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夏の夜の夢

『夏の夜の夢』
A Midsummer Night’s Dream
ウィリアム・シェイクスピア
William Shakespeare
初演 1595年頃

ライサンダー (ハーミアとの恋を禁じられ) 
悲しいかな! 物語でも歴史でも、
今まで読み、聞いたかぎり、
まことの恋の筋道はすらすら
進んだためしがない。〔第一場〕

Ay me! for aught that I could ever read,
Could ever hear by tale or history,
The course of true love never did run smooth.

恋人たちの気まぐれ、心の変わりやすさを主題とした喜劇。創作年代も初演もはっきりとはしていない。愛と結婚が主要なテーマになっていること、歌や踊りが多く余興として楽しい芝居であること、シェイクスピアの他の作品に比べて短いことなどから、祝婚の催しによく採用されていた作品。「Midsummer Day」とは、6月24日。洗礼者ヨハネの祝日であるとともに、夏至祭の当日であり、「Midsummer Night」はその前夜あるいは当夜を指す。当時の人々は草花や灯火を飾り、焚火や行列なども楽しんだらしい。精霊がもっとも活発に横行する時とされ、恋占いなども行われたことから、これらの背景に相応しい作品と言えよう。
作品中の恋人たちは時折、恋愛の相手を変えるが、支離滅裂で不実なのは彼らのせいではない。妖精が持つ「恋の惚れ薬」だけのせいではない。
・・・恋は不合理なものである。

主要登場人物
シーシアス アテネの大公
ライサンダー ハーミアに恋する若者
ディミートリアス ハーミアに恋する若者
ポトム 織物職人
ヒポリタ アマゾンの女王
ハーミア ライサンダーに恋する乙女
ヘレナ ディミートリアスに恋する乙女
オーベロン 妖精の王
ティターニア 妖精の女王
パック オーベロンの小姓

アテネの大公シーシアスは4日後にアマゾンの女王ヒポリタとの婚礼を控え、その日を心待ちにしている。その御前にイジーアスという老人が娘のハーミアとその婚約者のディミートリアス、恋人のライサンダーを引き連れて現れ、娘が親の決めた結婚に従おうとしないと訴える。2人の青年は共にハーミアに夢中だが、ハーミアが選んだのはライサンダーで、父親が選んだのはディミートリアスだというわけである。シーシアスは父親イジーアスの決定を支持して、「ハーミアはディミートリアスと結婚するか、神殿に仕えて独身の誓いを立てるか、死刑になるか、のいずれかを選ぶべし。」との裁断を下す。この判決に我慢のならないライサンダーとハーミアは、駆け落ちの計画を立てる。ふたりは親友のヘレナにその計画を打ち明けるが、ヘレナはもとはディミートリアスの恋人で、ヘレナの方はディミートリアスが心変わりをした後もひたすら彼を愛していた。ヘレナはディミートリアスにハーミアたちの駆け落ちを知らせることにする。シーシアスとヒポリタの婚礼を祝して6人の職人が劇をしようとしていた。その練習をするために、職人たちが森に集まる。その森とは、ハーミア、ライサンダー、ディミートリアス、ヘレナが約束して集まる場所。また、妖精たちも夏の祭に出てくる場所でもあった。妖精たちの王オーベロンは今のところ、妃ティターニアと喧嘩中である。・・・かくして、10人の人間と妖精たちは、夏至の夜に森へ出かけていくことになる。

いたずらな妖精パックは「恋の惚れ薬」を持っている。これはキューピッドの矢が当たった紫色の花の汁で、眠っているものの瞼に塗ると、その人は目覚めて最初に目に入ったものに忽ち恋をしてしまうという薬であった。

ヘレナ (恋人ディミートリアスへの移り気を嘆いて) 
恋は目で見ず、心で見る。
だから、絵に描かれたキューピッドは
いつも目隠しをしてるんだわ。
恋の神様には判断力もない。
翼があって目がないのは、
無分別でせっかちなしるし。〔第一場〕

Love looks not with the eyes,
but with the mind.
And therefore winged Cupid painted blind.
Nor hath Love’s mind of any jugement taste,
Wings and no eyes figure unheedy haste.


クラシック音楽
『夏の夜の夢』(メンデルスゾーン)
シェイクスピアの戯曲『夏の夜の夢』いずれもが元になっている。
演奏会用序曲(作品21)および劇付随音楽(作品61)。
中でも第9曲の『結婚行進曲』は有名である。

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