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産みたくないと言ってもいいですか?〜命懸けの妊娠出産〜73

おそらく3時間ほど経ったのだろう胸の張りで目が覚め、看護師さんにまた搾乳のお願いをした。すると数分後

「空月さん、入りますね。」

と入って来たのは小児科の看護師さんだった。

「すみません、今産科の助産師さんが手が離せないので小児科から来ました。搾乳させてもらいますね。」

と小児科の看護師さんまでわざわざ来ていただくなんて!申し訳ない!

「すみません…。」

というと小児科の看護師さんが小さな写真を渡してくれた。

「急いで撮ったのでちょっとブレちゃいました、ごめんなさい。」

そう言って見せてくれたのは赤ちゃんの写真だった。ここに来るとなって、急いでポラロイドカメラで撮って持ってきてくれたそうだ。

「今日も元気にお母さんのおっぱい飲んでますよ!」

写真に写った小さい赤ちゃんはすやすやと眠っている。

「可愛い。ありがとうございます。」

私は嬉しくて泣けてきた。じーっと見る。そうだった、こんな顔だった。毎回そう思う。会える時間が短くていろんなことが起こり過ぎて、赤ちゃんの顔が記憶から薄れてしまう。写真をじっくりと見ていると看護師さんが

「どこかすぐに見れるところに貼りましょうか?」

と言ってくれたのですぐそばのティッシュの箱の側面に貼ってもらった。すぐに目に付くところに写真があると赤ちゃんをよく見ることになる。これがのちにどれだけ大切なことかを思い知ることになる。

看護師さんに搾乳してもらいスッキリしていると横が静かになっていることに気がついた。

(あれ?落ち着いたのかな?それともどこか行ったのかな?それとも…、いやいやこれは考えないようにしよう。)

目が冴えてしまう。

今はまだ3時頃。朝が来るにはまだまだだ。ICUの看護師さんがちょこちょこ入ってきては点滴のチェックや尿パックのチェック、バイタルチェックなどをしている為うとうとすると音や人の気配で目が覚める。

目が覚めるたびに赤ちゃんの写真を見つめて手で触れる。ほとんど触れたことのない赤ちゃん。

次はいつ会えるんだろう…。

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