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うーちゃんのあしあと<夫婦世界一周紀100日目>

ニュージーランドの滞在は大幅に短縮し、ニウエへの乗り継ぎのための往復二日間だけになった。帰国まであと10日を切り、旅費もいよいよ底が見えている。これからはたった一つのミスも、帰国できないという危機に直面する重要なタイミングだ。

オセアニアは入国審査が厳しいことで知られている。申告しないまま禁止物資を持ち込むと400ドルの罰金だ。知らなかったでは済まされず、問答無用で御用となる。

ただ、これまでの旅で日本のパスポートの威力を知っていたから、ハワイからニュージーランドに入国した際はあまり対策もせずに入ってしまった。税関で食べ物はあるか?と聞かれ、遅延によるお詫びの割引券で購入したスタバのビーフジャーキーを呑気に見せたら、冗談だろ?という顔をされた。

「これは没収なんだ」

ニュージーランドの税関で恰幅のいい男性がそれを取り上げようとしたが、フウロの残念そうな顔を見ていたたまれなくなったのだろう。一度取り上げたビーフジャーキーとフウロの顔を交互に見て、「今度は持ってきちゃダメだよ」とこっそり戻してくれた。きっとフウロは中学生かなんかに見えたんだろう。童顔はラッキーだ。

その後も予断を許さない状況は続いた。申告制の税関を通ったらいよいよ赤外線チェックだ。荷物をレントゲンに通して、中身に問題がないか調べられる。ここでまた引っかかった。スリランカで購入したどでかいオーナメントだ。

「これは一体なんだ?」

「スリランカで買ったオーナメントです。高級ブランドの商品です」

「中に何が入っているんだ?」

どうやら、レントゲンで怪しい陰影が映ったらしい。中身なんて知るわけがない。ただそのオーナメント、異様に重いのだ。レントゲンを見せてもらうと、無数に刺された留めピンと、ぎっしり何かが詰まっていて白くなっている。覚せい剤を隠し持っているとでも思われたんだろうか。

「開けてチェックする必要がある」

オーナメントを分解して中身を見ると言う。抵抗したかったが、ここで反抗していいことはないだろう。そっと開けてねとフウロが言うと、やっぱりいたたまれないのか、開けた分はしっかり縫うわと約束して、貴重品を触るように丁重に手術室に持って行かれた。

数分後、元どおりのオーナメントと、職員の手には白いつぶつぶが。

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外に出ることが出来ない今、旅をできること自体に価値が生まれつつあります。僕たちが見てまわった世界はもうないかもしれないけれど、僕らが家にいる時にも世界は存在していて、今日もトゥヴァだってニウエだってある。いつか全てが終わった時に、あそこに行きたいと思ってくれる人が一人でも増えたらいいなと思って、価格を改訂しました。 無料で公開したかったのですが有料マガジンを変更することが出来なかったので、最安値の100円に設定しています。

2018年8月19日から12月9日までの114日間。 5大陸11カ国を巡る夫婦世界一周旅行。 その日、何を思っていたかを一年後に毎日連載し…

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