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いじめられていたあの頃の私へ

小学校四年生。
「いじめ」という言葉が社会問題になり、
「シカト」という言葉を私が初めて耳にした頃。

朝、学校に行って友達におはようと挨拶をしても
誰も返事をしてくれない。
昨日まで仲良く遊んでたのに。
何を聞いても答えてくれない。
それどころか友達同士で私のことを見ながら笑う。

胸がギュッとして、顔が熱くなって、
下を向いて涙をこらえるしかなかった。
先生の話なんて頭に入らない。

私、何かしてしまったのかな。

なんとか学校を終えて一人で帰る。
昨日までは仲良しの女の子たちと帰っていた。

夜、布団の中で泣きながら考える。
やっぱり私、何かしちゃったんだ。
だったら謝ろう。
ごめんね、って言おう。
ぜんぜん眠れない。
ずっと、明日クラスに行ってから自分が謝罪する言葉を
シュミレーションしていた。

翌日学校に行ってもやっぱり誰も話してくれない。
昨日の夜のシュミレーションが虚しい。
また、下を向いて涙をこらえながら一日を終える。

私の上履きがゴミ箱に捨てられていることも何度かあった。
そんな日々が数ヶ月続いた。

すると一人の女の子が
「今日、家に帰ってから待ち合わせして4人で遊ぼう」と
誘ってくれた。
クラスのリーダー的女の子だった。
私はうれしくなって急いで家に帰ってランドセルを置いて
待ち合わせ場所に行った。

そこにはリーダーの女の子の他に
私といつも仲良くしていた2人もいた。

でも、何かおかしい。
私が何を言っても無視される。
4人でいるのに、私だけ無視される。
そう、私を「シカト」する遊びなのだ。
嫌がらせのために呼ばれたというわけだ。

ショックで吐きそうになりながら、
泣くのを精一杯こらえて
「もう帰るね」と言って家まで走った。
そこから数日のことはまったく覚えていない。

しばらくしてリーダーではない、
仲良くしていたはずの2人から
「ごめんね」と謝罪があった。
リーダーの子に言われてシカトした、という。
「あの子、なんかムカつくから」を理由に
シカトしようとなったそうだ。
しまいにはわざわざ私を呼び出してまで。

いいよ、と許したけど私は傷ついたままだ。

どうして言われた通りにしたの?
友達なのに?
私は友達じゃないの?

その2人とは小学校を卒業して、
就職しても年に数回は会っていた。
謝罪の後は普通に友達としてお互い接していた。
みんな過去のことは忘れているらしい。

でも、私は何十年経った今でも
あの胸がぎゅっとして全身の血がひき、
頭がぼーっとして倒れそうになる感覚、
「どうして、どうして」とそれしか考えられない感覚を
鮮明に思い返す。

いじめを受けていた数ヶ月はどこにいても何をしても
無視されて嘲笑われていることで頭の中がいっぱいだった。
寝る前の意味のないシュミレーションも止められなかった。
クラスで過ごす時の自分の一挙手一投足が批判されるのではないかと
動くのさえ怖かった。
ずっと脳みそも手足も痺れているようだった。

親にはこのことを言えなかった。
私が友達を怒らせてしまったのかもという気持ちが
あったからかもしれない。
私がいけないんだ、だってあの子達がそう言ってるもの。
親にまで責められたら私はどうしたらいいの。

あの頃の私に言ってあげたい。

あなたは悪くない。
悪い友達からは離れなさい。
自分を殺して付き合うのは友達じゃないよ。
友達なんていなくてもいいんだよ。
世の中にはもっと素敵な居場所があるよ。


あの時の傷はケロイドになって
今でも時々ひきつっては
存在を思い起こさせる。
もう治ることはないと思う。

去年の末に、どうしてもおかしいと思うことがあって
2人との関係を完全に絶った。

さようなら、さようなら。 

心の中で4年生の私を抱きしめる。


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