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産みたくないと言ってもいいですか?〜命懸けの妊娠出産〜69

夫が帰ったあと助産師さんがきて

「空月さん!だいぶ起き上がっていられるようになったみたいなので尿道カテーテル外していいと言われました!今から外していきますね!」

「本当ですか!よかった〜、地味に痛くてきつかったんですよ。」

助産師さんに処置してもらい外してもらうと下半身がスッキリした。足を動かすのに邪魔がない!これだけのことだけど全然違った。

「ではこれからトイレは自分の足で行ってもらうことになりますがいろいろと繋がっているので呼んでください。付き添いますので。」

「わかりました。」

しっかりおしっこ出せるかな。前回の子宮筋腫の手術の時はカテーテルが取れたはいいがおしっこを出すことが出来ず膀胱がパンパンになって、泣きながらもう一度カテーテルを入れてもらい出すことが出来た。最初はお腹のどこに力を入れたらいいのかが分からないんだよね。不安になりながら数時間後、少し尿意を感じたくらいだがモニターや酸素に繋がれているし、起き上がるのも歩くのにも時間がかかるので早めに助産師さんを呼んだ。トイレに行くと少し時間はかかったがすんなり用をたせて安心した。しかし、トイレのたびにこれじゃ助産師さんに悪いな…と出来るだけトイレに行く回数は控えようと思った。

次の日の朝、検温と血圧を測りに来た助産師さんが

「今日は午前中に大野先生からオーダーでCTの予約が入っているので順番が来たら呼びに来ますね。車椅子で行くことになるんですが大丈夫ですか?」

「はい、昨日車椅子でGCUまで行けたので大丈夫だと思います。」

「あ、朝ご飯からパンではなくご飯になっていますよ。後で栄養士さんが来てくれると思います。」

「ありがとうございます。」

「では時間になったら呼びに来ますね。」

朝ごはんは白米になっていたがこれもなかなか喉を通って行かない。うーん、固形物しんど…。ゼリーなら食べることが出来た。

朝ごはんから何時間かして助産師さんが

「CTの時間が近づいて来たのでいきますね。」

っといって車椅子に乗って通ったことのない道を行き、エレベーターで降り、ドアを開けると外来のCT室の横に出た。ここの扉って病棟に繋がってたんだと感心していると程なくして呼ばれる。中に入ると放射線技師さんに私はバトンタッチされる。

「ゆっくりでいいのでこの台に寝転んでくださいね。」

今まで起き上がる時、寝転ぶ時、私は電動ベッドのリクライニングで寝起きしていたので急に平らなところに寝転んでくださいと言われてもどう寝転べばいいのか…。焦りながら痛くない体勢を取ろうとしていると放射線技師さんが頭を支えて寝かしてくれた。ホッと一息つくと技師さん側の扉から担当医の大野先生は出てきて、

「今からしっかり調べていきますね。気分悪かったらすぐに言ってください。私も付いてますので。」

といって部屋に戻っていきCTが始まる。お腹に乗せた錘がじわじわと傷を圧迫して痛いが検査は数分で終わった。

「お疲れ様でした。では起き上がってください。」

と放射線技師さんに言われたが、ほぼ自分の幅くらいの検査台、横を向こうにもこのままでは落ちる、だからと言って体を捻って横になることも難しい、腹筋に力を入れてそのまま起き上がるなんて絶対無理…。私はうーん、うーんと唸りながらどうにか起きようと試みたが無理だったため、

「すみません、どう起きたらいいのか分かりません。」

と正直に訴えるとあぁ、すみませんと体を支えて起こしてくれた。起き上がるにも人の手を借りないとできないとは…。申し訳ない…。

「では病室に帰りましょうか。」

と助産師さんが入ってきて私は病室に戻って、来ていた昼食を少しだけ食べた。今日も午後からリハビリかな?と思い過ごしていると携帯が鳴り、夫からどうですか?とLINEがきた。

『きょうは午前中にCTを撮ったよ。』

『なんで?』

『わからない。』

夫とやりとりをしている時コンコンとノックが聞こえた。はいと返事をすると若そうな男性医師が入ってきた。

「どうも空月さん。いきなりですが循環器科の波多野といいます。ちょっと心臓のエコーさせてもらってもいいですか?」

「はい。」

よくわからない医師の登場に戸惑いつつパジャマの胸を開ける。カラカラと運ばれてきた機械で心臓のエコーをしてるらしい。波多野先生は

「うんうん。」

と言いながら機械を滑らせる。循環器科ってなんだっけ?と思っているとまたコンコンとノックが聞こえはいと返事をすると大野先生は入ってきた。

「波多野先生、もういらしてたんですね。ガッツリ映ってましたね。」

「はい、もうガッツリでしたね。」

(何がガッツリ?映ってたって何が?)

疑問に思っていると波多野先生が

「えーっと空月さん、突然なんですが今、空月さんの肺の血管に血栓が詰まっています。おそらく一昨日意識を失われたってことですがその時にその血栓が心臓を通ったんだと思います。そしてそのまま肺の血管の右と左の肺に別れる前の太い血管に思いっきり血栓が詰まっています。心臓に詰まらなかったのは幸運でした。それでなんですが、少し今の状況は油断できない状況でして、この病棟では24時間ずっと付きっきりでモニター監視ができないので今からICUに移ってもらおうと思います。」

「え?ICUですか!?」

「はい、今はその方が安全なので。」

すると大野先生が

「ご主人さんに今連絡とれますか?」

携帯の時計を見ると休憩時間ギリギリ、ちょっと電話してみますと電話をすると夫がでた。

「何?もう休憩上がらなきゃいけないんだけど」

「いや、それが今からICUに行くらしくって大野先生が電話したいって。変わるね。」

大野先生は今私に説明したことを夫に説明している。すると波多野先生は

「では僕はICUで待ってますので」

と言って出ていった。大野先生が話を終えると私に携帯を渡した。

「よくわからないけどそういうことみたいだから。」

と言って私は電話を切った。大野先生は

「ではすぐに用意していきますね。」

といい部屋を出ていくと助産師さんが2人入ってきてICUに持っていくものを用意してくれた。携帯の充電器、コップ、貴重品などサクサクと用意している時一応親には言っておいた方がいいのかと父に電話するが出ない、母にも電話するが出ない、実家に電話しても出ないのでおばあちゃん家に電話をするとおばあちゃんが出て、

「お母さんなら今シャワー浴びてる。お父さんはゴミ燃やしに行ってるわ。」

「じゃあ、急いでお母さんに代わってくれる?」

「はいはい。」

「ロロから電話やで。」

「え?もしもし?」

「あ、お母さん、今からちょっとICU行ってくるから連絡取れないし。何かあったら夫くんから連絡入ると思う。」

「え!?どうしたん?」

「詳しくはわからないけど、血栓が肺に詰まってるらしい。あ、もう切るね。」

電話しているうちに助産師さんたちは準備を終えていた。

「では行きますね。」

ICUに行くと言われて10分もしないうちに私はベッドごとICUに連れて行かれることになったのだった。

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