃ大変だと思い知る。 文章書く習慣のために、隔週2回、投稿予定です。 基本的に素人の文章です。 面白そうだな、と思ったら覗いてみてください。 (ボンクラ東京という連載をしてますが、けっこう名前が気に入ってます。自分が盆暗気味なので) では。

          毎日更新はめちゃくちゃ大変だと思い知る。 文章書く習慣のために、隔週2回、投稿予定です。 基本的に素人の文章です。 面白そうだな、と思ったら覗いてみてください。 (ボンクラ東京という連載をしてますが、けっこう名前が気に入ってます。自分が盆暗気味なので) では。

          【400字小説】冬の雨似合う匂い

           珈琲がカチャンと置かれる。 「おまちどうさん」  そう言って、ジェーンは少し笑う。  私はリュックから出しかけた本を戻して、カップを持ち上げた。  コーヒーの香りを嗅いで、わかったような顔をしてみる。  そして、一口すする。  ほっ、と息をついた。  古本とコーヒーは、どちらも冷たくて、ざらりとした匂いがする。だから、雨によく似合う。  店のスピーカーから好きな曲が流れてきた。 「L.A.ウーマン」  私はつぶやく。 「なんで知ってるの」  本を読んで

          【400字小説】冬の雨似合う匂い

          【400字小説】ずる休みMonday

           休む理由なんて、なんでもいいよね。  洗面台で化粧をしているとき、ふと思った。  だから今日はずる休みだ。  そうと決まれば話は早い。  上司にメールをして、髪を結えたら、着替えをして、香水を肌にまとわせる。  そこまではよかった。  まあ、そこからも別に悪くはなかったけど、簡単に言えば、野球ボールがぼくの部屋のガラスを割って中に入ってきた。 「笑える。漫画みたいね」  なんて、独りごとを言ってみる。   そうしたら、坊主頭の少年がうちに来て、ぼくに謝ってくれ

          【400字小説】ずる休みMonday

          【400字小説】酒を交わすと僕らは愛を語る

           ひとりでいるときの酒はジントニックと決めている。  冷蔵庫に常備しているジンを注いで、炭酸水を少しだけ入れる。そこに切っておいたライムを絞って、へたれたそいつをコップに沈ませる。  簡単で、美味しい。  でも、ぼくが大好きな酒は、みんなで飲む酒だ。  休日の夜が特にいい。  ぼくは、ぼくが大好きなみんなと、大きな声で笑いながら、喉に流し込むビールが、いちばんおいしい、と思う。  こんなに素敵なことは他にないんだ、と思ってしまう。  ずっとずっと幸せで、ぼくは酒

          【400字小説】酒を交わすと僕らは愛を語る

          【400字小説】休日の定期券【日刊ボンクラ東京3号】

           ついに、土曜日がきました。  いつもなら出社している時間に起きて、遅めの朝ごはんを食べます。洗濯機を回して、軽食を包みました。  そのあとは、通勤定期券と小さなリュックで中央線に乗りこみます。  車内は、平日よりもいろんな人で賑わっていました。  たくさんの小さい子、大きな花束を抱える男の人や、ロリータファッションに身を包む女性…。  私はそういう人達が東京のまんなかにぞろぞろと集まるのが、嬉しくて。  仕事とかじゃなくて、みんなが好きなことで、この電車は動いている

          【400字小説】休日の定期券【日刊ボンクラ東京3号】

          鮭ハラ【日刊ボンクラ東京2号】

          「では、マニュアルの30ページを開いてください」  研修担当がそう言ったので、僕らはファイルに綴じられたマニュアルをめくる。  眠い。  僕は目をこすりながら、わざとらしく首を振った。少しでも抵抗している意思を示せば、やる気は伝わるだろうか。 「お昼のあとだから眠いのわかるけど頑張りましょうねー」  頑張れるわけがないだろ、と思う。  マニュアルには「ハラスメント」の文字。  お昼を食べたあとの眠気に共感してくれない上司は、何かしらのハラスメントにならないのか。  

          鮭ハラ【日刊ボンクラ東京2号】

          最近、よく思い出しては勇気づけられているセリフをひとつ。 『焦ってはいけません。こつこつ、こつこつです』 ー「羊と鋼の森/宮下奈都」p.21 ピアノを調律する仕事に就いた主人公。彼を導いた板鳥さんのセリフでした。 今日もいい一日になりますように。 橋本そら

          最近、よく思い出しては勇気づけられているセリフをひとつ。 『焦ってはいけません。こつこつ、こつこつです』 ー「羊と鋼の森/宮下奈都」p.21 ピアノを調律する仕事に就いた主人公。彼を導いた板鳥さんのセリフでした。 今日もいい一日になりますように。 橋本そら

          新聞売り【日刊ボンクラ東京1号】

           彼が話しかけてきたのは、僕が新聞を読み終えて、のり巻きみたいにした時だった。 「それ、読みました?」 「ああ、読んだよ」  僕は少し戸惑いながら返事をした。  声がやけに響き渡っているような気がする。ここは人でいっぱいの朝の通勤快速だ。 「よかったら200円でもらえませんか」  彼は紫のビーニーキャップがよく似合う青年だった。僕と同じくらいの歳だろうか。 「金はいいよ。どうせ捨てるものだったし」  僕はそう言って、彼に新聞を丸めたまま渡した。 「え、いいんすか

          新聞売り【日刊ボンクラ東京1号】

          「めんどくさい」と「やりたくない」のきもち。その違いについて【検索すればいい話】

           今日から、思ったことをつらつらと書いてみようと思う。  旧TwitterやInstagramといったソーシャル・ネットワーク・サービスは、苦手だな、と気づき、Twitter以上の文字数で、Instagramより具体的に書けるnoteというプラットフォームを、貯水槽として選ぶに至る。  しかし、見たい人だけ見ればいい、とか、わかるやつだけわかればいい、などと言って、自分勝手な創作をするのは、このような私的な作文においても、あまり「いい」とは言えない気がする。  第一に、

          「めんどくさい」と「やりたくない」のきもち。その違いについて【検索すればいい話】

          デジタル・バレンタイン 【毎週ショートショートnote 】

           今日は僕が「本当のカノジョ」を購入してから、はじめてのバレンタインだ。 「アイちゃん、今日はバレンタインなんだ。僕にくれるチョコはもう用意できてるかい」  モニターの中の彼女がうなずく。その顔は僕の好きなアニメのヒロインが素になっている。 「べ、別にあんたのために用意したんじゃないんだからねっ」  彼女が言った。それは僕の好きな声優の声に、限りなく近かった。 「ちがうだろ。そこはデレだ」  僕は呆れた。  バレンタインの発言パターンは「デレ」に固定したはずだ。

          デジタル・バレンタイン 【毎週ショートショートnote 】

          【エッセイ】この世って、毎日変わってるんですね。#1

           今日は仕事で町田へ行ってきました。  しばらくぶりだったんですが吉祥寺ほどうるさくなく、八王子よりガヤガヤしてるなぁという印象。 (住んでいるまち以外を知らないせいか、こういう感覚が同世代と比べて、さびついている感じがします…)  仕事終わりに駅周辺をぶらぶら。  改札を出てすぐの広告にブックオフの文字。この町田中央通り店は日本で一番売れてるらしいですよっ。すごーい。それなら寄ってみてみましょ、という感じで入ってみました。  店内は外観よりも広くて、店員さんがみんな忙

          【エッセイ】この世って、毎日変わってるんですね。#1

          【短編小説】ヤマダ・シモンの汚れなき世界

           空の上から降ってきた星間列車が東京タワーの先に突き刺さったのは昨日のことだった。  そして今日、本体から分離した列車の一部が落下し、二人の男性が死亡した。  それにも関わらず携帯電話のスクリーンを走るニュース・フィードはあっという間に誰かのゴシップで埋まってしまい、人々はそれに夢中になっていた。もう誰もこの事件を話題にしていない。   僕は健全な男子高校生だから、影響力など微塵もないが、声を大にして訴えたい。「報道は腐っている!」と。  それに加えて、エイリアンの侵入だ!

          【短編小説】ヤマダ・シモンの汚れなき世界