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ショートショート『季節風』シロクマ文芸部

「春と風を買ってきてくれ」と先生に頼まれた。
仕方なくよろず屋まで向かうことにする。
浮板を軽く前に投げて、風を与えてから飛び乗った。

風を受けて、空を飛ぶのは気持ちいい。
でもどうしてわざわざ風を買う必要があるのか。

「春と、風をたくさん欲しいんだ」
「あいよ、混ぜちゃってもいいかね?」
「うん、頼むよ」
袋に詰めてもらった春と風を抱えて帰る。

「なあ、先生。どうしてこんなにも春と風が必要なんだ?」
「この国は春、夏、秋、冬、と季節の変化が忙しいんだ。だからいつまでも冬に居座ってもらってては困るんだよ」
「ふーん、そうなんかね」
「お前が流してみるかい?」
「おっ、やってみるよ!」

風の入った袋の口を開ける。と同時に頭を叩かれる。
「ばかもん、南側から流さんか!」
「すみません……」

南から大量の春と風を混ぜたものを流し込む。
遠く離れたところからでも、
雪が溶けて、木々の芽吹く様子を感じることができた。





シロクマ文芸部の企画に参加させていただきました。
「春の訪れを知らせる風鈴」の話と迷いました。
『春と風』って難しいですね。二つセット。


前回の投稿はこちら


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