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鴨長明さんに学ぶシンプルな心と暮らし

「すらすら読める方丈記(中野孝次著)」を読んだ。昔の京に生きた鴨長明さんが、超シンプルでミニマリストな自分の生き方をひたすら自画自賛するエッセイが方丈記だ。

京の外れの小さな組み立て式の家で、最小限のものとともに暮らす鴨長明さん。その生き方はまさに、今流行りのミニマリストそのものだ。私も自称そこそこのミニマリストではあるが、ここまで突き抜けた生活はできない。それに、何にもとらわれずに、自分の好きな時に好きなことをして自分の時間を楽しむことで長明さんは大きな心の自由を得られているわけだが、家族や社会生活がある私にはまったく同じことはできない。

それよりも、長明さんの心の持ち方に教えられるところがたくさんあった。長明さんの自由な暮らしは、「幸せは外にあるのではなく、わが心ひとつにかかっている」ということを私に教えてくれた。幸せな人は様々なモノことに恵まれている人ではなく、幸せを見つけるのがうまい人なのだ。どんな状況であっても、自分が心穏やかでいられること、楽しいと思えることを自分から見つけに行く、その姿勢が幸せにつながるのだろう。

他人にどう思われるか、どうすれば気に入られるかというような「余計なこと」は考えずに、自分はこう思う、こうしたい、これが好きだと思うことを自分の行動の起点にすること。これも心穏やかに生きるための秘訣だと教わった。「自分軸」とよく言われるが、物事の判断基準を外ではなく自分に持つことで心は平穏でいられるのだと思う。

もうひとつ、はっとさせられたこと。「一つのことに専念することは大切だというが、専念することもひとつの執着である」ということ。毎日これをやらなきゃいけない、自分はこうでなければいけない、と自分を追い込んでまで、何かをまじめにやり続ける必要はないのかもしれない。心の負担になるようなら、そんな執着は捨ててしまっていい。そう思うと気持ちが軽くなる。

身の回りのことをシンプルにするのは、やる気があればできる。心の中をシンプルにするのはとっても難しい。方丈記を書いた鴨長明さんはおそらく今の私ぐらいの年齢だ。それでここまで突き抜けているのは本当に尊敬する限りだ。虚栄心、猜疑心、嫉妬心、様々な欲、人は自分のことをどう思っているか、自分はどう見えているか、自分はこうあらねばならない、完璧でなければいけない、色んな感情が複雑に絡み合ってごっちゃごちゃになっている私の心も、歳を重ねるごとにシンプルになっていけばいいな。

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