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一口食べるのに一苦労

父はバイタルサインが落ち着いている日には、車椅子に乗って30分から1時間程デイルームで時間を過ごすのが日課になっていました。



「何か食べさせてあげたい。」母がそんな事を言うようになりました。その気持ちはよく分かります。しかし父の病状や理解力、誤嚥のリスクなど色々と問題があるんじゃないか?と話しました。



母はやれることはやってみたいという気持ちが強く、少しでも可能であるならばと、私は看護師さんに相談してみました。看護師さんはその旨を主治医に相談してくれ、プリンやゼリーならば大丈夫と許可してくれました。



車椅子に乗車し、買ってきた小さなプリンを看護師さんが食べさせてくれます。私は「プリンだよ!」「口開いて!」と一生懸命声を掛けていました。食事が中止になってから1ヶ月ちょっと経っていたので、食べることを忘れてしまったのでしょうか?その日は一口食べるのに10分近くかかりました。口に入れても食べ物の認識ができていないのか、なかなか飲み込むことが出来なかったのです。



「今日は初日だから、難しかったけど無理せずやっていきましょう。」看護師さんが優しく声を掛けてくれました。



これは家族の自己満足か…?父は本当は食べたくはないのか…?その時考えましたが、何はともあれ始めたばかり。その日によって父の気分も違うので、継続していくことにしました。



翌日、別の看護師さんがストローでお茶を飲ませてくれるとゴクゴク飲んでいました。時間や、日によってモードが大きく変わってしまう父に「脳って不思議」と思わずにはいられませんでした。


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