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短歌をはじめて半年、どんな風に詠めるようになったんだろうか、の十首+α


たわむれにジョークで包むブルガリは時限爆弾もしくは生ゴミ

今までの短くない人生ではじめて短歌というものを詠んだあれは2018年のクリスマス12月の25日のことでした。これはぼくの友達の女の子の恋の始まりに際して詠んだものなのだけど、事の経緯はこちらで。

で、ともあれ半年経ちました。
歌を詠み始めたきっかけは友達への恋の応援メッセージだったものが、その間イベントへの展示、往復短歌を収録した歌集の制作などめまぐるしく、初心がひと段落ついたところで短歌がようやく面白くなり始め、ネット歌人の登竜門?と目される「うたの日」にも出詠などして気づけば結構な量を日々詠んでいたところ「半年たったんか」という、この半年の自選四首を編纂する素晴らしい企画への投稿と並行し、四首と言わずにここでは十首と半年を振り返ってみました。以上前置きです。

いつだって素敵だったよ指先のガラスの中で君は寝ている

7days100の一首。指先のガラスの中、とはもちろんスマートフォンのことで、それは誰かの写真であったりゲームのデータかもしれない。スマートフォンは個人の記憶を集積する装置なので、新しい世界を引き寄せる機能よりも過去を手繰ってそこから自分を見つめる事に実は核があるんじゃないかと疑っている。

空に向け君が掲げたサイダーの水平線が消えて梅雨明け

早く梅雨明けないかなー、と思って梅雨入り直後に詠んだもの。完全に妄想の風景です。少年時代のパブリックイメージに過ぎた。

研いだ刃で拙者試し斬りをいたす歯医者のあとに食うカツカレー

これも7days100より。もう何年も御茶ノ水の歯医者に定期健診に行っているのだけど、2ヶ月にいっぺん歯をメンテナンスしたその足でカツカレーを食うのはもう完全に習性となっている。御茶ノ水神保町の界隈はうまいカレー屋が多くていいっすね。

肩先できみが睡っている午後は雲の流れる音がきこえる

日曜の午後の昼寝。あまりの静けさに一瞬、すでに世界は滅んでしまっており自分たちだけが生き延びていた。的な空想を覚える時があって、そんな静かすぎる日曜の午後が好きです。

いま誕生ゆえの感情心臓が跳ねる現象きみ魔法少女

韻、という詠題のうたの日より。友人のラッパーに日本語で韻を踏むリリックについてTwitter越しにレクチャー、という名のお叱りすなわちdisりを受けた直後に詠んだ。踏めているでしょうか。

立ち向かう錆びた夕陽の校舎裏リー・リンチェイは君の背にいる

うたの日で初めて薔薇をいただいたもの。10代の頃、お寺がやっている施設から学校に通っている友達がいたのだけど、彼が通信教育で学んだという少林拳で不良グループに戦いに挑んだ時、僕は何もできなかった。彼が今でも、彼のヒーローであったリー・リンチェイの栄光とともにあったら嬉しい。

二人での最後の灯油5リットルたんぽぽの咲くシェルのスタンド

春先に暖かくなった季節、使い切る灯油を見切る買い方をするのだけど、すなわちそれは生活の区切りを自分で指折ってる、って事なんだなと。桜が別れの花ならばタンポポはその前触れで、派手な別れを演出する桜より、ふ、と未来を差し込んでくるタンポポがぼくは好きです。

菜の花の海ではじまる隠れんぼ君はイエローサブマリンだな

菜の花の詠題で詠んだもの。千葉県在住だし菜の花は身近な花で、特にマザー牧場の春先の菜の花は素晴らしいんですよ。そんな中、いとしい人とかくれんぼしたら素敵だろうなという、これも妄想です。黄色い菜の花と、結句に繋ぐイエローサブマリンをどうにか結ぶ、というのが詠みの起点でした。

ぬくぬくと二つの心浮遊する布団の中はゼログラビティ

これまた7days100の一首。二つの心とは自分自身の相反する感情でも、あるいは同衾する誰かとの付かず離れぬ微妙な距離かもしれない。そんなイメージを、布団をかぶり目をつむった時の前後左右の喪失に詠み込んだものですが兎に角布団で寝るのが好きなのです。

水面に生まれた空を跳び越えてスカートが舞う夏のスイッチ

映像的なものを詠みたくて。コンテを切るように短歌を詠む、というのはアリかもしれないと、カメラワークを意識して詠んでみました。

あの人の気配にまぶた閉じたとて祈りさえもが夜に呑まれる

これはもうぶちゃけジェラシーのうたです。例えるなら片思いの相手の、その恋人のつぶやきがタイムラインに流れてくる時のザワつきがモチーフなんですが、ニッチな妄想は人生を豊かにするのですきっと。


半年経って思うのは、あーやっぱ短歌楽しいなぁ、ということで、極々個人的な関係性がきっかけで生まれたものがいろんな縁になっていくのは自分でも本当に嬉しくて、無手勝流ではありますが、これからもぼちぼち詠んで行こうと思った次第でした。
ん、なんか十首以上あるぞ?


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