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【前編】総合職だけで60人が活躍中!農水省の中途採用の秘訣は?

ソトナカプロジェクト共同代表の佐伯です。
報道機関の記者を経て、農林水産省に入省して2年。ここ農水省には、金融機関、メーカー、コンサル、マスコミ、自治体など幅広い業界から、事務系・技術系の総合職だけで約60人の中途採用者が集まっており、今年度は初めて中途採用者から指定職(民間企業でいう役員に相当)が誕生しました!霞が関では最先端を走っていると言えそうです。
そんな農水省では、どんな戦略で採用活動を行い、定着支援をどう行っているのか、総合職事務系の採用を担う大臣官房秘書課監査官の笠原さんに、ソトナカメンバーが本音を聞いてみました。

笠原健さん 農林水産省大臣官房秘書課監査官
2006年農林水産省入省後、鳥インフルエンザ・食品表示事件対応、コメ政策・農地政策など食料生産の基盤となる施策に従事。また、新たな保険制度(森林保険)の構築に携わったほか、米国に駐在し日本産品の輸出促進政策を実行。2021年から大臣官房秘書課にて、若手職員の人事、新卒・中途採用を担当。

中途採用者がいることが"当たり前"

【ソトナカ】どういう基準で中途採用者を採用していますか?
笠原】実は、新卒を採用する際の基準とそんなに変わらなくて、一番大きなのはコミュニケーション能力。農林水産省では、農林水産業者ももちろんですが、川下事業者などステークホルダーが多く、国際交渉も増えています。そうした中で、自分の言葉で想いを伝えられる人、かつ、その伝える想いを持った人を採用しています。

【ソトナカ】最近では、何人くらい採用しているのでしょうか。
【笠原】令和3年度に採用活動をして、その後入省した中途採用者は4人。同じく3年度に採用活動をして、令和4年4月に入省した新卒採用者が15人なので、この年度の総合職事務系の採用者の約2割が中途の方ですね。

【ソトナカ】中途採用が活発でない他省庁の職員の中には、国会対応や法令業務など大変だけど目立たない仕事は生え抜きの職員が行い、中途採用者は得意な、目立つ仕事ばかりするのではないかという懸念がある、という話も聞きますが、農水省ではどうでしょうか。
【笠原】農水省では事務系も技術系も、中途採用者が職場にいるのが当たり前の環境になってきているので、中途採用者も生え抜きと同じ仕事をやっているという認識が共有されています。それが農水省の強みでしょうか。
 私も人材配置を行う上で、中途も生え抜きも同じ扱いをしています。生え抜きの職員が座るような総括係長(各課の業務の取りまとめ役)のポストに置いて、当然フォローはしますが、はいやってみてください、という形です。その仕事が合わずに辞めてしまう方も残念ながらいらっしゃいますが、残っている方々の仕事ぶりは周りも見ているので、おのずとご指摘のような懸念の声はなくなってきますね。

能力本位で幹部に登用

【ソトナカ】農水省では平成20年から旧国家1種相当の中途採用を始め、約15年が経つと聞きます。今年7月には、その1期生の事務系で入省された方が指定職(民間企業の役員に相当)に昇進されましたね。
【笠原】はい。平成20年に30代後半で係長級として入省された方が、社会人歴が同じ(平成5年に社会人スタート)生え抜き職員に追いついて、指定職の部長に昇進されました。ご本人ももちろん努力されているというのが一番大きいところですが、何年霞が関にいるかという点ではなく、能力本位で幹部にも登用されたというのは、素晴らしいことだと思います。

【ソトナカ】この1期生の方々が中心となって、農水省には中途採用者の集まり(シュガーソウルの会と言います。)がありますね。このネットワークを人事担当としてはどう見ていますか。
【笠原】とてもポジティブに捉えています。まず、入省してからのキャリアプランが明確に可視化されます。先ほど話した指定職の方もいれば、その下の管理職(室長級)の方もいますし、各課で総括補佐を担っている方もたくさんいます。中途入省した方が、どういう仕事をしていくのか、どういうポジションに就いていくのかが可視化されるのは素晴らしいと思います。
 また、中途採用者の方は皆さん、文化の違いや、仕事の仕方の違いに悩まれると思いますが、自分の所掌の範囲を超えて相談でき、かつ同じ悩みを抱えてきた人がいるというのは、大変良いことだと考えています。

コロナ禍以前(平成29年)の「シュガーソウルの会」の暑気払いの様子

中途採用活性化には、霞が関全体で採用担当の人員強化も必要

【ソトナカ】採用戦略全体の中で、中途採用をどう位置付けているのでしょうか。
【笠原】現在では二つの意味合いがあって、一つは通常の省の業務の戦力として採用したいと考えています。もう一つは、省内全体に新しい風を吹き込んでほしいと思っていますが、まだ一つ目の意味合いのほうが強いかなと思います。マイノリティが、集団の中の約3割に達すれば影響力が大きくなる、お客さんではなくなると言われますが、まだそこまでは至っていないですね。

【ソトナカ】霞が関の中でも、中途採用に積極的な省庁もあれば、そうでないところもあります。その原因はどこにあると思いますか。
【笠原】一つは、採用を担う秘書課又は人事課に、人的・時間的な余裕がないということもあると思います。農水省も、総合職事務系の採用や人事を担当する秘書課職員が私のほかに2人いて、頑張ってくれているので中途採用もできていますが、そこまで余裕がないというところもあるのが実態だと思います。

【ソトナカ】優秀な人材を集めて、そのメリットを省内全体に還元するためには、秘書課・人事課にも適切な人員を配置することが重要ですね。
【笠原】そうだと思います。例えばですが、1人の優秀な秘書課・人事課の職員がいれば、新たに5人、いや10人の優秀な人を採ってくることも可能だと思っています。その方が、全体としてメリットは大きいのではないでしょうか。


後編では、農水省の中途採用プロセスで実施している工夫や、入省してからの定着支援の取組に迫ります。

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