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ショートショート『プレゼント(仮称)』(雪兎の宿)

エフ星人が日本へやってきた
だがこの時代は、武士たちが刀で斬り合い、銃で撃ち合っていた
「なんだこの星は、争ってばかりで程度が低い」
「せっかくだから、この星が平和になるプレゼントを置いていこう」
彼らは何が喜ばれるか考えた
「役立つものにしよう」
「親しまれるものにしよう」
「多くの人に喜ばれるようにしよう」
色々と案を出しながら、プレゼントは作られた
そして置いたら自分たちの国へと帰っていった。

エフ星人が去ってから時は流れて
日本の人間たちによる国盗り合戦は収束した
つまり時代が江戸から明治に移ったということ

しかし贈り物が喜ばれることはなかった。
「聞いてくれ、夜中に誰かが糸車を引いているんだ」
「子供の姿をしていたぞ」
「俺の家にも来たんだ、いろんな家に現れては消えるそうだ」

エフ星人はその様子を自分の星から観察していた。
「おかしいなあ」
「時代に合わせた役立つものとして、糸車を引かせた」
「親しまれるように子供の姿にした」
「多くの人に喜ばれるように、各家を周るようにした」
エフ星人、ため息をつく
「地球の人間には理解できなかったか……」

その地域の人間たちは口を揃えてこう言った
『座敷童子が出たんだ!』




お読みいただきありがとうございます。

今年の1月原宿で行った展示
『雪兎の宿』で展示した作品です。
エフ星人って、星新一の影響を受けすぎですね(笑)

こちら加えた文庫本の出版を
近々予定しています。

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「へそで茶をわかす」お話が読めるのはここだけです。

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