マガジンのカバー画像

断片的なものの社会学

6
岸政彦「断片的なものの社会学」に触発されて書く、断片的過ぎる思い出たち
運営しているクリエイター

記事一覧

ハワイ島の夕陽

ハワイ島の夕陽

今もたまに、別の世界に行ってしまった彼女のことを想うよ。どうしてるかな、元気でやってるかなって。

そして、彼女が大好きだったハワイ島で、プレイヤーの居なくなったゴルフ場の芝生の上に姉妹で寝っ転がって(そう、村上春樹「1973年のピンボール」で、主人公が双子の女の子としたように)眺めた夕陽のことを、今も素敵な思い出として覚えているといいな、と思う。

深夜のオーストラリア長距離バス

深夜のオーストラリア長距離バス

こんなことを覚えている。

僕は長距離バスの乗客だ。時は1995年。深夜に広大なオーストラリアのハイウェイを走るグレイハウンドの窓際の席に座っている。なかなか眠れないので、窓の外を通り過ぎる真っ暗な景色を眺めながら、小沢健二の「LIFE」が入ったカセットテープをウォークマンで聞いている。どんなヘッドホンを使っていたかは忘れてしまった。

さっきはバスの中でひと悶着あった。僕の隣に座っていた中年の男

もっとみる
私が出会った少女

私が出会った少女

その美しい少女とどこで出会ったのかは忘れた。気がついたらどこかのホテルを出て(何らかの行為があったわけではない。念のため…)、2人で街を歩きながら話をしていたのだった。ちなみにその時彼女は少し大人びた中学3年生で、「僕らの七日間戦争」の頃の宮沢りえを彷彿とさせ、そして同じくポニーテールだった。

何を話したのかも全ては覚えていない。断片的に覚えているのは、以下の2つの話題だ。

写真を撮るときに笑

もっとみる
グッド・バイ・マイ・ラブ

グッド・バイ・マイ・ラブ

「さよなら」に惹かれる。昔も今も。

高校生の時に好きだったのは、この小泉今日子が歌う「グッド バイ マイ ラブ」という曲。もちろんアン ルイスのカバーである。

この曲を聴くと高校生の時に過ごしたあの6畳の部屋を思いだす。朝起きるのを拒否してずっと寝ていたシングルベッド、深夜にとんねるずや鴻上尚史のオールナイトニッポンを聴いたダブルカセットデッキ、全然勉強しなかった勉強机と椅子、窓、たまにしか上

もっとみる
ラクビーワールドカップとカルバンクライン「エタニティ」の偶然かつ永遠の関係

ラクビーワールドカップとカルバンクライン「エタニティ」の偶然かつ永遠の関係

あいにく開催中のラクビーワールドカップには興味が湧かないのだが、「ラクビーワールドカップ」でふと思い出したのは、1995年のオーストラリアでのこと。

5月に日本からオーストラリアに旅立ち、シドニーで2週間ほど過ごした後、ふと思い立って Thredbo という New South Wales 州のスキーリゾートに行くことを決め(オーストラリアのスキーシーズンは5月下旬から始まる)、グレイハウンドの

もっとみる
人生は断片的なものが集まってできている

人生は断片的なものが集まってできている

社会学者の岸政彦が書いた「断片的なものの社会学」というユニークな本がある。その名の通り、著者の断片的な、しかし忘れられない記憶の数々を記した本だ。タイトルは、その最初の見出しから取った。

最近ぼくも、過去の断片的な出来事の記憶が、唐突に、ふと蘇って来ることが多くなった。何故かは分からない。というのは嘘で、菊地成孔のブログで「ミッシングパーソン」のことを読んだからだ。

人生のある時期に出会い、場

もっとみる